山の一家*葉根舎「葉根たより」【50】|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家*葉根舎(はねや)の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2021年2月1日号の掲載記事です。
大森梨沙子さんの執筆です。
葉根たより
静寂の月白の世界、清らかで美しく厳しく、触れるととても冷たいけれど、なぜか温かな気持ちになります。
「東風解凍(はるかぜこおりをとく)」「土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)」。
春の風が川や湖の氷を解かし始め、雪がしっとりとした春の雨にかわり、大地が潤い始める頃。
立春を迎え、厳しい寒さもやっと和らぎ始め、心も少し柔らかくなるような気がしますね。よき春がやってきますように…。
<雪かき>
この数年の暖冬に油断し、のんびりしていた冬支度の途中で思わぬ大雪。
田畑、家周りの草刈り、脱穀途中の大豆たち、白菜の藁縛り、雪に折れやすいネギの収穫など。
山の暮らしでは、やはり師走までに仕舞わなければならないことを痛感しました。
師走中旬から降り続け、家周り、村のお年寄りのため、夫の実家あ~す農場、パン小屋など雪かきする範囲の広いこと。
屋根もたくさん積もったので、雪下ろし、下ろした雪をまた雪かき。
けれど私は、雪かき大好きな子どもたちのおかげで、雪かき知らずです。特に長男つくしは、起きたらすぐに雪かき。眠る前にもひとかきする時があるほど。
その分お腹をしっかり空かせる子どもたちに、私はせっせとご飯におやつ作り。元気に食べてくれる子どもたちの姿に、秋の実りのお米、カボチャ、里芋、ヤーコン、大根、人参、白菜たちに感謝の気持ちでいっぱいになります。
<敬う心>
雪道の運転だけはこわいけれど、銀世界の美しさは何者にも変え難く、大変な思いもひらりと飛び越えてしまう「美しい」といことの力を改めて感じます。
古の人々がもっと厳しい自然環境の中、その土地を大切に生きてきたことを想うと、やはり自然の美しさに支えられていたのではないかと感じます。その美しさに神や聖霊を感じ敬ってきたこと。
私たちもより大地とつながり、自然の美しさと厳しさに学びながらよりよきものを生み出していきたいと思います。
<雪と子ども>
雪が大好きな子どもたち。最も寒い時期に最も外遊びに興じる。まさに子どもは風の子ですね。
長男つくしはもう高校生になり、一番寒がりなのに一番雪が好き。
幼き頃はあんまり雪を食べるので、いつも心配になっていました。どうやら今も雪かきをしながら、喉が渇くと雪を食べているとか。
一休みする時には、一晩外に置いて凍らせておいた天然冷凍みかんを嬉しそうに頬張ります。
雪かきがひと段落すると、雪遊び。滑りやすく雪かきしたところをソリで滑ったり、三人で雪まみれになりながら鎌倉や雪だるまを作ったり。雪だるまの胸にはみかんのボタン。また冷凍みかんですね。
大きくなり、屋根の雪下ろしなどできることが増えつつも、遊び心も忘れず元気な姿に満ちたりた冬となりました。
<からだのーと>
今年の節分は百二十四年ぶりに二月三日ではなく、二月二日となっています。
二十四節気の終わりに一年の邪気を祓う日。この日を目安に物事を整理したり、心身をリセットすると季節と身体のリズムが合ってきます。
節分の翌日はいよいよ「立春」です。太陽のエネルギーが強まり、春の気配もほのかにしてくる頃。
旧暦では、立春の次の雨水の前の新月が元旦とされているので、今年は二月十二日。旧暦の七草の節句に七草粥(今年は二月十八日)、小正月に小豆粥(今年は二月二十六日)も大切にしたいですね。
清らかで健やかな一年となりますように。
(2021年1月10日記)
■葉根舎
haneya8011@gmail.com
HP:https://www.yamano-haneya.com
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