山の一家*葉根舎「葉根たより」【19】|MK新聞連載記事

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山の一家*葉根舎「葉根たより」【19】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家*葉根舎(はねや)の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2018年7月1日号の掲載記事です。

大森梨沙子さんの執筆です。

葉根たより

テッペンカケタカ… 初夏の山、満開の卯の花とホトトギス、田植えにホタル、まさに「夏は来ぬ」の世界。
初夏を見事に表現した詩、ホトトギスの鳴き声の表現、先人の自然観察眼には感心してしまいます。
テレビもラジオもなかった時代、自然の変化こそが楽しみだったのでしょう。
そんな時代の視線に思いを馳せ、自然を見つめる毎日です。
暦では、「蟷螂生(かまきりしょうず)」「腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる)」「梅子黄(うめのみきばむ)」
蟷螂、蛍現れ、梅の実が色づく頃。
梅雨期は防腐、殺菌効果のある梅干し、梅酢を料理に活用し、利尿効果のあるつゆ草でむくみ対策、切り干し大根や高野豆腐、寒天、わかめなどの乾物も効果的です。
梅雨を過ぎると、保存している乾物などが痛んでくること、春から梅雨まではお野菜が少ないことで、うちではこの頃にほぼ食べきります。
自然のサイクルがよくできていること、食を通して日々痛感します。
梅雨期は夏至の前後二十日頃。雨が降らずとも、大気は変化しています。
梅雨入りの発表や雨など目に見えるものに頼らずに変化を感じとり、季節にそった身体作りをしていきたいです。
今年は六月二十一日が夏至。
太陽エネルギーのもっとも高まる日、プチ断食すると太陽エネルギーの充電になります。
大いなる節目。身の回りも身体も整えて、素敵な夏至を迎えられますように。

<修学旅行>

六月は長男、次男の修学旅行がありました。
長男つくしは東京へ。様々な所へ二泊三日まわってきて、劇団四季のミュージカルが面白かったそうですが、東京はうるさいから山の方がいいと。
ジェットコースターもお化け屋敷も苦手で、みんなが楽しみなディズニーランドにも興味がないマイペースなつくし。
協調性がなさすぎて心配した時もありましたが、修学旅行に行ってもちっとも疲れずに帰ってきて、翌日から二日間田植えをしてくれるほど逞しくなり、今はつくしのマイペースさが面白くてしたかありません。
心配するよりも、信じること、つくしから教えてもらいました。

次男すぎなは大阪・奈良・京都へ一泊二日の修学旅行。
よく気が利いて、繊細な子だから疲れて帰ってくるかな、と思いましたが、友達と仲良く楽しみ元気に帰ってきました。
私へのお土産は、髪飾りとネックレス。二人とも優しく、逞しく成長してくれています。

<初夏の田畑>

夫のげんが大変な工程を重ね、やっとの田植え。
自家採取を続けているイセヒカリと餅米を六反、十五枚の棚田に植えています。
げんが日々田と向き合い、日照時間が長くはない、冷たい山水の田でもよく育つように試行錯誤を重ね、無農薬無肥料でもたくさん実るようになりました。
鍬で丁寧に畔塗し、二、三本の苗をゆったり植え、きれいな山水が田の中で澱まずに流れ続ける美しい田。
大粒で、冷めてもおいしいと、大好評です。

今年も子供たちがしっかり戦力になってくれたおかげで、終えられた田植え。
田んぼだけではありません。二百三十本の里芋の植え付けでも大活躍です。
植え付けや収穫はこの数年毎年手伝ってもらっているので、自分から動けるようになり、子供たちそれぞれの性格に合わせた仕事を割りふるようにしているので、力を合わせながらマイペースに楽しんでくれています。

田植えを終えたら、ジャガイモの収穫、麦刈り、大豆の種まき、合間に薪割も。
やることがいくらでもある毎日ですが、焦らず、楽しみながらこつこつしっかり、を大切にしています。

<初夏のはちみつ>

桜に始まり、すべて一足早めに巡っている今年。
でも、うちの蜂が増える速度は今年ゆっくりめで、花の蜜がふくのに追いつけず、六月に入ってやっと栃や柿などが混ざった初夏の花々のはちみつが採れました。
初夏にふさわしいさわやかな味わい。熊がやってきて、蜂箱をひっくり返されたりもしましたが、おいしい蜂蜜を頂けて、蜂たちに感謝です。
こうして山の変化を感じながら暮らしていると、どんな季節もかけがえのないものになってきます。
梅雨も大好きになりました。大気にあふれる水分が瑞々しく、梅雨が織りなす独特の風景が愛おしいです。
美しい梅雨、素敵な夏至を皆さまが過ごせますように。

(2018年6月10日記)

■葉根舎

haneya8011@gmail.com
HP:https://www.yamano-haneya.com

 

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MK新聞への「あ~す農場」の連載記事

1998年12月16日号~2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)

2017年1月1日号~2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」(72回連載)

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