山の一家*葉根舎「葉根たより」【2】|MK新聞連載記事

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山の一家*葉根舎「葉根たより」【2】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家*葉根舎(はねや)の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2017年2月1日号の掲載記事です。

大森梨沙子さんの執筆です。

葉根たより

シンシンと、冷え込む夜に降り積もる雪。
朝、外に出ると木々の枝先まで凍てつき、真っ白な音のない世界が広がっている・・・
こんな世界が朝日の真冬の景色でしたが、昨年に続き今年もあたたかい冬になっていて、鳥の声が聴こえることがあるほどです。
12月に2回雪が積もったものの、すぐに溶けて地面が乾いてくると、まるで春の始まりのよう。
気温が違うだけで山の香りも違ってきます。

〈葉根舎の年越し〉

お正月もあたたかく、まるで生まれ育った関東にいるようでした。
来年はよい年を迎えられるよう、草刈り、豆や野菜の保存、杵つきもちの発送などをしながら大そうじ。
そして、念願だった村のお地蔵様へよだれかけ作り。
私が朝日へ来て15年、かけているところを見ることがなかったので、ずっと気になっていました。
過疎の朝日が元気になることを祈りつつ、10人のお地蔵さまへかけると、少しあたたかくなったように感じうれしくなりました。
夫のげんは、秋に取っておいた藁でしめ縄作り。
神棚や玄関、かまどなどへ飾りました。子どもたちは、張り切って窓拭き!大仕事が減って助かりました。

大晦日はおせち作り!といっても、家にある野菜で作るじみなものですが、普段が質素なので、子どもたちは大喜びで平らげてくれます。
今年はごぼうの田作り、かぼちゃの伊達巻に挑戦!ごぼうはすあげにし、みりんと醤油をからめて田作り風に。伊達巻はかぼちゃと小麦粉でホットケーキのように焼き、くるっと巻きます。
かぼちゃの甘みでお砂糖いらずです。
あとは、昆布巻、お煮しめ、黒豆、紅白なます、さつまいもの金団。すべてお砂糖不使用、みりんと野菜本来の甘みを引き出して作ります。
お重にきれいに詰めて、庭の南天を飾ると、私たちには十分なご馳走です。
暖かい冬のおかげで、野菜たちもひとまわり大きくなり、豊かな冬です。

元旦は神様がいらっしゃるかしら、なんて思いながら家でゆっくり・・・と思いつつ、せっかく雪がないのでごぞごぞと仕事をしてしまいました。
そして、2日は初詣。こちらの神社は屋台のない静かなもの。
山の風を感じられていいものです。

こうして雪がないととても楽に感じますが、山にどんな影響があるのか、美しい銀世界を体感しないと身が引き締まらない気もしたり。
小さな私たちは、このときにできることを精一杯行い、味わうのみです。

〈冬休みの子どもたち〉

うちの仲良し3兄弟(12・9・6歳)。村には他に子どもがいないので、遊び相手には兄弟のみで少し寂しいですが、その分仲がとてもいいです。
サンタさんにもらった自転車で遊んだり(3人ともサンタさんを信じていて、お月さまに向かってお願いしています)、TVゲームはないので、カードゲームをしたり。
ちょっとダラダラしてきたな、と思ったら薪運びなどで身体を動かせると、お手伝いも遊び感覚でイキイキしてきます。
げんは人手がいる外仕事を、私は風呂を炊き、洗濯物などをよく頼むのですが、よくやってくれています。
わが子のことは、つい心配になりがちだけれど、子どもが持つ力を信じるようにしています。

〈うまれてゆくもの〉

片づけが済むと、げんは大工仕事、私は絵の制作に没頭できるのが冬の暮らし。
みそ作りやパン焼きもしますが、農閑期らしさが色濃いです。
げんは、自分の木工部屋作り。
その次は、私がお願いしているギャラリースペースを作ってもらう予定!鶏を飼っていた小さな小屋を直して作ってもらいます。

私は、4月に銀座のSteps Galleyにて小品展へ出品、7月に大阪のギャラリーで個展を予定しているので、そこへ向けて山の風をどんな風に展開していこうか、と描いています。
最近、とりためておいた天日干し野草をまとめて野草茶にしました。
野草を押し切り器で切っている時、かまどで炒る時に、身体を浄化するようなとてもいい香りがします。
飲むともちろん効能がありますが、作っている過程でもいいものをいただいているように感じます。
冬は草花が少ないけれど、こんなところから草と絵のイメージをふくらませたりもしています。
種類別に瓶詰めすると、18種類ありました。
今年はこのコレクションをもっと増やしていきます。気分や体調に合わせてブレンドすると、気持ちいいですよ。

この原稿を書く今はまだお正月明けですが、新聞が出る頃は立春ですね。
二十四節気の終わりが節分、翌日の立春ははじまりの日。
こういった節目に物事を整理したり、心をリセットすると、季節のリズムに身体のリズムが合ってきます。
季節とともにある身体作り、いかがでしょうか。
あ、ついに雪が降ってきました***

■葉根舎

haneya8011@gmail.com
HP:https://www.yamano-haneya.com

 

MK新聞について

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MK新聞への「あ~す農場」の連載記事

1998年12月16日号~2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)

2017年1月1日号~2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」(72回連載)

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