「浄住寺」は京都有数の紅葉穴場スポット!12月でも紅葉を楽しめる古刹
京都市西京区にたたずむ浄住寺は、京都でも有数の隠れた紅葉穴場スポットです。
しかしここ数年で一気に知名度が上がり、紅葉シーズンの浄住寺には多くの観光客でにぎわうようになりました。
浄住寺の紅葉
浄住寺は、京都西山の麓にたたずむ静かなお寺です。
境内は美しい紅葉に彩られ、風情ある石畳の両側を、美しく色づいたモミジが覆っています。
浄住寺は隠れた穴場スポットとして知る人ぞ知る存在でした。
浄住寺の紅葉 見頃 2007年11月25日 撮影:MKタクシー
かつての隠れた紅葉穴場スポット
たまたま出あった超穴場
たまたま秋の紅葉シーズンに浄住寺の前を通りかかったのは、2000年代半ばのことです。
松尾大社から鈴虫寺、苔寺前、地蔵院を結ぶ京都西山の山麓の古道を紅葉を楽しみつつ南へと進んでいたとき、浄住寺と出会いました。
ここにお寺があることも知りませんでしたが、道路から見える浄住寺の美しい紅葉に驚きました。
もちろん浄住寺を訪れる人も他にほとんどなく、誰もいない超穴場紅葉スポットでした。
以来、毎年紅葉シーズンになると浄住寺を訪れました。いつ来ても会う人もまれな穴場の紅葉スポットでした。
浄住寺の紅葉 見頃 2007年11月25日 撮影:MKタクシー
以前の浄住寺は紅葉シーズンも含めて拝観料不要の境内自由の寺院でした。
浄住寺は拝観料はいらないとはいえ、これだけの美しい紅葉をゆっくりと楽しめるため、相応のお賽銭を用意していたものです。
木枯し紋次郎や必殺シリーズのロケも浄住寺の境内で行われたことがあるそうです。
静かで歴史を感じる境内は時代劇を撮影するにはぴったりです。
浄住寺の紅葉 色づきはじめ 2020年11月15日 撮影:MKタクシー
特別公開開始で知名度大幅アップ
2016年まで浄住寺は、本当に知る人ぞ知る紅葉の穴場スポットでした。
しかし、それでも年を追うに連れて紅葉シーズンの浄住寺で人の姿を見かけることも増え、知名度が上がってきていることは実感しました。
秋の特別拝観初開催直前の浄住寺 2017年11月10日 撮影:MKタクシー
状況が大きく変わったのは、2017年です。2017年の紅葉シーズンに、浄住寺では初めての特別公開が行われました。
浄住寺の檀家は葉室家だけで経済的に困難な状況で、修繕費用を捻出することが目的でした。
特別公開1年目から大賑わいの浄住寺の紅葉 2017年11月25日 撮影:MKタクシー
特別公開が始まるや、浄住寺には想定の4倍という主催者もびっくりするほど多くの観光客が集まるようになりました。
口コミで浄住寺の紅葉の素晴らしさがあっという間に広がり、知名度が大幅アップしました。
多くの観光客が集まったことと、後述のように翌2018年に台風による甚大な被害を受けたため、2018年以降も紅葉シーズンには継続的に浄住寺の特別拝観が行われるようになりました。
多くの人に浄住寺の紅葉の美しさを知ってもらえてうれしいと思う反面、知る人ぞ知る穴場スポットがなくなってしまったという、ちょっとさみしい気もします。
浄住寺 12月6日 撮影:MKタクシー
紅葉の特別公開期間以外の浄住寺は今も境内自由で、拝観料は必要ない穴場スポットです。
しかし、修復工事のための寄付を求める掲示があるように、まだまだ浄住寺の維持管理費用はじゅうぶんではありません。
紅葉シーズン以外に浄住寺を訪れる際にもそれなりのお賽銭は用意しておきたいところです。
浄住寺・方丈南庭の紅葉 見頃 2017年11月25日 撮影:MKタクシー
紅葉のピークは12月初め
紅葉が見頃のピークを迎えるのは12月初めという、浄住寺は京都でも有数の見頃が遅い紅葉スポットでもあります。
2025年の浄住寺特別公開は、11月22日(土)~12月14日(日)とやや遅めの開催です。
浄住寺の紅葉 見頃 2019年12月3日 撮影:MKタクシー
ただし、2018年の台風被害によって多くの木々が倒れて日当たりが変わったのか、浄住寺の紅葉は以前ほど極端に色づきが遅くはありません。
以前の浄住寺は12月に入ってから紅葉シーズン本番を迎えていましたが、2018年以降は他と比べて顕著に色づきが遅いというわけではありません。
また木々が成長してきたら浄住寺の紅葉も遅くなるかもしれません。
散紅葉も美しい浄住寺の紅葉 2018年12月8日 撮影:MKタクシー
紅葉シーズンも終わりに近づくと、浄住寺では散紅葉にも注目してください。
浄住寺の参道脇を散った紅葉が赤く染めています。
苔の上を赤やオレンジの散紅葉がじゅうたんのように埋める光景は必見です。
特別拝観終了後も見頃が続く浄住寺の紅葉 2022年12月6日 撮影:MKタクシー
浄住寺の本堂内や方丈庭園は特別公開期間のみの公開ですが、紅葉で彩られた参道は特別公開期間外でも入ることができます。
2025年の特別公開が始まる前や終わったあと以降も浄住寺参道の紅葉を楽しめるでしょう。
浄住寺の紅葉 見頃 2018年12月1日 撮影:MKタクシー
2023年からはゴールデンウィークには浄住寺の「春の特別拝観」が始まりました。
浄住寺の瑞々しい新緑を存分に楽しむことができる特別拝観でした。
12月中旬の浄住寺の紅葉 2019年12月14日 撮影:MKタクシー
特別公開される方丈と庭園
浄住寺の方丈と庭園を楽しめるのは原則として秋の紅葉シーズンとゴールディンウィークの新緑シーズンのみです。
浄住寺の方丈は、伊達政宗の曽孫である仙台藩主伊達綱村から寄進されたものです。
伊達綱村は浄住寺を再興した鉄牛禅師に帰依し、自らが幼少期を過ごした書院を浄住寺の方丈として寄進しました。
仙台あるいは江戸から移築された建物で、寺院らしくない武家屋敷の名残を残しています。
伊達綱村を逃がすための抜け穴という方丈上段の間の穴 2017年11月25日 撮影:MKタクシー
伊達綱村が幼少期には江戸時代の「三大お家騒動」のひとつである伊達騒動が起こりました。
幼い綱村の命も狙われたため、浄住寺の方丈にも工夫のあとが残されています。
方丈内部には武者隠しもあり、刺客が襲ってきたときに逃げるために穴も残っています。
浄住寺の方丈南庭 2017年11月25日 撮影:MKタクシー
浄住寺の方丈と本堂の間には、小ぢんまりとした池泉庭園があります。
方丈から眺める座観式庭園です。浄住寺が再興されたときに作庭されたものと思われます。
石橋がかかる小島にある石は、お釈迦様の歯である「仏牙」をあらわしています。
庭の向こう側には左の本堂から位牌堂、開山堂、寿塔の順に右へと連なっています。
浄住寺の方丈南庭 2017年11月25日 撮影:MKタクシー
左の平たい石は座禅石で、右の石組は滝をあらわしているのでしょうか。山に降った雨は直接方丈庭園へと流れ込みます。
禅寺の庭と言えば枯山水が定番ですが、浄住寺は池泉庭園というのも珍しいところです。
黄檗宗寺院で江戸時代の本堂、方丈、庭園が残っているのは京都市でも浄住寺のみです。
2018年には浄住寺の方丈庭園が京都市の名勝に指定されました。
2025年は最初で最後の特別公開も
2025年は鉄牛禅師の墓所である京都市有形文化財の寿塔が修理中のため、寿塔内に安置されていた阿弥陀如来坐像が特別高尾鵜飼されます。
寿塔が造られて以来約350年にわたって非公開だった仏像の最初で最後の公開です。
2018年の台風被害と復興
2018年9月4日に日本を襲った台風21号は京都を直撃し、多くの京都の寺社に被害を与えました。嵐山では欄干が倒れたり浸水被害がありました。
嵐山から近い浄住寺も例外ではありませんでした。建物も屋根瓦や障子が吹き飛ぶなど少なくない被害を受けましたが、参道の木々は甚大な被害を受けました。
浄住寺参道では実に数十本も木々が倒れる惨状でした。
台風翌月の浄住寺参道 2018年10月28日 撮影:MKタクシー
台風被害により、浄住寺の参道は以前よりもかなり明るくなりました。
前述のとおり、紅葉の時期がやや早まるなどの思わぬ影響もありました。
台風被害を経て数年がたち、被害のあとも言われなければ気づかないくらいまでには戻りました。
拝観情報
| 拝観時間 | 9:00~17:00(12月~3月は16:30まで) |
| 拝観料 | 境内自由 |
| TEL | 075-381-6029 |
| 住所 | 京都市西京区山田開町9 |
| アクセス | 阪急「上桂」より徒歩12分 |
2025年秋の特別公開
| 期間 | 2025年11月22日(土)~12月14日(日) |
| 拝観時間 | 9:30~16:30(16:00受付終了) |
| 拝観料 | 大人 :1,000円 小学生: 500円 |
特別公開ホームページ:秋の特別公開【浄住寺】|【京都市公式】京都観光Navi
浄住寺について
浄住寺の歴史
円仁の創建と伝わる
浄住寺は、黄檗宗の別格寺院です。
浄住寺に伝わる「浄住家訓」によると、9世紀前半に嵯峨天皇の勅願によって、慈覚大師円仁が創建したと伝わります。
一説には、廃寺となった深草の常住寺を移転し、寺名を改めたものとも言われます。
中興以前については伝承しか残っておらず、正確なところは不明です。
浄住寺の紅葉 見頃 2018年12月1日 撮影:MKタクシー
叡尊が中興して葉室家の菩提寺に
13世紀後半に中納言の葉室定然が叡尊を招いて中興し、葉室家の菩提寺となりました。
叡尊は鎌倉仏教を代表する僧のひとりで、戒律を復興して西大寺を中心に真言律宗の祖となりました。
葉室家は、藤原氏の勧修寺流の支流で、家格は極官が権大納言の名家(めいか)です。
「葉室」は浄住寺付近の地名です。かつてはもっと広範囲の桂川西岸を広く指すこともあり、古歌にも多く詠まれています。
葉室家3代目の葉室光頼が浄住寺付近に山荘を営んだため葉室を家名としました。
「太平記 上 (有朋堂文庫)」出典:国立国会図書館デジタルコレクション
太平記にも「浄住寺と申すは戒法流布の地、律宗作業の砌なり」と記されています。
真言律宗の重要拠点として七堂伽藍を備え、49の子院を持つほどに栄えました。
南北朝期にはすぐ北隣に管領の細川頼之によって地蔵院が創建されました。
浄住寺の紅葉 見頃 2018年12月1日 撮影:MKタクシー
戦乱で焼亡
しかし、浄住寺は京都と丹波を結ぶ唐櫃越の京都側の入り口という要衝にあたり、たびたび兵火にあいました。
なかでも元弘3年(1333年)には唐櫃越に陣を構えた千種忠顕と六波羅探題の激戦により、大きな打撃を受けました。
その後も明応2年(1493年)の「明応の政変」で葉室光忠が殺害された際に破却されるなど、江戸時代には荒廃していました。
浄住寺の本堂と扁額 2019年11月20日 撮影:MKタクシー
鉄牛禅師が再興して黄檗宗寺院に
元禄2年(1689年)に黄檗宗の鉄牛禅師が葉室孝重や伊達綱村、稲葉正則らの支援を得て復興を果たし、黄檗宗の寺院となりました。
伽藍全体が整備されたのは、元禄10年(1697年)ごろです。本堂や寿塔は再興時の建物です。
本尊の如意輪観音は、鉄牛禅師が感得した仏像です。
仏殿正面の「祝国」という扁額は鉄牛禅師によるものです。方丈の「葉室山」の扁額には元禄2年(1689年)の銘があります。
浄住寺 秋里籬嶌 1780年刊行「都名所図会」 出典:国際日本文化研究センター
方丈から見る南庭の向こう側には、鉄牛禅師の廟所があります。
鉄牛禅師は元禄13年(1700年)に千葉県の福聚寺(ふくしゅうじ)で亡くなりましたが、遺言により浄住寺に葬られました。
浄住寺の方丈南庭 2017年11月25日 撮影:MKタクシー
幕末期には「浄住寺焼」が造られました。
浄住寺境内の竹藪に窯跡がありました。
幻の古窯として詳細は不明ですが、浄住寺の裏山からは陶土が豊富に採取されたといいます。
洛西三十三観音霊場の浄住寺・観音堂 2017年11月25日 撮影:MKタクシー
「洛西三十三観音霊場」の第30番札所です。江戸時代からあった「西の岡三十三所」を1978年に再興した霊場です。
南は柳谷観音楊谷寺(第10番札所)から北は嵐山の宝珠山蔵泉庵(第28番札所)まで、桂川西岸に札所が広がっています。
浄住寺・方丈南庭の手水鉢 2017年11月25日 撮影:MKタクシー
浄住寺の近隣
葉室家墓地
葉室家墓地 2017年11月25日 撮影:MKタクシー
かつては浄住寺門前から北東へ50メートルほどのところには、葉室家墓所があります。
浄住寺を菩提寺とした葉室家代々のお墓が並んでいます。
葉室家初代の顕隆は白河法皇の信任を得て、「夜の関白」と称されるほどの権勢を誇りました。当初は勧修寺流の嫡流でしたが、顕隆の死後は甘露寺家が嫡流となり庶流となりました。
室町時代には足利将軍に接近し、葉室教忠は従一位にまで上りますが、息子の葉室光忠は明応の政変に巻き込まれて殺害され、いったん没落します。
江戸時代には勢力を取り戻し、葉室頼胤は准大臣にまで上りました。戦後も葉室頼昭が1994年から2009年まで春日大社の宮司をつとめるなど活躍しました。
葉室家墓地 2017年11月25日 撮影:MKタクシー
今はなき穀塚古墳
「穀塚古墳」という古墳時代中期の長さ40.5メートルの前方後円墳がありました。別名「葉室塚」とも言われました。
しかし、戦前から戦後にかけて破壊され、今は跡形もありません。今は民家が建ち並んでいます。
破壊前の1914年の発掘調査では、鉄製環頭大刀や精巧な馬具類や帯金具、鏡等の外来系の文物が出土しました。
出土品は京都大学総合博物館と東京国立博物館に収蔵されています。
葉室家墓地の北側には、直径10メートルの円墳「上ノ山古墳」が今も残ります。
浄住寺の紅葉 見頃 2018年12月1日 撮影:MKタクシー
おわりに
京都にはたくさんの紅葉スポットがあります。
中には浄住寺のように、ほんの数年前まで穴場中の穴場だったが今や紅葉ライトアップまで行われるようになったスポットもあります。
まだまだ京都には次の浄住寺ともいうべき隠れた穴場紅葉スポットがたくさんあります。
MKタクシーの観光ドライバーは、かつての浄住寺のように秘密の紅葉スポットを知っています。
京都の定番観光スポットはもう行き尽くしたという方は、ぜひMKの観光タクシーをご利用ください。
浄住寺の関連記事
MKタクシーのオウンドメディアであるMKメディアの編集部。京都検定マイスターや自動車整備士、車載広報誌のMK新聞編集者、公式SNS担当者、などが所属。京都大好き!旅行大好き!歴史大好き!タクシー大好きです。