山の一家*葉根舎「葉根たより」【65】|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家*葉根舎(はねや)の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2022年5月1日号の掲載記事です。
大森梨沙子さんの執筆です。
葉根たより
こちらの山の雪は三月下旬にやっと解け、蕗の薹、梅、辛夷、そして桜と春の便りが少しずつ届いています。
「玄鳥至(つばめきたる)」「霜止出苗(しもやみてなえいずる)」
燕が顔を出し、霜が降りなくなるのも後少し。まだたまに冷え込んだ朝がやってきては一面真っ白に霜が降り、気温差も大きいと雲海が出ますが、そろそろ苗代を作り、種籾を播き、田植えの準備に忙しくなってゆく季節です。
<春の香り>
雪が解け、気温が上がってくると、山の菌が動き始め、落ち葉を分解し山が発酵する香りがふわりと漂ってきます。この香りに私たちもむずむずと動き出したくなります。
大雪で折れに折れた田畑の柵を子供たちと直したり交換したり、夫げんは仲間たちと山に入り間伐し、木を運び出し、薪割りをしたり、じゃがいもや生姜を植えたり、蕗の薹や土筆、椎茸を摘み、蕗味噌や干し土筆、干し椎茸を作ったり、セリやアサツキ、ノカンゾウ、ノビルなどの野草を料理したり…蜂も増えてきて、山桜の蜂蜜の収穫が楽しみです。
<春の息吹>
野の土筆もぐんぐん出てきていますが、わが家の長男つくしも無事に家を出て、新生活が始まりました。
自炊し、お弁当を詰めたり、おやつにクッキー作りもしているようです。我が家はかまどなので、ガスに慣れずに卵焼きを焦がしたようですが(笑)
林業を学び、どんな道を選ぶのか、大人しく友達付き合いがうまくはないけれど、楽しく過ごしてゆけるのか、心配は考えればつきませんが、彼の持っている力を信じて見守りたいと思います。
次男すぎなは農業高校へ入学し、自転車と電車の通学が始まります。
長男は私にとっても初めてだらけなのでドキドキですが、次男になるとやはり気持ちに余裕がありますね。
三男になれば、もう可愛いだけ。六年生になるかや。スクールバスまで一人で歩くことになるので、犬の散歩も兼ねて毎朝送ってあげようと思います。
我が家に小学生がいるのもあと一年、過ぎた年、重ねた年の長さを感じ、大切に過ごしたくなります。
少しずつ変わってゆく家の雰囲気にしみじみとした気持ちになりますが、春の息吹の勢いにのり、みんなで成長してゆきたいと思います。
<からだのーと>
4月7日から5月4日(立夏の前日)は、春の土用。
自律神経のトラブルが起きやすくなるので、蓬や蕗などの野草を頂いたり、プチ断食で血液を浄化しましょう。土用は特に甘いものの影響を受けやすいので気を付けましょう。
雪の多かった年は大地が一層固くなり、そこからなんとか出てくる野草は力強く、苦味が柔らかく、厳しさに耐えたものは強く優しくなることを感じます。一際美味しい今年の野草、是非味わってください。
<展示案内>
4月2日、3日に開催された森の展示室、たくさんの方にお越しいただきありがとうございました。
今年のテーマは「うまれる」。
私は「中心へ還る」という作品をうみました。銀河、胎内の赤ん坊、細胞、原子…全ては中心をもち、包むような構造でうまれることから中心を包むような空間を作りたいと思いました。
そして、家族だけで自宅出産した時に重力に助けられた経験も重ね、その重力は皆に等しくかかり、地球の中心の小さな一点でつながっていることも想いながら。
土と粘土、種などで作ったものを中心に据え森の中に空間を作っていると、そこに横たわっていた木が産道となり、丸い空間は子宮のような存在となって自然と気配がうまれました。ものを作ることは空間と気配をうみだすこと。
そのことを深く実感しました。人々、木々、虫、鳥、大地、様々なものたちと深まるご縁を感じることができ、感謝しています。
次の展示は個展となります。大正時代に建てられたビルディングの中にある、土壁円形の素敵なギャラリー空間と山の暮らしがとけあうような展示にしたいと思います。
心を込めて準備していますので、是非お越しください。
「大地の呼吸」5月29日(日)から6月5日(日)12時から19時(最終日は18時)まで。
大阪市中央区淡路町2-5-8 船場ビルディング314号。06-6210-5571(土日はビルの扉が閉まる為、お手数ですがギャラリーまでご連絡をお願いいたします)。
(2022年4月10日記)
■葉根舎
haneya8011@gmail.com
HP:https://www.yamano-haneya.com
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大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)
2017年1月1日号~2022年12月1日号
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