毎月21日は東寺「弘法市」!骨董や食品など何でも売っている京都一の縁日
目次
京都で毎月21日に開催される東寺の「弘法市」。
骨董品はもちろん、食料品や衣料品、食べ歩きグルメまで何でも売っている楽しい縁日です。
特に1月21日の「初弘法」と12月21日の「終い弘法」は大賑わいします。
毎月21日に東寺で弘法市が行われるようになった歴史から、今の弘法市や東寺への行き方などを解説します。
2024年11月21日の東寺弘法市は、朝から絶好の好天に恵まれています。
朝は冷え込んだものの、お昼は比較的気温も上がる見込みです。
例年より遅れている紅葉もかなり色づいてきました。紅葉狩りもかねて東寺弘法市を訪れてみてください。
2024年11月21日の東寺弘法市
美しい青空のもと、2024年11月21日の弘法市が開催されています。
朝から多くの人でにぎわいを見せています。
例年より遅いとはいえ、イチョウの黄葉も進んでいます。
南大門近くのイチョウの下にも露店が出ています。
角度によってイチョウ越しの五重塔や金堂、南大門の景色を楽しめます。
イチョウだけでなく、モミジの紅葉も進んでいます。
東門である慶賀門前では、紅葉と宝蔵の堀の向こう側に五重塔の景色が見えます。
冬の東寺弘法市で例年朝から大人気のすぐきのお店も出ています。
「初物すぐき」を求める人たちが朝から行列を作っています。
秋らしい品々も並びます。干し柿を売る露店もあちこちにあります。
2025年の巳年の関連商品や、高野槙などお正月関連の露店も出ています。
9月からあらたに東寺弘法市に出店が始まった、猿まわしも露店も設営を終えています。
まだ朝なので「もぐもぐタイム」中です。「随時公演」予定とのことです。
東寺では、秋の特別公開中です。五重塔初層や宝物館、観智院が公開されています。
弘法市が終了後にはなりますが、紅葉ライトアップと金堂・講堂の夜間特別拝観も行われています。
観智院のご本尊は虚空蔵菩薩です。ちょうど今は秋の「虚空蔵菩薩十三参り」が行われています。
数えで13歳の子どもがお参りし、知恵を授かる行事です。
今日は絶好の好天ということもあり、「これ、まけてえや」という声に対して「今日は天気もええし、これからお客さんもいっぱい来るやろうから、朝からそんなにまけられへんわ」という声も聞こえてきます。
ぜひ、今日は東寺弘法市を訪ねてみてください。
東寺の弘法市とは
弘法市の歴史
真言宗の開祖であり、東寺を真言密教の拠点として発展させた弘法大師こと空海は、承和2年(835年)3月21日1に入定(にゅうじょう)しました。
東寺では、延喜10年(910年)3月21日より弘法大師が入定した日に、開祖の供養を行う法会(ほうえ)である「御影供(みえく)」を行うようになりました。
当初は僧侶のみによる法会でしたが、天福元年(1223年)に康勝作の弘法大師坐像(国宝)が大師堂に安置され、庶民も御影供に参詣できるようになりました。
もともと御影供が行われるのは空海の祥月命日である3月21日だけでしたが、延応元年(1239年)からは、毎月21日に行われるようになり、多くの人々が御影供の参詣に訪れるようになりました。
もともと鎮護国家を祈る国営の寺院として誕生した東寺でしたが、弘法大師信仰の高まりもあって庶民の信仰によって支えられる寺院へと変貌していったのです。
やがて御影供に訪れる大勢の参詣者を相手に、境内で簡単な食事やお茶を提供する茶店が出るようになりました。今の弘法市の原形の誕生です。
江戸時代になると、茶店だけではなく、様々な商品を扱う露店が多数出るようになり、今のように骨董品など様々な品が売られる賑やかな弘法市へと発展していきました。
寛文11年(1671年)の「都案内者」「弥生の二十一日は大師御入定の日なれば、まづ東寺へまいる人、大宮通、上は二条の御城の南より、下は東寺の内まで、御堂の椽(縁側のこと)はみぬ人おほく、その道筋には人はうばりて」と記載されています。3km以上離れた二条城まで行列ができたというのはさすがに誇張かもしれませんが、大賑わいしたことは間違いないでしょう。
江戸時代中期の「菟芸泥赴」には、「月毎の二十一日には影堂開帳午時までありて法事あり。就中三月二十一日には終日道俗群集せり」と記載されています。
弘法市が毎月21日に行われるのは今と同じですが、特筆するほど人が集まるのは弘法大師の命日である正御影供の三月二十一日で、まだ一月の初天神や十二月の終い弘法の賑わいはなかったことがわかります。
寛政11年(1799年)に刊行された秋里籬嶌(あきさと りとう)の京都ガイドである「都林泉名勝圖會(みやこりんせんめいしょずえ)」でも、多くの参詣者でにぎわう東寺の御影供が描かれています。植木屋や食事を出す露店が見えます。
ただやはりこれらの賑わいは三月二十一日が中心で、毎月二十一日に多くの人でにぎわうようになったのは明治時代以降のことです。
1922年編纂の「東寺略史」にも「毎月二十一日御影供参詣者の常に群れをなし、殊に現今の如く、歳毎につき毎に益々盛となるに至りしは、実に近時よりのことなりとす」と記されています。
1895年刊行の「京華要誌」に掲載されている京都の年間行事表においても、4月21日に御影供の表記はあるものの、1月21日の初弘法や12月21日の終い弘法の表記はありません。
明治時代になると、弘法大師信仰のみでなく御影供にあわせて開催される市場を目当てとして、4月21日の正御影供だけでなく毎月21日に東寺へと集まるようになりました。
明治維新後に困窮した東寺の財政を支えるのにも、毎月21日に集まる参詣者の喜捨や弘法市の露店からの出店料が役立ったといわれます。もともと弘法市は東寺の門前で行われていましたが、境内で行われるように変わりました。
戦前の最盛期には1,000軒を超える露店が出るようになり、終い弘法や初弘法では1,300軒を数えました。今のように物販や飲食だけではなく、芝居小屋や大道芸など多彩な露店もあり、庶民に様々な娯楽を提供しました。
戦中には物資不足のために50軒にまで激減したものの、戦後には復活しました。
弘法市の露店は、東寺の諸堂をとりまくように出店されていましたが、1965年に東寺が有料拝観を開始するときに金堂、講堂、五重塔の周囲に柵をもうけ、あわせて弘法市の露店も今のように通路にあわせて区画化され、整然と並ぶように変わりました。
また九条露天商組合が結成され、弘法市の露店と東寺の間を取り仕切るようになりました。
しかし、生活スタイルの変容等の影響もあり、かつては1,000軒を超えた露店も次第に減少し、1978年の終い弘法での調査では765軒になっていました。
今では、再び弘法市の人気が復活し、骨董品をはじめ1,200~1,300もの露店が出店されるようになりました。
年間12回行われる弘法市ですが、毎年1月21日は「初弘法」、12月21日は「終い弘法(しまいこうぼう)」といわれ、一段と盛り上がります。
現在は、弘法大師の祥月命日である3月21日を新暦換算した4月22日に最も近い4月21日には、「正御影供(しょうみえく)」が行われます。
正御影供以外の御影供は月並御影供といいます。
参考文献:佐藤久光「東寺・御影供における商業活動」
弘法市の骨董品などの露店の特徴は、基本的にプロが出店しているという点です。
別に固定店舗があり、毎月21日に東寺弘法市で出張販売を行っているというパターンが多いです。
誰でも出店可能なフリーマーケットに近い縁日とは異なります。
普段の拠点も京都というお店が多いですが、大阪奈良滋賀など関西一円からのお店も多数あり、中には北陸や中国、関東、九州などからの出店もあります。
一方で、固定店舗は持たない露店も少なくありません。以前は香具師(やし)やテキヤと呼ばれていた形態です。
京都の弘法市や天神市だけでなく、広範囲の市を巡回して商売しています。
1,200という露店数は、北野天満宮の天神市をしのぎ、東寺弘法市は日本一の規模だと言われています。
そのうち骨董店の数は概ね350店舗くらいです。
戦前までは夏祭りの露店と同じく、子どもの遊び場の露店も多数ありました。
最近はそういった露店の姿は見かけませんでしたが、2024年6月に射的の露店が出店していました。
かなり簡易な射的ですが、外国人観光客の子どもも興味津々の様子でした。
弘法市は、雨天決行です。大荒れの天気でさえなければ、雨や雪でも開催されます。ただし、露店なので雨だと出店されないお店もあります。
骨董品・古美術品なので、濡れては困る商品も多く、売られる品数も減ってしまいます。
お客さんの数も雨だとかなり減ります。しかし、雨だからこそ掘り出しものに出会えるかもしれません。雨の日こそ弘法市にチャンスあり。
弘法市の露店が出店されるのは、金堂の南側と講堂・金堂の西側、食堂の周囲、慶賀門の西側、北大門~北総門の櫛笥通り(くしげどおり)です。
言い換えると、有料区域と塀で囲まれた区域以外の全域です。
東寺の境内一円にところ狭しとたくさんの露店が並びます。
その他の空きスペースは、弘法市出店者の自動車が並んでいます。
さらに東寺の境内からあふれ出て九条通り北側や、東寺道の両側などにも弘法市の露店が並びます。
特に骨董品店が集中的に並ぶのは、金堂前と金堂の西側エリアです。
金堂前はがっしりとした大きな店舗が多く、骨董品らしい比較的価格帯が高めのお店が多くあります。
金堂の西側はやや簡易な店舗が多く、雑多な物品が比較的安い値段で売られるお店が目立ちます。
露店の位置は、弘法市の公式HPでも一部公開されています。
これらの露店の配置は東寺出店運営委員会が計画的に割り振っています。
大まかな配置は、1965年に東寺拝観が有料化され、有料エリアが区切られて以来あまり変わっていません。
東寺への入り口は、北総門・北大門、慶賀門、南大門と弘法市のときのみ開かれる南大門の西側の穴門です。
弘法市への来場者の約4割は東の慶賀門から入ります。約3割が南の南大門と穴門から、約2割が北門で、約1割が西門から入ります。
西の壬生通り沿いから御影堂経由で弘法市へといたるルートもあります。
弘法市の行われる東寺への行き方
弘法市の日は、東寺の駐車場は閉鎖されます。
近隣の駐車場もだいたい埋まってしまうので、マイカーでのアクセスはあまりおすすめできません。
自転車の場合は、北端の八条通り沿いにある北総門に臨時駐輪場が設けられます。
加えて壬生川通沿いの西門前も臨時駐輪場として指定されます。西門前はないこともあります。
2022年12月に東寺の境内北東部にある洛南会館が閉館となったのに伴い、弘法市開催時は旧洛南会館前も臨時駐輪場となっています。
1969年に開館した洛南会館は、修学旅行生の定番宿泊施設でした。
しかし、施設の老朽化によって歴史を閉じました。
建物は解体予定ですが、2024年時点ではまだそのままになっています。
京都市内中心部からは最もアクセスがよい駐輪場のため、多くの自転車がとまります。
その他にも慶賀門外や東寺道などあちこちに駐輪されていますが、正式なものではありません。
京都市内の市街地は東寺付近を含めてほぼ自転車等撤去強化区域に指定されています。
自転車で弘法市を訪れる場合は駐輪マナーを守りましょう。
近鉄東寺駅から弘法市へ
弘法市が行われる東寺に行くには、まずは最寄駅の近鉄東寺駅から。
A. 九条通りルート
もっとも多くの人が利用するのが、九条通りルートです。
東寺駅から九条通り沿いにまっすぐ西へ進むと、東寺の南門である南大門まで450mです。
大宮通りを渡ると、歩道いっぱいに弘法市の露店が広がります。
大宮九条の交差点では正面に五重塔が見える、弘法市へのおすすめルートです。
B. 東寺道ルート
もうひとつが、古くから東寺の参詣道であった東寺道のルートです。
東寺駅から近鉄高架沿いに北へ進み、東寺道で西へ曲がると正面に東寺の東門である慶賀門まで550mです。
東寺道の歩道には東寺境内に入りきらなかった露店が並び、弘法市のわくわく感を楽しめるおすすめルートです。
東寺道の町並みは、2005年に「本願寺・東寺界わい景観整備地区」に指定されています。
具体的には「猪熊通の八条通から東寺道までの間,東寺道の猪熊通から大宮通までの間及び大宮通の針小路通から東寺道までの間の地域」が指定されています。
なお、東寺道は東寺通りとも言います。京都市バスのバス停名も東寺道が採用されており、一般的にも東寺道と言われることが多いです。
京都では他に伏見南浜、三条通、上賀茂郷、千両ヶ辻、上京北野、西京樫原(かたぎはら)が指定されています。
なお、
京都駅から弘法市へ
京都駅から東寺駅まで近鉄電車でひと駅乗っても良いのですが、歩いて弘法市へと行く人も多いです。
いくつか東寺への行き方はありますが、京都駅八条口から室町通をまっすぐ南へと下り、東寺道を西へ西へと進み東寺の東門である慶賀門へと進むのがおすすめです。
約1kmの道のりです。
ベストは京都駅からMKタクシー
実は、もっともおすすめな京都駅から東寺への行き方は、八条口を出てすぐのところにあるMKタクシー専用のりばからMKタクシーで弘法市へと行く方法です。
弘法市までなら信号の具合によっては、ぎりぎり初乗運賃で行ける場合もあります。
2021年12月現在でMKタクシーの初乗運賃は1.2km420円です。初乗運賃では無理でも、500円あるいは580円で東寺まで行くことができます。
3人いれば近鉄をひと駅乗るよりも安く行けちゃいます。
東寺への往路はわくわくしながら歩くのもいいですが、弘法市であれこれ買った帰りはタクシーがおすすめです。
東寺の拝観情報
開門時間 | 5:00~17:00 |
拝観時間 | 8:00~17:00(受付は16:30) |
拝観料 | 一般 500円 高校生 400円 中学生以下 300円 |
TEL | 075-691-3325 |
住所 | 京都市南区九条町1 |
アクセス | 近鉄「東寺」より10分 JR「京都」より15分 |
宝物館春期特別公開「弘法大師行状絵巻修理完成記念 東寺と弘法大師行状絵巻-深き徳 高き志-」
公開期間 | 2023年3月20日(月)~5月25日(木) |
拝観時間 | 9:00~17:00(受付は16:30) |
拝観料 | 一般 500円 中学生以下 300円 |
五重塔 初層の特別公開
公開期間 | 2023年4月29日(土)~5月25日(木) |
拝観時間 | 9:00~17:00(受付は16:30) |
拝観料 | 一般 800円 高校生 700円 中学生以下 500円 |
夜桜ライトアップ
公開期間 | 2023年3月18日(土)~4月16日(日) |
拝観時間 | 18:00~21:30(受付は21:00) |
拝観料 | 大人・高校生 1,000円 中学生以下 500円 |
公式ホームページ:東寺 – 世界遺産 真言宗総本山 教王護国寺
東寺の弘法市は有料エリアではないので、拝観料は必要ありません。
弘法市とは直接関係ありませんが、ぜひ見て欲しいのが宝蔵の堀にいるカルガモの親子です。
東門の慶賀門を入ってすぐのところにある池です。
蓮のなかで、4羽のひなをつれたカルガモの親子の姿があります。
とってもかわいらしいので、ぜひ見つけてください。
コロナ禍における弘法市の開催状況
弘法市の開催条件
まん延防止等重点措置 → 開催※
緊急事態宣言 → 中止
同じく東寺で毎月第一日曜日に開催される「東寺ガラクタ市」も、まん延防止等重点措置でも中止とならずに開催されます。
緊急事態宣言が発令されていると、弘法市も東寺ガラクタ市も中止となります。
※2022年1月までは、まん延防止等重点措置時は中止でしたが、2022年2月に開催と改定されました。
コロナ禍での弘法市の開催実績
2020年(10回中3回開催)
3月 開催
4月~10月 中止(4月16日~5月21日:緊急事態宣言)
11月~12月 開催
2021年(12回中5回開催)
1月~2月 中止(1月14日~2月28日:緊急事態宣言)
3月 開催
4月~6月 中止(4月12日~24日:まん延防止等重点措置、4月25日~6月20日:緊急事態宣言、まん延防止等重点措置6月21日~7月11日)
7月 開催
8月~9月 中止(8月2日~19日:まん延防止等重点措置、8月20日~9月30日:緊急事態宣言)
10月~12月 開催
2022年(10回中10回開催)
1月~10月 開催(1月27日~3月21日:まん延防止等重点措置)
新型コロナ禍のはじまったころは、緊急事態宣言等の有無に関わらず弘法市は中止となりました。
2020年11月からは、まん延防止等重点措置以上で弘法市は中止という開催条件がもうけられていました。
2022年2月15日(火)に、まん延防止等重点措置時は弘法市は開催すると、開催条件の変更が発表されました。
緊急事態宣言が発出されていない限り弘法市が開催はされるものの、感染防止には万全の注意を払いしましょう。
東寺境内への入口にも、アルコール等が設置されています。手指の消毒やマスク着用を守りましょう。
なお、平安神宮前で毎月概ね10日に開催される「平安蚤の市」は、新型コロナによる緊急事態宣言の有無に関わらず開催されます。
ただし、東寺弘法市とは異なり、悪天候時は中止となります。
弘法市に関するもろもろ
弘法市限定の「どら焼」
弘法市のもう一つの楽しみは、笹屋伊織さん(享保元年創業)という和菓子屋さんが限定発売する「どら焼」です。
21日をはさんで月に前後3日間だけ、東寺駅からほど近いところで販売されます。
一般にどら焼はその形がお寺の銅鑼(どら)に似ていることから、そう呼ばれるようになったそうですが、この「どら焼」は江戸時代末期、東寺より依頼を受けた五代目笹屋伊兵衛が熱した銅鑼の上で焼いて作ったのが始まりです。
もちもちとした秘伝のうす皮で棒状のこしあんを幾重にも巻き込んだ逸品。
130年余りの間変わらぬ味が今も守られ、弘法市で限定販売されています。
笹屋伊織さんの本店は七条大宮にあり、東寺からだと800mほど北へ離れています。
しかし、弘法市のときには、東門である慶賀門を出て北へ100mほど進んだところに出店があります。
近鉄東寺駅へ向かう大通り、九条通を東寺から200mほど進んだ九条猪熊東入ルに出店が出ています。
本店に行くよりは、出店で買うのが便利です。
ところで、あんこなどを小麦粉・卵などの記事ではさんだ円盤型のお菓子のことを、京都では「大判焼」というのが主流です。
他にも「回天焼」という場合もあります。大阪では、「太閤焼」ということもありますが、京都では見かけません。
関東では主流という「今川焼」は京都では全く見かけません。知識として知っている人以外には通じないと思った方がいいでしょう。
御座候の回天焼は、特に「御座候(ござそうろう)」といいますが、御座候以外の大判焼を御座候と言うことは基本的にありません。
前日20日の「お逮夜」
毎月21日の御影供に先立ち、前日の20日には「お逮夜(たいや)」という法要が行われます。
逮夜とは、一般に命日の前夜に行われる法要です。
現在一般に逮夜を行うことはほとんどありませんが、東寺では弘法大師空海の月命日の前日である20日にに行われます。
ただし、現在は夜ではなくお昼の14時から行われています。
終い弘法前日の2021年12月20日のお逮夜に行ってみました。
お逮夜は、御影堂で執り行なわれます。
お逮夜には、普段一般は入道できない御影堂の外陣(げじん)まで入ることができます。
外陣にはいすが並べられており、誰でも中で座って法要を見ることができます(堂内は撮影禁止)。
2021年は、15人程度しか人がおらず椅子の半分くらいは空いていました。
御影堂は、14世紀に建てられた国宝建築です。長らく修復工事が行われていましたが、2020年7月に全て終了しました。
もともと弘法大師の住房が発祥ということもあり、寺院のお堂ではなく住居のような建物です。
内陣に並んだ8人の僧侶が美しい重低音で朗々と読経します。天井もお堂のように高くはないため、お経の声がよく響きます。
内陣の奥では、弘法大師像が御開帳されています。
天福元年(1233年)に康勝が制作した像で、国宝に指定されています。
普段は閉じられてういる扉がお逮夜では開扉されます。
距離があるのと明暗のコントラストのため、像があることはわかりますが、よく見えませんでした。
たくさんの人でにぎわう弘法市とは異なり、お逮夜は集まる人も少ない地味な行事です。
しかし、弘法大師の遺徳をしのぶ大切な行事です。
派手さはありませんが、朗々としたお経を聞きながらしみじみと手をあわせましょう。
お逮夜が行われている時間帯には、東寺境内では翌日の終い弘法へ向けての設営工事が着々と行われています。
早い露店では、20日の日中から設営が始めっています。20日の深夜から設営を開始する露店も多数あり、21日の早朝から設営する露店もあります。
普段の拠点の位置や、露店の規模、扱う商品によって様々です。
毎年4月21日は「正御影供」
毎月21日に開催される御影供ですが、祥月命日である4月22日(ユリウス暦換算)に最も近い4月21日には「正御影供(しょうみえく)」として開催されます。
4月21日には、10時から御影堂で法要が行われ、次いで灌頂院に移動して法要が執り行われます。
正御影供では、普段非公開の灌頂院が一部公開されます。
正御影供に先立つ朝9時より、開かずの扉である灌頂院の北門が開かれます。
付近は弘法市の露店や露店出店者の車がたくさん並んでいます。
灌頂院(かんじょういん)の敷地内にある閼伽井(あかい)に絵馬が掲げられます。
灌頂院の敷地へと入ることが出来るのは、一年間でも後七日御修法の最終日である1月14日の1時間と、正御影供の5時間のみです。
正御影供では、灌頂院北門は15時まで開け放たれています。
東寺灌頂院では、阿闍梨(あじゃり)という高僧の地位を伝える「伝法灌頂(でんぽうかんじょう)」という重要な儀式が行われます。
灌頂の儀式では、頭頂に水が注がれます。灌頂で使う水をくみ上げるための井戸が閼伽井です。
閼伽井の上には立派な建屋があります。中を覗き込むと、立派な石組の井戸の姿が見えます。
今も現役の井戸として活躍しているのでしょう。閼伽井は神泉苑とつながっているともいわれます。
弘法市は賑わっていますが、灌頂院の絵馬公開は訪れる人も多くはありません。
お昼でもタイミングによっては貸切状態になります。
年1回だけという希少価値はあるものの、特に映えるものがあるわけではありません。
閼伽井には3つの絵馬が掲げられています。
毎年1つずつ差し替えられ、向かって右側が今年、真ん中が去年、左側が一昨年の絵馬です。
この絵馬は龍神が描いたもので、閼伽井の底から出てくるともいわれています。
続いて、翌2023年の絵馬です。
中央が今年分、右側が1年前分、左が2年前分を意味しているため、2022年の中央が2023年に右に、2022年の右が2023年の左に、2023年の中央は新規となっています。
この3枚の絵馬を見比べて今年の天候と豊凶を占うそうです。
馬の顔が長い → 前半に雨が長い
胴が太い → 中ごろに日照が少ない
など読み解くそうです。
2023年の絵馬はスリムなので、雨が少なめということになるのでしょうか。
農家の方は、絵馬を見て今年は日照りに注意しようと考えたのでしょう。
数年前の写真では、3枚とも大差ない馬の姿が描かれていますが、少なくとも2023年は3枚とも明確に異なる姿の馬が描かれています。
灌頂院の前には弘法大師の図像を中心とした簡単な祭壇が設けられています。
2022年も2023年も、ダイコンとリンゴがお供えされていました。
正御影供で公開されるのは、灌頂院の北側と閼伽井前だけです。
建物内はもちろん、その他のエリアもロープで区画されており入ることはできません。
正御影供が行われるとはいえ、4月の弘法市はそれほど混雑するわけではありません。
やはり、12月の終い弘法がもっとも賑わい、ついで1月の初弘法がにぎわいます。弘法市が弘法大師信仰にとどまらない京都の年末年始の行事へと成長していったことが見て取れます。
4月に弘法市を訪れる場合は、忘れずに灌頂院も訪れましょう。絵馬の公開は年1回だけです。
弘法市が行われる毎月21日の気候
京都は夏暑く、冬寒いのが特徴です。
毎月21日に行われる東寺弘法市の平均気温はどうなっているでしょうか。
平均気温 | 最高気温 | 最低気温 | 降水量 | 平均雲量※ | 備考 | |
1月21日 | 4.7℃ | 8.8℃ | 1.3℃ | 2.0mm | 7.0 | 初弘法 |
2月21日 | 6.0℃ | 10.7℃ | 2.0℃ | 2.6mm | 6.8 | |
3月21日 | 9.5℃ | 14.9℃ | 4.8℃ | 3.6mm | 6.8 | |
4月21日 | 15.5℃ | 21.2℃ | 10.4℃ | 3.9mm | 6.8 | 正御影供 |
5月21日 | 20.1℃ | 25.8℃ | 14.8℃ | 4.8mm | 7.2 | |
6月21日 | 23.8℃ | 28.3℃ | 20.1℃ | 8.5mm | 8.9 | |
7月21日 | 27.9℃ | 32.8℃ | 24.1℃ | 6.2mm | 7.6 | |
8月21日 | 28.3℃ | 33.5℃ | 24.5℃ | 5.1mm | 7.2 | |
9月21日 | 23.4℃ | 28.1℃ | 19.7℃ | 5.9mm | 7.3 | |
10月21日 | 17.4℃ | 22.4℃ | 13.2℃ | 5.0mm | 6.1 | |
11月21日 | 11.2℃ | 16.0℃ | 7.2℃ | 2.3mm | 6.2 | |
12月21日 | 6.5℃ | 10.8℃ | 3.0℃ | 1.7mm | 6.4 | 終い弘法 |
※雲量は、快晴が0で全天曇天が10。数字が大きいほど雲が多い。
12ヶ月で大きな差があります。
弘法市は屋外で行われるため、各月に応じた服装をするように心がけましょう。
また暑い時期はできるだけ涼しい朝のうちに、寒い時期はお昼に出かけるのも暑さ寒さ対策には有効でしょう。
弘法市で掘り出しものを探すには、早朝がおすすめです。
本気で探す人たちは、まだ暗いうちから懐中電灯を使って探すといいます。
京都駅からもアクセス良好な東寺の弘法市ならではでしょう。
夜明けの時刻は、季節によって大きく変わります。
参考に毎月の日の出と日の入り時刻を紹介します。
日の出時刻 | 日の入り時刻 | |
1月21日 | 7:03 | 17:15 |
2月21日 | 6:37 | 17:46 |
3月21日 | 6:00 | 18:10 |
4月21日 | 5:18 | 18:35 |
5月21日 | 4:50 | 18:59 |
6月21日 | 4:43 | 19:15 |
7月21日 | 4:58 | 19:09 |
8月21日 | 5:21 | 18:39 |
9月21日 | 5:44 | 17:56 |
10月21日 | 6:08 | 17:16 |
11月21日 | 6:37 | 16:49 |
12月21日 | 7:01 | 16:50 |
6月21日は、一年で最も日の出から日没までの時間が長い夏至にあたります。
年によっては20日や22日が夏至のこともありますが、2055年まではずっと弘法市の行われる6月21日が夏至になります。
一方で冬至は12月21日か22日です。
直近では、2024年、28年、29年などが終い弘法の行われる12月21日が冬至となります。
早朝6時台の弘法市の様子
2022年5月21日に、早朝の朝6時台に弘法市を訪問しました。
まだまだコロナの影響は大きく、露店の数はかつての半分程度です。
朝6時台とはいえ、5月なのでもうすっかり明るくなっています。
早朝から既に開いている露店も多いです。
骨董品のお店に限ると、多くが既に営業を開始しています。
掘り出し物を求めて、早朝を狙って訪れている人も多くいます。
朝6時台とはいっても、7時近くになると京都市内の多くのエリアからは公共交通機関でアクセス可能です。
まだ設営中のお店も多くあります。
食材を扱うお店は、半分程度はまだ営業開始前です。
焼きそばやたこ焼きなどの露店も設営中だったり、仕込み中のお店が多いです。
しかし、朝6時台から既に販売を開始しているお店もあります。
弘法市で朝ごはんというのもいいですね。
早朝は、金堂の扉も閉まっています。
7時ごろに金堂が開扉され、本尊の薬師如来をお参りできるようになります。
東寺の「弘法市」と北野天満宮の「天神市」
京都では、東寺で毎月21日開催の弘法市と北野天満宮で毎月25日開催の天神市が二大縁日として知られます。
弘法市と同じように、12月25日の天神市は「終い天神(しまいてんじん)」、1月25日の天神市は「初天神」といわれます。
弘法市と同じく、天神市でも1月と12月は特別な縁日です。
「弘法さんが晴れやったら、天神さんは雨」という言葉がありますが、春や秋には移動性高気圧の影響で概ね天候が5日周期で変わるため、21日の弘法市が晴れだったら、25日の天神市は雨ということを表しています。
ただし、夏冬などは周期的に天気が変わるわけではないので、ことわざがあてはまらないことも多いです。
実際はどうなのか、2022年の12ヶ月を調査してみました。
いずれも、朝9時時点の天候です。
21日(弘法市) | 25日(天神市) | 判定 | 備考 | |
1月 | 雪 | 晴れ | 〇 | 弘法市は積雪14cm |
2月 | 晴れ | 晴れ | × | |
3月 | 曇り | 晴れ | △ | |
4月 | 曇り | 雨 | △ | |
5月 | 曇り | 曇り | - | |
6月 | 雨 | 曇り | △ | |
7月 | 曇り | 晴れ | △ | |
8月 | 曇り | 曇り | - | |
9月 | 曇り | 晴れ | △ | |
10月 | 晴れ | 晴れ | × | |
11月 | 曇り | 晴れ | △ | |
12月 | 曇り | 晴れ | △ |
サンプルは2022年のみですが、弘法市「晴れ」+天神市「雨」or弘法市「雨」+天神市「晴れ」の組み合わせは、1日だけでした。
終い弘法も終い天神も同じくらいの規模であり、多くの骨董品屋さんは両方に出店しています。1978年の調査では、弘法市の露店の実に7割が天神市にも出店すると回答しています。
しかし、しいて言うと、天神市の方がややフリーマーケットに近い雰囲気で比較的イマドキっぽい品も多く、若い人の割合も多いように感じます。
一方の弘法市は、比較的本格的な骨董品が多く並んでいます。比較的本気の商品が並ぶのが弘法市です。
お店だけでなく、弘法市と天神市の両方を訪れる人も多く、4日前に弘法市で見かけた人を天神市でも見かけるなんてこともあります。
1982年の調査2によると、弘法市への出店者の実に7割が天神市にも出店していると回答しています。
ところで、終い天神の12月25日はちょうどクリスマスですね。さすがに終い天神ではクリスマス感はあまりありませんが。
天神市は、約1,000のお店が出店しています。
約1,200店舗の東寺弘法市にはやや劣りますが、日本を代表する露店市のひとつであることは間違いありません。
毎週第一日曜日は東寺「がらくた市」
東寺の骨董市といえば、毎月21日の弘法市があまりにも有名ですが、もうひとつ毎月第1日曜日には「がらくた市」が開催されています。
売られているものはもちろんがらくたではなく骨董品です(なかには本当のがらくたもありますが)。
弘法市と比べると規模は小さく概ね4分の1程度の出店で、講堂の南側から西側にかけて露店が並びます。
開催時間は弘法市と同じく早朝の5時くらいからはじまり、夕方の16時くらいまでです。
弘法市と同様に実際の出店時間はお店によってまちまちです。
京都では弘法市や天神市のほかにも、毎月行われる骨董市があちこちにありますが、東寺のがらくた市の規模は弘法市と天神市の両雄に次ぐものです。
飲食店や食品なども並ぶ弘法市と比べると骨董品に特化しており、その分マニアックな商品が目立ちます。
お祭り要素の強い弘法市と比べると、本気の骨董市です。
ただ美術品的な骨董品よりは、生活雑貨としてのより身近な商品が多いのが特徴です。
宗教行事である御影供と深く結びついた弘法市とは異なる雰囲気です。
弘法市ほど混雑はしないため、ゆっくりと掘り出し物を探すには弘法市よりもおすすめかもしれません。
開催が毎月第1日曜日と固定されているため、週末が休みの人には行きやすいのもうれしいところです。
ぜひ弘法市だけでなく、がらくた市にも訪れてみてください。
MKタクシーの職員も出没
弘法市の行われる東寺は、MKタクシーの本社である油小路九条からわずか400mほどしか離れていません。
歩いて5分程度という近さです。
管理部門やコールセンターがあるMKタクシー本社の職員が、弘法市の露店で昼ごはんを調達することも。
1時間の昼休みでは、ゆっくり品物を見る時間はありませんが、食事をするだけなら十分です。
あちこちの露店で少しずついろんなものをついばみながら歩くと、おなかいっぱいになります。
おすすめは「厄除きんつば」です。
コロナ禍ではしばらく出店が途絶えていましたが、2022年10月には復活していました。
東寺といえば、「ユネスコ 世界の記憶」にも登録された東寺百合文書(ひゃくごうもんじょ)で知られます。
中世を中心とした約千年間の25,000通にも及ぶ古文書群です。
興味がある方は、ぜひ京都府立京都学・歴彩館のサイトをご覧ください。
おわりに
京都では、毎月21日開催の東寺・弘法市のほかにも、毎月25日開催の北野天満宮・天神市を筆頭に定期的に開かれる蚤の市やフリーマーケットはたくさんあります。
いつもは人が少ないところに人が集まっているな、と思ってのぞいてみたらフリーマーケット中ということもよくあります。
最も品揃えが良いのは弘法市と天神市ですが、それぞれの定期市では、弘法市とはまた違ったそれぞれの特徴があります。
弘法市と天神市以外では、プロだけでなく一般の人の出店も多数あり、より敷居は低く感じるでしょう。
ぜひ、京都にあるいろんな蚤の市やフリーマーケットを巡って、お気に入りを見つけてさい!
誰でも出店可能なところもありますよ!
そして、蚤の市やフリーマーケットでうっかりたくさん買い過ぎてしまったときは、ぜひMKタクシーをご利用ください。
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