自給自足の山里から【185】「暗い都会と明るい山村」|MK新聞連載記事

よみもの
自給自足の山里から【185】「暗い都会と明るい山村」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、縄文百姓の大森昌也さんらによる「自給自足の山里から」を、1998年12月16日~2016年6月1日まで連載しました。
MK新聞2014年7月1日号の掲載記事です。

大森昌也さんの執筆です。

暗い都会と明るい山村

「おい! 元気か!」に、コケッコッコー

6月、初夏、日に日に緑が濃くなっていく勢いにおされ、鎌と鍬(くわ)持って、「百姓体験居候」の若者と、トリ小屋・田んぼ・畑に向かう。
「おい! ゴン(オンドリ)! 元気か!」と声をかけると、「コケッコッコー」。(笑)
ゴンが、メンドリたちをイタチ・テンなどから守る。ケモノならぬ若者に、トサカを立て、爪をかます。「痛ぁ!」と悲鳴。これも修業である。
エサやりし、卵をいただきうれしげの若者は、悪意が全くないのにびっくり。
トリたちは、広い果樹園に放ち、大地のミミズなどつまみ、ストレスがない。「このうんち、ころっとしてきれいやろ」とつまんでみせる。
田んぼでは、足元から、カエルたちが飛び跳ね、“ゲロゲロ”と迎えてくれ、「おい! どうした?」と声をかけると、おたまじゃくしがオタオタしている。田の水の入りがよくない。川からの竹のトイに土砂。除く。
田のヒエ・セリなどの草取りに、へたりこんでいる若者。私も30年前、草取りしていて、お年寄りから「こりゃ! カラスに小便ひっかけられるぞ!」お、へたりこみ姿をからかわれたもの。
草を取ると、「おたまじゃくしがよろこんでいる」と喜ぶ若者。おたまじゃくしが、微生物求め動き、うんちし、雑草の発芽を抑え、田んぼはトロトロ層になる。
畑では、夏野菜のトマト・ナス・キュウリ・ピーマン・スイカなどに、キャベツ・大根・ほうれん草などが、草々と共に成り生く。「ちっと助けてやらんと」と、雑草取り。
「あっ! それは、おかのり・しそ・みつば・山イモ・ニラだ!」と注意。自然に種落ちて成育。雑草と見間違う不耕起畑である。
若者は、「昌也さん(若者は、私のことをこう呼ぶ)は、いつも、生き物に語りかけ、話しているんですね。話できるんですか」とちっと驚きの様子で尋ねる。
そりゃもう30年、賃稼ぎのサラリーマン労働に行かんと、身のまわりの生き物と付き合い・助けられて生きてきたからなあ。

ああ! 疲れる都市・都会

20代の若い頃、大阪・梅田、職場も住まいもあり、今ほどでないにしても、コンクリートジャングル・ビル・ネオン・自動車の流れ、きらびやかな人たちのうごめきの中を、日常的に泳いで、たのしむ。しかし、後輩の探検部の者が、1年間アフリカで生活し帰国したとき、梅田の地下街が怖くて歩けない。森にこもる。
私は、今、彼の心境がよくわかる。
最近、母や先輩たちの死が続き、都会に出ることが多い。死と共に、本当に疲れる。
都会で目にするのは、若者はじめ、多くの人が、キカイ(ケイタイ?)と話をしている。目の前の人と話すことなく。電車に乗っていて、隣の若者が、イヤホーン通して、ニヤニヤ。気色悪く、どっと疲れる。
日々、時々、生きとし生きるものとの“対話”のない世界。死せる労働ならぬ死せる機械に翻弄され、機心にとらわれ、堕落の世。一見、明るくはなやかな世界に惑わされての深い灰色の暗く黒い世界が、都市・都会。

前半は黒く、後半は黄色いうんち

若者が言う。「来て3日目に、便所に行こうと思ったら、昌也さんが入っていて、野ぐそした。そのうんち見て、びっくり。前半部分は黒くて、後半は黄色と見事に分かれていた」と…。
鮮やかに、黒と黄色に分かれたうんち。
前半の黒色は都会であり、後半の鮮やかな黄色は我が山村のあ~す農場、縄文百姓である。
昔、下肥うんちを、各家を回って集め肥料にした百姓が、その家の病気を医者より知っていた。
慢性の下痢・便秘は、病気の温床であり、くさく黒いのは、病気の前触れ、鼻の曲がるようなのは、ほとんど病気という。
黒いうんちは、病気の前触れで、崩壊前夜のこの社会・都市の症状を示す象徴である。
そして、すぱっと鮮やかな黄色のうんちは、故甲田光雄さん(世直し断食博士)の言う「崩壊前夜のこの社会を立て直すのは、百姓と縄文である」。まさしく、あ~す農場・縄文百姓を明示している。
うんち、されどうんちである。

ツバメ帰ってきて、「絶滅種」の田植え

「あっ! ツバメが帰ってきた!」と、2年4ヵ月に及ぶ陶芸修業から帰り、家の前で窯を築き、陶芸百姓家を目指すちえ(28歳)。玄関の古巣に、20年ぶりに、出入りするツバメに感動。
50年前には12軒100人近いこの村が、我らが移住した27年前には、4軒7人。それが、バタバタと3件が離村(老いたり、死んで)し、残る1軒も90歳のおばあさんひとり。国の施策で、田畑に杉が植えられ、やがて、村は黒い暗い森と化し、死に体になり、ちえが1歳の時には、ツバメが盛んに出入りしたのが7年ほどして、パタッと消えた。
私は5年前から家まわりの大きくなった杉たちを切っていった。まわりは明るくなり、少しずつ生きとし生きるものたちが、よみがえる。
先年には、ホタルが舞い、そして今夏のツバメである。
ホタル舞い、ツバメスイスイの我が不耕起田んぼを、今や「絶滅種」の手植えの田植えを、都会からの友や子、孫たちと今日も行う。

 

あ~す農場

兵庫県朝来市和田山町朝日767

 

MK新聞について

「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
MK観光ドライバーによる京都の観光情報、旬の映画や隠れた名店のご紹介、 楽しい読み物から教養になる連載の数々、運輸行政に対するMKの主張などが凝縮されています。
40年以上も発行を続けるMK新聞を、皆さま、どうぞよろしくお願いします。

ホームページからも最新号、バックナンバーを閲覧可能です。

MK新聞への「あ~す農場」の連載記事

1998年12月16日号~2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)

2017年1月1日号~2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」(72回連載)

この記事が気に入ったらSNSでシェアしよう!

関連記事

まだ知らない京都に出会う、
特別な旅行体験をラインナップ

MKタクシーでは様々な京都旅コンテンツを
ご用意しています。