フットハットがゆく【273】「脱線」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく【273】「脱線」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2016年8月1日号の掲載記事です。

 

脱線

ストリートダンスの番組を京都ローカルで7年ほど制作して毎週放送しているのですが、新しい試みとして、ダンスドラマの短編を作ることになりました。
自身の夢へ一歩近付く企画で興奮しております。
さて、そのストーリーの中に、ダンサー同士のケンカのシーンがあるのですが、小道具として血のりがいるなと思い調べますと、さすが映画の街・京都、血のりを売っている店がありました。
しかも5段階の色に分かれていて、散ったばかりの鮮血の色、とか、乾いて黒みがかった血の色、とかまさに色々ありました。
中でも面白いと思ったのは、口に含んだ時のために、イチゴ味がついています…だそうです。
確かに、口から血を吐くシーンとか、血のりが苦かったり、薬品臭かったら、演技もしにくいですしね! イチゴ味ね! じゃぁそのままかき氷にかけてもいいじゃんか…とか思ったりして。
確かにかき氷用のイチゴシロップ、真っ赤っかだし、あれに少しコーヒーをまぜて若干黒みを加えたら、そのまま血のりに使えそうですね。
アリが寄って来そうですが…。

アリといえば、先ほど買い物に行って自転車をこいでおりましたら、羽アリが右目に飛び込んできまして、生きたものが目に入るというのは気持ちが悪いものです、孫とか愛娘は別にして…。
バシバシとまばたきをしましたがいっこうに出ていく気配がなく、涙があふれ出てきて、こりゃアカンと思い、ゴシゴシ手でこすりましたら、羽アリがバラバラになって出てきました。
とんだ迷惑な話だと思いましたが、これは羽アリの立場から考えたらもっと迷惑で恐怖な話ですね。
ふわふわ飛んでいたら、急にブラックホールのような黒いまんまるなものに突撃されて、慌てて逃げようと思っても、猛獣の歯のように並ぶ黒く鋭い刺みたいなものにバシバシやられて、しかも洪水のように粘液が湧き出て、足の自由も羽の自由も奪われ、最後に真っ暗になったかと思うと、バラバラに圧殺され…。
天国で、おれは得体の知れない妖怪に襲われて死んだ、っていうのでしょうね。

僕は鼻が大きいので、よく自転車をこいでいて、鼻に虫が入ることもありますね。
これも、フンフン鼻を噴いてもなかなかうまく出てきませんで、指でグリグリやったら結局バラバラになって出て来たりしますね。
この妖怪も恐ろしいですね。
暗い洞窟に黒い刺がたくさん、粘膜がヌルヌルで最後は圧死させられる。
たとえ虫に生まれ変わったとしても、他人の鼻の穴で死ぬのだけはイヤですね。

ちなみに、マイ人体七不思議なのですが、僕の左鼻の奥の方の鼻毛が、一本だけとびきり太くて丈夫な白髪で、他の鼻毛より三倍ほど伸びるのが速いのです。
しかも、縦にではなく、ほぼ横向きに伸びるので、鼻の内壁に当たってすごい違和感が生じるのです。
あ、なんか今日、左の鼻がムズムズするな。こすってもこすっても直らないとき、あぁ、またあいつが良からぬ方向に背伸びし出したな…と思うのです。
横に伸びるので、毛抜きでもなかなか抜くのに苦労します。
いつか死んだあの虫は、この横に伸びる白い鼻毛を見たのでしょうか…。

 

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