山の一家*葉根舎「葉根たより」【54】|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家*葉根舎(はねや)の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2021年6月1日号の掲載記事です。
大森梨沙子さんの執筆です。
葉根たより
鳥虫獣草木花、立夏を迎え、いのちの勢い増してゆく季節。新緑は、なぜこんなにも軽やかで透明感があるのでしょう。
この生まれたばかりの葉たちが、これから濃く濃く深まってゆく。不思議でたまらないこの想いを包みながら、日々見つめていたいです。
「竹笋生(たけのこしょうず)」「蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)」
竹の種類によって筍が出てくる時期は異なります。今頃出る筍は、細い真竹になります。そして、蚕が起きて桑の葉を盛んに食べだす頃。
蚕は桑の葉だけを食べて、あんなにも美しい絹を紡ぎ出します。だから、桑の葉には力がいっぱい。
私はお団子や焼き菓子、天ぷら、スープに入れたり、お茶にしたりして頂きます。草木や虫、鳥たちの唄にとても賑やかな毎日です。
<野山からのめぐみ>
八十八夜、茶摘みですね。
昔住んでいた方々が植えてくれたのでしょう。家の周りには、お茶の木が何本もあります。
昨年から茶道と中国茶に触れることが増えたため、茶摘みもますます興味深くなりました。
何十年も手付かずのお茶の木もあり、少しずつ手入れをしていると、静かに生き続けてくれていたことに感謝でいっぱいになります。
田んぼでは、苗代の種籾から小さな芽が出始めました。
山を下るともう田植えが終わっていますが、わが家はゆっくりまだまだこれからです。
畔切り、荒起こし、水を入れて練ったら畦塗り…夫のげんは最も腰に負担のかかる時期。
秋に作ったノブドウエキスを塗りながら、腰痛と付き合っています。
秋に田の柵周りに実を結ぶノブドウは、腰痛、関節痛、肩こりに効くので、日々の仕事に欠かせない手当て用品の一つです。
畑では小麦が風に揺れています。ウサギにかじられては再生、を繰り返したため背の高さがバラバラですがなんとか育ってくれています。
この小麦は毎年、農薬や化学肥料を使っていない小麦や蕎麦、厳選された材料に限定し、製粉、製麺してくれるとても希少な製麺所にて乾麺にしていただいています。
白く精白せず、黒っぽい乾麺にしてくれるので、小麦の味わいがしっかりして味わい深く、うどんとしてもパスタとしても楽しめます。
野菜はまだ少ない時期。朝晩は冷え込む山の気候、ビニールハウスは雪に弱いこと、ゴミになることで取り入れていません。
新じゃがの収穫は6月下旬頃、待ち遠しいです。
夏野菜の苗は大きくなってきました。今月中には畑に定植、そうすると畑が賑やかになります。
保存しておいた切り干し大根や干したけのこ、ぜんまいなどの乾物や野草を利用しながら野菜の収穫が増える時期を待っています。
<花と蜜と蜂>
蜜を吹いている花をよく見ると、わが家の蜂たちが一生懸命にお仕事をしています。
先日、山桜の蜜を絞りました。今は山藤の蜜を運んでいる蜂たち、箱の中に少しずつ溜まってきています。
山桜と山藤の蜂蜜は、香りも味わいもとても華やかで優しい香水のようです。
毎年、気候によって採れる蜂蜜は変わります。
蜜をふく年、ふかない年、ふいても雨のため蜂が飛べずに蜜を集められなくなったり、花の満開時にちょうど温度が上がり、蜜の量が増えたり…その時々の自然に任せて見守るのみ。
期待も不安も持たず、日々できることを大切にしています。
<からだのーと>
6月21日は、太陽のエネルギーが最も高くなる夏至。小食、プチ断食をすると太陽エネルギーの充電になります。
夏至の前後二十日は梅雨期になるので、防腐、殺菌効果のある梅干しや梅酢を活用しましょう。
湿度の高い時期なので、乾物類を頂くと身体の水分調整もしてくれます。
うちでは野菜がまだ少ないこと、保存しておいたものが湿度で傷まないようにと、自然と乾物類を頂くことが増えるので、自然と共にあるめぐりの素晴らしさを毎年痛感します。
日々変化する光と水、気持ちよく流れてゆきますように。
(2021年5月10日記)
■葉根舎
haneya8011@gmail.com
HP:https://www.yamano-haneya.com
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