山の一家*葉根舎「葉根たより」【64】|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家*葉根舎(はねや)の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2022年4月1日号の掲載記事です。
大森梨沙子さんの執筆です。
葉根たより
土の中で縮こまっていた虫が穴を開いて動き出す3月6日の啓蟄(けいちつ)、こちらは雪ふたたび。少しずつ揺れ動いてゆく三寒四温を感じます。
「桃始笑(ももはじめてさく)」「雀始巣(すずめはじめてすくう)」
桃が咲き、雀が巣を作り始める頃。私たちもまた新たに始まる一年の暮らし作りに、ごそごそと動き出したくなる季節です。
<春霞>
春がほのかに香る季節になると、十月末から巣内の温度を下げないために閉めていた蜂たちの様子が気になってきます。
まだまだ雪の残る白き山、半凍りの雪の上を嵌らないようにそっと歩き、蜂箱のもとへ。
雪をのけて開けてみると、蜂の数が少なかった一箱は寒さに負けてしまっていました。その他は無事に越冬したけれど、なかなか気温の上がらない春に元気いっぱいではない様子。
この状況をなんとか乗り切り産卵をしてもらうために、麓の知り合いの空き地へ置かせてもらいます。山の梅はまだまだなので、毎年春先は麓でお世話になっています。
夏野菜の種まきもしました。土を入れた木箱に播き、薪ストーブの側で暖め、晴れたら縁側へ。蜂も野菜も元気に育ちますように。
光や大気が少しずつ移り変わり、春霞が現れると、霞が春を迎えているように感じます。
<つくしいづる春>
啓蟄は、二十四節気の中でもとりわけ感じ入るものがあります。
18年前、長男が虫のようにごそごそのんびりと誕生した日なのです。そのつくしももう高校卒業、林業の学校へ通うために家を出ます。自炊、おやつ作りの練習、引越し準備の毎日です。
すぎなは中学校卒業、つくしと同じ農業高校へ通うことになりました。自転車を準備し、つくしに通学路を教えてもらい、片道一八キロの通学が始まります。つくしは文句を言わず、休まず通ってくれました。
何より怪我がなかったことが嬉しいです。すぎなも無事に楽しく通ってくれますように。
かやは小学校六年生に。末っ子らしく、元気いっぱいのびのびと育ってくれています。
お兄ちゃんと過ごす時間が少なくなることは寂しいでしょうが、それによる新たな成長が楽しみです。
<からだのーと>
4月17日から5月4日(立夏の前日)は「春の土用」で、自律神経のトラブルが増えます。いわゆる五月病と呼ばれるものですね。
よもぎやふきなどの野草料理を頂いたり、プチ断食をすると血液が浄化され、精神が安定に向かいます。
また「土用」は胃や膵臓が弱りやすく、特に甘いものの影響を強く受けるので控えるようにしましょう。
<展示案内>
今年も京都府のわち山野草の森にて「森の展示室」を開催します。桜咲く頃の彩豊かな森へぜひお越し下さい。4月2日(土)3日(日)10時から17時。
4月13日から19日は松坂屋上野店本館七階美術画廊にて「絵と言葉のチカラ展入選作品展」へ出品しています。
たくさん降り積もった雪に春の農仕事始めが遅くなり、雪で折れた柵直しに大変なこととなりそうですが、この雪もきっと何かのバランスをとっているのでしょう。人は自然のめぐりに身を任せ、できることをこつこつと重ねてゆくだけだと感じます。そうして螺旋を描くように世界中の日々が穏やかになっていくことを願って。
(2022年3月10日記)
■葉根舎
haneya8011@gmail.com
HP:https://www.yamano-haneya.com
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