フットハットがゆく【193】「AD麻痺」|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2010年1月1日号の掲載記事です。
AD麻痺
新年あけましておめでとうございます。
今年から京都ローカルのテレビ番組を作ることになりました。
『B-TRIBE TV』という、子供向けのストリートダンス番組です。
毎週木曜夜12時からKBS京都テレビで放送です。
ヒップホップとかブレイクダンスとか、そういった感じのダンスが登場します。
興味のある方はぜひ見てください!
さて、僕がテレビ番組の制作に関わるようになったのは、今から17〜8年前、大学を中退して東京のポストプロダクションに入社した頃です。
AD(アシスタントディレクター)として、徹夜の毎日でした。
人としての感覚が麻痺するくらいADの仕事に没頭していました。
まぁ新人時代は、ばたばたホコリをたてて走りまくる割に、仕事があまりはかどらないという要領の悪さでしたが…。
ある日、ポスプロの社長が、車にガソリンを入れてこいというので、道を挟んで会社の真向かいにあったガソリンスタンドに給油にいきました。
いく時は交通量が少なく、すっとUターンして入れたのですが、帰りは信号の都合で車がバンバン走ってきていました。
まだ免許取り立てだったこともあり、流れる車を押し止めてまでUターンする勇気はありません。
そこでいったん車を進行方向に出して、どこかで左折を繰り返して戻ってこようと思いました。
京都で育った僕の感覚では、道というものはすべて碁盤目状になっており、左折を3回繰り返せば、元の道に戻ると思っていたのです。
しかし東京の道はそんなに甘くはない…最初に左折した後、なかなか次の左折場所が見つからず、そのうち迷ってドツボにはまり、新宿区の会社から区をまたいで杉並区までいってしまいました。
当時は携帯電話もなかったので、なんとか公衆電話を探して会社にTEL。
社長「おまえ、ガソリン入れにいって1時間も経ってるぞっ!」
塩見「すみません、道に迷いました」
社長「向かいのスタンドに行ってなぜ道に迷う? 今どこだ?」
塩見「今どこにいるのか自分でも全くわかりません…。」
社長「何か近くに場所を特定できるような建物はないか?」
塩見「近くに…マクドナルドの看板が見えますが…。」
社長「マクドナルドが東京に何件あると思ってんだっ!」
なんて落語みたいなやり取りがあったりして、結局2時間もかかって会社に戻り、満タンにしたはずのガソリンを大分使ってしまいました。
社長はすぐにでも出かけねばならず、さっそく戻って来た車に飛び乗りましたが、臭い!と絶叫しだしました。
なんと僕、サイドブレーキを半分引っ張ったまま走っていて、ブレーキが焼け焦げてしまったんです。あ〜あ。
まぁ、それから18年たって、少しは要領よく仕事をこなせるようになったんでしょうか?
低予算番組を作っているので、僕一人で構成台本、演出、撮影、編集、そして雑用までしています。
まるで一つの映画に何役ものキャラで登場するエディー・マーフィーのようです。
一人で何役もこなしていると大変ですが、好きなことなので楽しんでやっています。
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