フットハットがゆく【181】「ジューン・マリー」|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2009年6月1日号の掲載記事です。
ジューン・マリー
6月といえばジューン・ブライド。
ということで、昔ビデオ撮影の仕事で結婚披露宴を撮りにいった頃のエピソード集…。
○泣き虫さん
…新婦友人代表の女性がスピーチを始めた。しかし…
「私と新婦であるユキは、幼稚園の頃からの親友で…」といっていきなり号泣しはじめた。
その後、原稿を見ながら必死に何か喋ろうとしていたが、しゃっくりと鼻水と、咳と嗚咽で何をいっているのかさっぱり分からなかった。
そんな調子で5分近くもマイクの前に立っていたが、結局ちゃんと聞き取れたのは最初の5秒のみであった…。
○もといさん
…次は新郎の同僚がスピーチ。
極度の緊張からか、いい間違えのオンパレード。
その度に「もとい…」「もとい…」という言葉を使った。3分ほどのスピーチ内でおそらく30回以上「もとい」といったと思う。
雰囲気的にはこんな感じであった。
「え〜、あの〜僕の…もとい…わたくしの、え〜、同窓…もとい、あの〜、同僚である、え〜…新婦の、もとい…新郎のえ〜、あの〜、た、た、え〜タクヤくんは…もとい、え〜」
結局そのスピーチを聞いた人は、「え〜」と「あの〜」と「もとい」しか頭に残らなかった…。
○オンチさん
…披露宴後半でカラオケタイム、よくあるパターン。
登場したのは3歳、5歳、7歳くらいのそばかすが可愛らしい三姉妹ちゃん。
歌ったのはスマップの『世界に一つだけの花』…いい歌である。
でもでも…とってもオンチであった。三人が三人ともオンチで、オンチのハーモニーのようになり、原曲がまったく分からないほどであった。
しかし観客は爆笑、予想以上に盛り上がったという点では、まさにオンリー・ワンの歌だったかも…。
○カブリさん
…さて、先のオンチ三姉妹の次に登場したのは、酔っぱらって顔が真っ赤な若い青年。
「あの〜、思いっきりカブってしまいましたが、これしか練習して来なかったんで…」と恥ずかしそうに歌い始めたのが『世界に一つだけの花』。
しかも、先のオンチ軍団に音感を狂わされたのか、この人も音はずしまくり。失笑の嵐…。
○続カブリさん
…さて歌の時間、最後に登場したのはダンディーな中年さん、ギターの弾き語りである。
しかも別室で衣装まで着替えてバッチリ決めてきた。
舞台が暗くなり、スポットライトが当たり、低く渋みのある声がマイクのエコーに響く。
「今日は、二人の門出にぴったりの曲を用意してきました。聴いて下さい…『世界に一つだけの花』…」そう、この人は別室で準備していたため、その日に何回その曲が歌われたか知らないのである。
本人はいたって真面目なので客は笑うわけにもいかず、異様な雰囲気に…。
その気配に怖じ気づいたか、ダンディーな彼はギターコードを間違え、音程を外し、途中で歌詞まで忘れてしまい、これまたさんざんな歌となったのであった…。
まぁ、結婚披露宴ではいろいろあるもんですが、思い出はいつもキレイだッ…それだけではお腹がすくけどね(笑)。
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