フットハットがゆく【185】「不安ブル1」|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2009年8月1日号の掲載記事です。
不安ブル1
夏といえば虫ですね。虫は無視する人もいますが僕は虫好きなんで、今回は図鑑を見ていて興味を持った虫の生態を紹介します。
エイリアン的繁殖『アゲハヒメバチ』
…「エイリアン」は、人間の体内に卵を生みつけ、育った子どもが腹を突き破って飛び出して来る…という恐ろしい映画です。
アゲハヒメバチはアゲハチョウの幼虫に卵を生みつけます。
幼虫はそのまま成長を続け、やがてチョウになるためにサナギになります。
しかし、そのサナギを破って出て来るのは、チョウではなくハチなんです。
お〜恐い。エイリアンの作者はこの虫をヒントにしたんじゃないでしょうか。
戦慄の神経外科『ベッコウバチ』
…ファーブル昆虫記にも登場する有名な虫。
クモを捕まえて巣穴に引きずり込み、卵を植え付けるわけです。
クモは中枢神経を針でズブリとやられていて、生きながらにして全身麻痺の状態です。
なぜ殺さないかというと、死ぬと腐ってしまうからです。
子に新鮮な肉を与えるために、神経だけ麻痺させて生かしておくのです。
さらに、生まれてきた幼虫は、まずは脂肪そして筋肉と、クモの生命維持に関係ない部分から食べていくそうです。
クモの命を奪うのは本当の最後の最後。
そうやって最後まで肉を新鮮に保つそうですが、クモにしちゃたまったものではないですね…。
ぞぞ〜ッ!
究極の子煩悩『コブハサミムシ』
…尾に大きなハサミを持つこの虫の特徴は、母親が子育てをする…という点です。
アリやハチなどの社会生活をする虫以外は、たいがい卵は生みっぱなしが多いのですが、ハサミムシは母親がずっと卵を守ります。
せっせと位置を変えたりひっくり返したりして、卵にカビが生えないようにします。
卵を狙いに来たアリなどは、ご自慢のハサミでガチンとやっつけてしまいます。
やがて小さな子供たちが生まれます。
ハサミムシは肉食で他の虫を食べて育ちます。
しかし子供たちの最初のご馳走は、母の体です。
栄養をつけて強く育ってもらうように、母親は自らの体を子どもに食べさせるのです。泣けますね。
ちなみにハサミムシの雄は、全く子育てにかかわらないそうです。
おいおい、ちょっとくらい手伝ってやれよ〜。
衝撃の恐妻『カマキリ』
…カマキリはオスよりもメスの体がかなり大きいので、かかあ天下の代表のようにいわれます。
また、交尾後にメスがオスを食べてしまうという話は有名です。
卵の栄養分になるためにオスがその身を捧げる…といえば聞こえがいいですが、実際は動くものに何でも飛びかかるというカマキリの習性によるものだそうで、うまく逃げるオスも多いそうです。
逆に、交尾の最中に食べられ始めるオスもいるそうですが、カマキリは必ず頭から食べ始めるので、生殖活動には問題ないそうです。
でもやだな、そんなのは。
どんな虫も魂を持って一生懸命生きていますから、何がいい、何が悪い、とは言えませんが、僕が生まれ変わったら輪廻転生でどんな虫になるのか、不安でブルブルです。
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