フットハットがゆく【247】「ブラジリアン」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく【247】「ブラジリアン」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2014年6月1日号の掲載記事です。

 

ブラジリアン

ちょうどこのエッセイを書く頃、サッカーワールドカップの日本代表23名が発表されました。
いったいどんな大会になるのか本当に楽しみです。今大会は、ブラジルで開催!ということで、僕にも少し縁があります。
今から35年程前、父親の仕事の都合で、小学校2年から5年まで4年間(1977〜1980)、ブラジルのサンパウロに住んでいました。
当時の記憶をたよりに、35年前のブラジルを振り返ってみたいと思います。

サッカー! サンバ!
カーニバル!

とにかくサッカー、サッカーの国でした。
サッカーの試合に一喜一憂し、ワールドカップでブラジルが負けた日には、心臓マヒと自殺で亡くなる人が多数いると聞きました。
サンパウロは結構な都会で地震がないため高層ビルが建ち並んでいましたが、そこから試合のたびに紙吹雪が撒かれ、大旗が振られ、お祭り騒ぎでした。
お祭り騒ぎといえばサンバのリズムとリオのカーニバルが有名ですが、カーニバルのために一年間働く、といっても過言ではないほどの情熱の込めようでした。
僕自身、物事に取り組むにあたって一番大事なのは情熱だ!…といまだに思う原点がここにあるかも知れません。
ちなみに当時のブラジルで人気だったサッカー選手はジーコ(フラメンゴ)で、ラジオやテレビで名前を聞かない日はない程でした。

貧富

貧富の差が激しく、ファベーラといわれる貧民地区があり、そこでは子どもたちが砂の道で、裸足のままサッカーをしていました。
靴を買うお金もないのです。
裸足でサッカーをすると、いったん皮がズルむけ、傷だらけになります。
しかしそれが回復するとしだいに硬い皮膚ができていき、裸足のまま平気で砂地を走り回れる強い足裏になると、ファベーラの人から聞きました。
そうなると小石を踏もうが、ガラスの破片を踏もうが、もう平気です。
ファベーラの貧困から抜け出すためのハングリー精神で、プロサッカー選手になった人はたくさんいます。
僕自身ハングリー精神を忘れないため、わざと自分を困窮状態にする、尻に火がついてから集中力を発揮する、という癖がいまだに抜けません。

インフレ

とにかくインフレがひどかったです。
当時は小学生ですから、インフレという言葉も知りませんでしたが、去年2クルゼイロだったアイスキャンディーが、今年はいつの間にか10クルゼイロ、その2年後には100クルゼイロ、というような調子でした。
そんな感じですから、お金は貯めずにどんどん使う!というのが、ブラジル人の方針でした。
その方針を僕も受け継いでしまい、いまだに、いただいたお給料をすぐに使ってしまう癖が抜けません。
(その後さらにインフレが進み、いまはもうクルゼイロという通貨はありません。)

今のブラジル、サンパウロがどんな感じになっているのかは、全く知らないまま、35年前の記憶を書いてみました。
ご精読いただきまして、オブリガード(ありがとう)。

 

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