自給自足の山里から【124】「ウソをつかないで」|MK新聞連載記事

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自給自足の山里から【124】「ウソをつかないで」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、縄文百姓の大森昌也さんらによる「自給自足の山里から」を、1998年12月16日~2016年6月1日まで連載しました。
MK新聞2009年4月16日号の掲載記事です。

大森昌也・あいさんの執筆です。

ウソをつかないで

「罰当り」の神々の声

農場の中、黄色のフキのとうがあっちこっちに微笑みをふりまく。誘われて鹿猪ら。網とトタンと電気柵で防ぐ。山菜採りの人「ここらよう採れたが、近頃ダメや」とうらやましそう。「少しくらいいいだろう」と入るものもいる。
村のかつての見事な棚田は、国策で都市へ去った人が杉松を植え、その後手入れされず、黒い森と化け、山菜たち死に、エサ場を失ったケモノたちは我が農場を人と共に狙う。
家の側の黒い巨木たちが、今、私たちを襲わんばかりである。台風で近くの村では植林が崩れ家を倒し、人死ぬ。国は都市をつくるため、日本の源山村を棄て、お年寄りを殺す。「罰当り」の神々の声が聞こえてくる。
私は、自然とお年寄りに助けられてこの四半世紀、山村に、六人の子たちと夢中に生きてきて「よみがえる限界集落」(朝日新聞、2006年12月31日号)と伝えられる。しかし、たたかいは始まったばかりである。

「お母さん、ここに住もうよ!」

やっと、黒い森の一部を伐採。二十枚余りの棚田跡が露われ、四十から五十年前の風景に思いを馳せる。まわりは明るくなり、小鳥の声がよく聞こえ、生き残った数本の梅が花咲く、不耕起の田に太陽光が射し、おたまじゃくし元気。白い花、黒いおたまじゃくし、「メェ~メェ~、ブーブー、コッココッコ」と幼いつくし(5歳)、すぎな(2歳)、みのり(2歳)が来訪の和君(小6)、マリ(小3)ちゃんらと“天使”の笑顔である。
小学生は、春休み、母親と東京からやってきた。コケッコッコーに起され、鶏(トリ)豚(ブタ)山羊(ヤギ)の餌やりし、ちえ(22歳)の石窯で炊いた天然酵母パンで朝食し、鍬(くわ)鎌(かま)での畑で泥まみれ、母親の捌(さば)いた鶏肉で夕食し、五右エ門風呂に浴し寝る日々。「お母さん、ここに住もうよ」と言う和君に笑顔でのとまどいの母親が印象的。

異常気象そして西郷・ゲバラ・カストロ

半袖姿だったのに、下旬には雪が降ってブルブル。「以上やねェ。自然も政治も。どうも人間(ひと)としての道徳がないなぁ」と近在の商店主は嘆く。思えば、私らは、身近に自然あり、年寄りからの「生きものを無闇(むやみ)に殺すな。感謝の気持ちを忘れるな」「ウソをつくと、閻魔(エンマ)さんに舌抜かれるぞ」と言われて育った。明治革命の立役者西郷隆盛は「命も名も官位も金もいらない人ならでは国家の大儀は成し得ない」と誠実。西郷ドンと親しまれる。
キューバのカストロはゲバラの遺骨が三十二年ぶりに帰ってきたとき「同士ゲバラは、道徳の巨人だった」と、又、作家の戸井十月が「あなたの人生にとって一番大切なものは何ですか」と問うと短く「誠実」と答えたという。

そんな折、「あの市民派・川田龍平参議院議員がこの頃少し変だ─そんな声が支援者から漏れてきた。母悦子さんとも絶縁状態だという」「HIV訴訟の同士とも音信不通」「困惑せざるを得ない振る舞い─チベット問題での発言の拒否、事務局会議らの中止、欠席など。」(週刊朝日2008年8月29日号)「妻の旅券を『公務』と申請」(朝日新聞2008年9月24日号)と伝わってくる。
また、事実を問われると、「方向性のちがい」とか、「事務局が旅券の発行やった」などウソの弁明。誠実さがない。
あ~す農場を仕切り、十代の暁に、キューバを訪れたちえ・あい・れいの三人娘の嘆き怒りは大きい。以下は、あいの“声”である。

川田龍平さんウソつかないで

この社会が人を殺している。こんな国を変えようと「動けば変わる」と声を出した人がいた。川田龍平さんだ。私は心の底からこの人なら信じられると応援し、まわりの人たち沢山声をかけた。そして、当選した。
だけど、いま、議員の仕事も、この国を変えようともせず、私たちの税金で遊んでいる。なんで?こんな裏切りははじめて。辛くって!?「もうこんなことは止めて下さい」と手紙を書いた。
電話がかかってきて“話”した。「頑張っていることが伝わってないことが残念です。」をくり返す。一瞬、誰の声を信じればいいのか分からなくなった。辛くって涙がこぼれそう。
龍平さんのすぐ側に居た人が声を出してくれ、その人の言葉にはウソはなかったから、彼からはウソしかこぼれてこなかった。すぐ近くに居た人に会って下さいと伝えたけど、「今は会えません」と言うばかり。この人をまわりの人が持ち上げ、甘やかした面もあるけれど。
私たちを裏切り、ウソをついている。このままだまって何もしない方がひどいと私は感じる。信じきって、応援して、裏切られた今ただ「もうやめて下さい」としかいえない。ほんとうに、この国を変える人なら、また、立ち上がってくれる。

19歳の川田龍平が「あやまってよ!」と声をあげ、この社会、国とたたかったのは「正義」でもなんでもなく、生きるための、生命(いのち)をかけてのはず。声を出さなくてはいけない。ねェ、私たちの叫びは、いったい、いつまでつづくのだろう。
この社会は学校に行かなければ「不登校」「ひきこもり」と決めつけて、子どもから自由を奪った。私のまわりに、“土と生きる”と田んぼ耕す若い人たちがいる。「百姓をこれからやる」と声を出せば、まわりの人たちに笑われたと聞いた。私もそうだ!よくバカにされた。辛くとも自分が楽しいと思うことに耳を傾けて、一生懸命がんばっている人だ。もっと大人は子どもの声に耳を傾けないといけない。世界のイタミ、今起きていることに耳傾けてみてよ。北極の氷が溶けても、それでも歩んでいる白クマのこと感じなくちゃ。

大森あい(19歳)「過ちを改るに、自ら過ったとさえ思い付かば、それにて善し、其事(そのこと)を棄て顧(かえり)みず、直ちに一歩踏み出すべし。取繕(とりつくろ)わんと心配するは、茶碗を割り、欠けを集め合わせ見せるも同にて詮もなきこと也。」(西郷隆盛)

 

あ~す農場

〒669-5238

兵庫県朝来市和田山町朝日767

 

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MK新聞への「あ~す農場」の連載記事

1998年12月16日号~2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)

2017年1月1日号~2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」(72回連載)

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