山の一家*葉根舎「葉根たより」【8】|MK新聞連載記事

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山の一家*葉根舎「葉根たより」【8】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家*葉根舎(はねや)の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2017年8月1日号の掲載記事です。

大森梨沙子さんの執筆です。

葉根たより

カナカナカナ、チュンチュン、リーリー、鳥や虫、獣たちが元気いっぱいな季節。
草木や竹もぐんぐん伸び、花の勢いは少し落ち着いて、どくだみやつゆくさ、ホタルフクロが濃い緑に白や青の色をそっとさわやかに添えています。
「半夏生」「蓮始華」半夏が生え、蓮も咲き始める頃。
やっと降り始めた雨の恵みもいただいてにぎやかに満ちていますが、近年は降りだすと極端な雨に複雑な思いも混じります。

そして、「小暑」「大暑」と暑さも極まる七月。夏季は心臓や小腸に負担のかる時期。
焼肉など動物性食品を焦がしたもの、コーヒー、ビールなど苦みのある嗜好品はひかえめに・ゴーヤ、ピーマン、野草、三年番茶、ニンジン、トマト、梅干しなど苦みのある野菜、飲み物、赤い食品をいただきましょう。
特に七月十九日~八月六日までの夏土用は食中毒が増えるので、動物性食品の食べすぎに気をつけて、どうしてもいただきたいときは、必ず消化がよくなるように大根おろしを添えて。
暑い季節ですが、冷たいもの、水分をとりすぎないよう季節の野菜(水分が飲料より吸収されやすい)、梅干しや梅酢をいただいて、夏バテせず、たっぷり輝くお日さまの力を味わい、夏を満喫したいですね。

<山の田植え>

うちの六反の田んぼは山の中に十五枚。
それぞれ様々な大きさ、形をしていて愛らしいけれど、山の下の広い田んぼに比べると仕事量が大きく違います。
たくさんの畔塗、曲がった形のため植えにくいところがあったり。
四年前までは全て手で植えていましたが、放棄田を増やさないため、思い切って手押しで二列づつ植える一番小さな機械を使うことにしました。
小さくても機械は機械。寂しいほど一人で田植えができてしまいますが、所々苗が植わっていない場所や、はじっこの機械が入らないところなどは手植えになります。
いつもは私がするのですが、今年は個展の準備に夢中になっていたので、子供たちがしっかり私に代わって夫のげんを支えてくれました。
家周りの草刈りも草たちに「もうちょっと待ってね」とお願いして後回しにしていたら、子供たちが少し刈ってくれたり。すっかり頼もしくなりました。
なんとか田植えが終わると、毎年ほっとしますが、田の準備で遅れた畑が待ち構えています。

<獣と畑>

ぐんぐん伸びる夏野菜の苗たち。特にトマトは一雨ごとに驚くほど伸びていきます。
暑くなると自然に夏野菜が欲しくなりますね。
毎年種採りをして、土地に合う種をつないで蒔く野菜たち、標高が高いのでうちの夏野菜の収穫はもう少し、待ち遠しいです。
田植えが終わると畑の野菜の手入れ、大豆の種まき、移植、草刈りと、ほっとするのもつかの間です。
その上、ちょっとした隙から鹿が入ったり、昨年から増えた兎に大豆の苗を食べられてしまったり。
人間は少ないけれど、本当に山はにぎやかです(笑)。

<菌が生きている生はちみつ>

田畑の合間に蜂にお世話をするげん。今年は蜜がよく入りました。
香り美し山桜、さわやかな栃、濃厚で鉄分豊富な栗。
それぞれに個性があって、山の深い味わいがします。
発酵しないように加熱をして水分を飛ばす方法が主流のようですが、はちみつは過熱をすると菌が死んでしいます。
うちでは蜂たちが羽でパタパタと水分を飛ばしてから収穫をするので、生はちみつなのです。
でも、蜂たちが一生懸命に集めた蜜を奪っているようなもの。
だからこそ、最高の状態でみんなにお分けして、大切にいただきたいと思っています。
毎日が山や大地、天からの恵みのあふれる暮らし。
夏はそのいのちの活動を、肌いっぱいに感じられる季節です。
大地から生まれたいのちをいただき、元気に美しさに満ちた夏を皆さまが過ごせるよう、お祈りしています。

(20017年7月11日記)

■葉根舎

haneya8011@gmail.com
HP:https://www.yamano-haneya.com

 

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「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
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MK新聞への「あ~す農場」の連載記事

1998年12月16日号~2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)

2017年1月1日号~2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」(72回連載)

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