梅の主な品種を紹介!京都で見られるおすすめの美しい梅の園芸品種
紅梅に白梅にピンクの梅や枝垂梅、実を採取するための実梅など、梅には多彩な園芸品種があります。
古くから品種改良が行われてきた梅の品種数は、300とも500ともいわれくらいです。
いろいろな梅の品種のうち、京都で見られる品種と梅の奥深い世界を紹介します。
梅について
梅(ウメ)は、古くから日本人に愛されてきた花です。
あでやかかつ可憐な花とふくよかな香りは、わたしたちを魅了してきました。
梅の実は梅干しや梅酒に加工され、重要な果樹でもあります。
日本で梅は松竹梅としてめでたい植物の一つで、中国でもは四君子(梅・菊・竹・蘭)の一つとされます。
梅の歴史
梅は、バラ科サクラ属のスモモ亜属に属する落葉高木です。
同じスモモ亜属のスモモ、アンズとは近縁で交雑することもあります。
桜(サクラ)が種類としては、ヤマザクラやエドヒガンなど数種類に分類されるのに対し、梅は単一の種類です。
梅の原産地は中国です。
中国では、古くから実を酸味料・薬として使用してきました。7,000年前の遺跡からも梅が出土しています。
のちに花の美しさを愛でられるようになり、観賞用としても広く利用されるようになりました。
漢詩ではおなじみの題材として、頻繁に取り上げられています。
梅は日本にも古くから持ち込まれ、縄文時代末期の遺跡からも梅の種などが発見されています。
弥生時代になると、全国各所の遺跡から梅の種が発見されておりいます。
本格的に普及したのは、奈良時代のことです。中国から花を観賞用する目的で持ち込まれたとされます。
平城京跡からは、2,000個などまとまった数の梅の種が発見されています。
中国では、紀元前200年以前に成立した「書経」にも記載され、古くから観賞用、食用、薬用として利用されていました。
ただし、近年の調査では日本の梅の品種と中国の梅の品種は遺伝的な差が大きく、人間が人為的に日本に持ち込む以前から日本に自生していた梅が広がっていった可能性もあることが示唆されています。
梅は日本には自然にはほとんど自生していません*1。梅は人の手が入らなければ日本では生きていけない植物なのです。
古くは単に「花」といえば梅のことを指すほど日本人にも愛されてきました。
新元号「令和」が、現存する日本最古の和歌集として知られる万葉集の梅花の歌三十二首の序文
時に、初春の令月にして、気淑く風和らぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後の香を薫らす
から採られたのも記憶に新しいところです。
古今和歌集より採られた、百人一首の紀貫之の和歌はよく知られています。
人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける
京都に都が移った平安時代前半の学者であり政治家である菅原道真が梅を愛したことで知られます。
京都の北野天満宮をはじめ全国12,000社といわれる天満宮の多くでは、多くの梅が植えられています。
梅の用途
梅の果実は、様々な用途で利用されています。
そのままでは酸味が強すぎるため、様々な加工を経てから食用とされます。
ほとんどの果樹は果実を生食するのに対し、梅は加工専用であることが大きな特徴です。
同じスモモ亜属であるスモモ、アンズ、プルーンは生食が可能なため、全世界で栽培されていますが、梅はほとんど東アジアのみで生産されています。
生の梅はあまりミネラル類を含んでいませんが、梅干しなどに加工することで、豊富なミネラル類やクエン酸を採ることができます。
特にクエン酸には強い殺菌効果があり、老化防止や疲労回復などの効果があります。
日本では梅は観賞用として広がりましたが、鎌倉時代ごろから食用としての利用も広がり、梅干しを作る技術もこのころに完成したとされています。
梅は、日本全国で71,100トン(2020年)の収穫量があります*2。
その3分の2は関西の和歌山県の生産です。
収穫された梅の7割は加工用として梅干し・梅漬け用に出荷され、1割は加工用として梅酒等に出荷されます。残りの2割は青梅のまま出荷され、家庭等で梅干しや梅酒*3ほか様々な用途で利用されています*4。
かつては梅干しをつくるときにできる副産物である梅酢も、重要な調味料として広く使われていました。
まだ若い青梅は固いため、梅酒に最適です。氷砂糖とホワイトリカーやブランデーに漬けこんで半年ほど熟成させると、梅酒が完成します。
やや熟して黄色くなりはじめた青梅は、梅干しに最適です。一か月ほど塩漬けにし、数日天日干しすると昔ながらの梅干しが完成します。赤シソを使うと鮮やかな赤色に仕上がります。
さらに熟して黄色くなってきた梅は、梅ジャムに最適です。細かく刻んで砂糖と煮るとジャムになります。
しかし、江戸時代には梅の果実は食用としての利用されるよりも、産業用としての利用が主流でした。
梅の実を燻製にした烏梅(うばい)から作るクエン酸が染色用の媒染剤として盛んに利用されてきました。
明治に入って化学的に製造された媒染剤や化学染料に置き換えられるまで、梅林の主目的は烏梅の生産でした。
産業用として利用されなくなってからも、戦前には軍需用の保存食品として梅干し用の生産が拡大しました。
戦後は食料増産のために梅林から田畑へと転換されたため、1958年には戦前の半分程度まで栽培面積が減少しました。
1962年に酒税法改正によって家庭での梅酒づくりが解禁されたことから再び生産が拡大しました。
近年は中国からの梅製品の輸入拡大の影響や、梅農家の高齢化もあって、徐々に生産量は減少しつつあります。
なお、世界のアンズと梅を合わせた生産量は、トルコが第1位で2割を占めています。
2019年の統計では、日本は第13位に位置します。世界シェアは2.2%です。
意外と健闘しています。
京都での梅の生産
京都府の梅の収穫量は223トンです*5。全国に占める割合はわずか0.3%程度です。関西では和歌山県が圧倒的です。
京都では、市町村別にみると、1万本の青谷梅林(城陽市)がある城陽市が圧倒的で、半分程度を生産しています*6。
次いで京丹後市や京都市などで生産されています。
京都府内で植えられている梅の品種ごとの面積では、青谷梅林の特産品種である城州白(17.0ha)が最も多く、次いで和歌山が有名な南高(7.9ha)、東日本で主要な品種の白加賀(4.3ha)、小梅(4.0ha)と続きます*7。
城州白は、京都府以外では関西の滋賀県でわずかに生産されている程度の品種で、9割を京都府が占めています。
まさに城州白は、京都の梅なのです。
しかし、近年は梅干し梅酒の消費量の減少や担い手となる農家の減少による、京都府における梅の生産は減少傾向にあります。
梅の品種紹介
梅の品種の基本
現在、梅には300とも500とも言われる多彩な品種があります。
一般には、白い梅を「白梅」、赤い梅を「紅梅」、枝垂れた梅を「枝垂梅」と呼びますが、これらは品種の名称ではありません。
もっと細かいグループ分けがあります。
まず、最も大きなくくりとしては、日本系の梅と中国系の梅です。
日本で長く品種改良を加えられてきた梅は、中国の梅とは遺伝子レベルで差異が生じています。
本稿では、中国の梅は考慮せずに日本の梅について述べていきます。
次の大きなくくりは、花を楽しむための花梅(ハナウメ)と、実を採取するための実梅(ミウメ)に分かれます。
花梅は、花の美しさはもちろん、美しい樹形も鑑賞ポイントです。色も形も様々な品種が作られてきました。
実梅は、たくさんのおいしい実ができることはもちろん、育てやすさや収穫のしやすい樹形なども重要です。採取した梅の用途に応じて様々な品種が作られてきました。
花梅にも実はなりますが、実が小さかったり、種が大きすぎたりで食用とするには効率的ではありません。
京都では、花を楽しむ花梅がメインです。花梅でも実が食用にならないわけではなく、ある程度は実を採取することも可能です。
そして花梅は、後述のとおり3系9性に分類されます。
梅の品種の歴史
中国から伝わった梅は、白色の花が開花する白梅だけでした。
貞観11年(869年)に完成した続日本後紀(しょくにほんこうき)で初めて赤い紅梅が記録にあらわれました。
古くから品種改良が加えられ、天和元年(1681年)に出版された日本で最初の園芸書である「花壇綱目」には、53品種の梅が掲載されています。
江戸時代にまとめられた梅の品種目録である「韻勝園梅譜」には、97種の梅の品種が収録されています。
宝暦10年(1760年)の「梅品」に白梅29品種、紅梅25品種、1905年の「梅花集」に320余種が書き残されています。
現在、これらの品種全ては残っていませんが、今もって品種の多さは一口で言い切れないものがあります。
関西でたくさんの梅の品種を見られるところといえば、京都の京都府立植物園のほか、奈良県の月ヶ瀬梅林(奈良市)にある梅の品種園、大阪府の大阪城公園(中央区)、兵庫県の綾部山梅林(たつの市)にある世界の梅公園などがあります。
多彩な梅の品種を品種名や説明板付きで学ぶことができます。
世界の梅公園では、日本ではあまり見られない中国の梅もたくさん見ることができます。
花梅の3系9性分類
前述の通り、花を観賞するための花梅は、様々な特徴から3系9性に分類されます。
花梅の品種は、野梅系(やばいけい)、緋梅系(ひばいけい)、豊後系(ぶんごけい)の3系に分けられます。
野梅系の品種はさらに野梅性、紅筆性、難波性、青軸性の4性に、緋梅系の品種はさらに紅梅性、緋梅性、唐梅性の4性に、豊後系の品種はさらに豊後性と杏性に2性に分けられます。
この3性9系が一般的な花梅の品種分類法です。
野梅性、紅梅性、豊後性、杏性の4性に分ける分類法もありますが、一般的ではありません。
これらの分類は、明治時代に小川安村によって提唱されました。
梅の分類がはっきりしなかった当時としては、画期的な分類法でした。のちにこの9分類がさらに3つの系に分類され、今もこの3系9性分類説が広く使われています。
なお、枝垂梅は外見上明らかに差異がありますが、枝垂梅というグループはありません。
様々な系統の梅のうち、枝垂れる特性が発現した品種の通称です。
枝垂れ性は、ジベレリンという植物ホルモンが遺伝的に不足すると発現します。
野生では不利な性質ですが、見た目の美しさから選抜され、様々な枝垂梅の品種が作出されてきました。
これらの日本で作られた品種とは別に、中国で品種改良された中国系の梅の品種群もあります。
日本の梅の品種とは遺伝的に隔たりが大きく、中国の梅は見た目の雰囲気もちょっと異なります。
花の色も原種に近い白色から紅色、濃紅色、淡紅色などがあります。
「咲き分け」といって、紅白の両方の花が開花する品種もあります。「源平咲き」ともいわれます。
紅梅と白梅を接ぎ木することにより、人為的に咲き分ける梅を作ることもありますが、この場合は通常枝ごとに紅梅と白梅に分かれます。
「思いのまま」や「春日野」など咲き分けをする品種の場合、同じ枝から赤や白あるいは紅白入り混じった花が開花します。
これは、赤い色素を作る遺伝子が働いている細胞と働かない細胞が混在することで生じます。
紅白咲き分けのメカニズムは完全には解明されていませんが、動く遺伝子(トランスポゾン)によるものとされています。
近縁の桃(モモ)はより顕著にこの特徴があらわれ、観賞用の花桃(ハナモモ)には、紅白の源平桃など多彩な品種があります。
梅や桃と同じく枝垂性の品種も多数あります。
枝垂梅という系統群があるわけではなく、様々な系統の中に枝垂性の梅があります。
野梅系の品種に枝垂梅が多いですが、緋梅系や豊後系の枝垂梅も珍しくありません。
ただし、全て観賞用品種のため実梅の枝垂梅はありません。
枝垂れた枝にたくさんの実がついたら折れてしまいます。
普通の梅と比べて枝垂梅系の品種の梅は、概ね半月程度遅く開花します。
盆栽仕立ての「盆梅」
梅の特殊な鑑賞方法として、「盆梅(ぼんばい)」があります。
盆栽仕立ての梅のことです。
梅に限らず、様々な花木が盆栽として鑑賞対象になっていますが、梅は特に人気で「盆梅展」が開かれます。
関西では特に盆梅の人気が高く、、長浜や石山寺(滋賀県)や郡山城(奈良県)の盆梅展が有名です。
2022年には、北野天満宮でも盆梅の展示が始まります。
今のような盆梅展が始まったのは、1952年の長浜からです。
以来、盆梅展は冬場の観光資源が少ない時期の貴重な集客イベントとして各地で開催されるようになりました。
小さな盆栽ながら、樹齢400年という長寿の盆梅もあって驚きです。
野梅系の品種
野梅系(やばいけい)はもっとも原種に近い系統の品種群です。
山地の自生種から生じたもので、一重咲き、八重咲、そして花色の富んだ色々なものがあります。
「やばいけい」という語感も面白いですね。
さらに野梅性(やばいしょう)、難波性(なにわしょう)、紅筆性(べにふでしょう)、青軸性(あおじくしょう)の4性にわかれます。
原種に近い野梅性は、花梅の品種の中でも最も良く見かけます。京都で見る花梅の半分くらいは野梅性といっても過言ではないかもしれません。
野梅系の中でも難波性や紅筆性はめったに見かけません。
花の色は白色から淡紅色、紅色と多彩ですが、野梅系に共通する特徴としては、香りが強い、花がやや小ぶり、多くの枝が出る、といって点が挙げられます。
野生の梅に近いため強健で、他の品種の梅の台木としても利用されます。
以下は京都と京都近郊の関西で見た記憶のある野梅系の梅の品種です。
野梅性の梅の品種
比較的早咲きで、花の色は白色から淡紅色、花の大きさは中輪の品種が多いです。
9性ある梅の品種のなかでも、最も多くの品種が含まれます。
白色の梅の品種
- 鶯宿(おうしゅく)
- 月宮殿(げっきゅうでん)
- 玉牡丹(たまぼたん)
- 冬至(とうじ)
- 初雁(はつかり)
- 一重野梅(ひとえやばい)
- 八重野梅(やえやばい)
淡紅色の梅の品種
- 見驚(けんきょう)
- 古城の春(こじょうのはる)
- 玉垣枝垂(たまがきしだれ)
- 道知辺(みちしるべ)
紅色の梅の品種
- 寒紅梅(かんこうばい)
- 呉服枝垂(くれはしだれ)
- 八重寒紅(やえかんこう)
紅白咲き分けの梅の品種
- 春日野(かすがの)
- 思いのまま
難波性の梅の品種
樹形が小ぶりで小枝が多いのが特徴の品種です。
- 玉拳(ぎょっけん)
- 御所紅(ごしょべに)
紅筆性の梅の品種
つぼみの先端が赤くとがって筆のような形になることが紅筆性という名称の由来です。
野梅系のなかでは、豊後系に近い特徴を持っています。
- 内裏(だいり)
- 紅筆(べにふで)
- 八重海棠(やえかいどう)
青軸性の梅の品種
緑色をしていることが青軸性という名称の由来です。
若い枝はどの品種も緑色ですが、青軸性は古い枝も緑色をしています。
つぼみや萼もやや緑白色をしています。
- 月影(つきかげ)
- 月の桂(つきのかつら)
- 緑萼(りょくがく)
- 緑萼枝垂(りょくがくしだれ)
緋梅系の品種
緋梅系(ひばいけい)は、枝の断面が赤い系統の品種群です。
野梅系から変化したもので、枝は鮮緑、花は紅色、枝の切り口は淡紅色。
花香に富み、繁殖は容易で盆栽用としても適しています。
「緋梅」というだけあって、大半が赤い花を咲かせる紅梅・緋梅ですが、白梅もあります。あくまで枝の断面の色が基準になります。
なお、緋色とはやや黄色がかった鮮やかな赤色のことです。
茜色やスカーレットとも同じあるいはほぼ同じ色です。
緋梅系は、さらに紅梅性(こうばいしょう)、緋梅性(ひばいしょう)、唐梅性(とうばいしょう)の3性にわかれます。
緋梅系ではなく紅梅系と言われることもありますが、同じ系統の品種群を指します。
一般に「紅梅」と称される赤い梅の品種であっても、前述のとおり緋梅系あるいは紅梅系とは限りません。
判断基準は枝の断面ですが、枝を切って確かめるわけにもいきません。
緋梅系は野梅系に次いで見かけます。紅梅性が最もよく見ますが、緋梅性も珍しくはなく、唐梅性も見ることがあります。
野梅系と比べると、紅梅性、緋梅性、唐梅性の3性は違いが判然としないこともあり、資料によって性が異なることもあります。
以下は京都と京都近郊の関西で見た記憶のある緋梅系の梅の品種です。
紅梅性の梅の品種
明るい赤色をした花の品種が多いです。
- 幾夜寝覚(いくよねざめ)
- 鴛鴦(えんおう)
- 大盃(おおさかずき)「おおさかずき」で変換すると「大阪好き」に(笑)
- 黒雲(しののめ)
- 新平家(しんへいけ)
- 緋の司(ひのつかさ)
- 紅千鳥(べにちどり)
緋梅性の梅の品種
濃紅色をした花の品種が多いです。
樹形は全体にやや小ぶりです。
- 鹿児島紅(かごしまべに)
- 玉光枝垂(ぎょっこうしだれ)*8
- 鈴鹿の関(すずかのせき)
- 蘇芳梅(すおうばい)
唐梅性の梅の品種
やや下向きに花を咲かせます。
- 唐梅(とうばい)
- 八重唐梅(やえとうばい)
なお蝋梅(ロウバイ)のことを唐梅ということもあります。
ロウバイはクスノキ目で梅とはかなり系統は異なる花です。
豊後系の品種
豊後系(ぶんごけい)の品種は、近縁のアンズとの雑種で、大きな花が特徴です。
枝・葉・花ともに他系より大形で美しいのですが香りがなく、接ぎ木の台木用・庭木・実梅によく利用されています。
中には花の美しさだけから盆栽用として販売されている時がありますが、やや不向きとの説もあります。
遅咲きの品種が大半で、花の香が控えめなのも特徴です。
さらに豊後性(ぶんごしょう)、杏性(あんずしょう)の2性にわかれます。
杏性はアンズから変化したもので花香は少なく、梅の中で一番遅く咲きます。
豊後性のうち摩耶紅梅などを、摩耶性(まやしょう)として3性にわける場合もあります。
摩耶性は豊後性の変種で、紅八重咲で花香が少なく、遅咲きです。
豊後系の中でも特にアンズの影響が強く、梅よりはむしろアンズに近いくらいなのが杏性です。
実梅の中でも豊後系に近いものは、アンズと同じく大きな梅が実るのが特徴です。
豊後性は枝がやや太めですが、杏性は枝がやや細めです。
以下は京都と京都近郊の関西で見た記憶のある豊後系の梅の品種です。
豊後性の梅の品種
「豊後」という品種もありますが、豊後性の梅の総称として使われることもあります。
そのため豊後と称される品種であっても、違いがある場合もあります。
- 桜鏡(さくらかがみ)
- 滄暝の月(そうめいのつき)
- 白牡丹(はくぼたん)
- 藤牡丹枝垂(ふじぼたんしだれ)
- 豊後(ぶんご)
- 未開紅(みかいこう)
- 武蔵野(むさしの)
- 楊貴妃(ようきひ)
杏性の梅の品種
豊後性とは、葉に毛がない点が異なります。
- 一の谷(いちのたに)
- 緋の袴(ひのはかま)
- 淋子梅(りんしばい)
実梅の品種
実梅は、大きく小梅と普通の梅に分かれます。
実梅は、純粋な梅ではなく、梅よりも大きな実ができるアンズやスモモとの交雑種です。
一般的に、実梅は花梅よりも開花が遅い特徴があります。
梅よりも開花が遅いアンズやスモモの影響を受けているということもありますが、より確実に受粉して実をつけるため、花粉を媒介する虫が増える暖かい時期に咲いた方が有利なためでもあります。
地域によって植えられる実梅には大きな差があり、南高梅のほとんどは関西の和歌山県、白加賀のほとんどは東日本、後述のとおり城州白のほとんどは京都府で生産されています。
実をつけるだけあって、微妙な気候の差に大きく影響を受けるのでしょう。
実梅には、南高梅(なんこううめ)や白加賀、城州白(じょうしゅうはく)などの品種があります。
全国の梅生産量のうち、概ね南高梅が3割、白加賀が1割を占めています。その他、竜峡小梅、鶯宿、豊後などの生産量が比較的多いですが、地域によって様々な実梅が生産されています。
城州白は、城州(山城国)の白梅というだけあって、京都発祥の梅の品種です。
京都特産の品種として人気が高く、青谷梅林では主に城州白が植えられています。
甲州小梅や信濃小梅など小梅の品種群もあります。
小梅はカリカリ梅などに利用されます。
実梅は本来は実を取ることを目的とした品種ですが、観賞用として梅林で植えられていることも少なくはありません。
京都では、特に白加賀は観賞用としても盛んに植えられています。
以下は京都と京都近郊の関西で見た記憶のある実梅の品種です。
- 鶯宿(おうしゅく)*9
- 玉英(ぎょくえい)
- 月世界(げっせかい)
- 甲州小梅(こうしゅうこうめ)
- 古城(こじろ)
- 城州白(じょうしゅうはく)
- 白加賀(しろかが)
- 信州小梅(しんしゅうこうめ)
- 南高(なんこう)
京都特産の実梅の品種としては、青谷梅林の主力である城州白がよく知られています。
城州白は、産業用の烏梅(うばい)としての利用がなくなり、食用として利用されるようになった明治以降に京都に定着した品種です。
おわりに
梅といえば、四季を通じても桜と紅葉に次いで人気の植物です。
単に紅梅や白梅、枝垂梅くらいであれば誰でもわかりますが、実に多彩な品種があります。
MKタクシーの観光ドライバーであれば、梅についてもいろんな情報が引き出しに入っています。
多彩な品種の梅を見られるスポットへご案内することもできます。
MKの観光貸切タクシーなら、京都の梅を心行くまで楽しむことができます。
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*1:大分県や宮崎県の一部では、野生化した個体が自生しているという。もともと九州にも自生していたという説もあり。
*2:令和2年産果樹生産出荷統計
*3:1962年の酒税法改正までは、梅酒の自家製造は禁止されていた。
*4:うめ用途別仕向実績調査
*5:令和2年産果樹生産出荷統計
*6:京都府農林水産統計年報[h26~h27]
*7:平成29年産特産果樹生産動態等調査
*8:京都府立植物園では白梅に「玉光枝垂」の札がついていますが、紅梅が正しいようです。ひょっとすると同じ品種でも白梅と紅梅があるのかもしれませんが。
*9:花梅の「鶯宿」と実梅の「鶯宿」は別の品種で、八重の鶯宿は花梅、一重の鶯宿は実梅のようです。同じ鶯宿でも結構違うのが疑問でしたが、納得です。