フットハットがゆく【252】「巡る」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく【252】「巡る」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2014年11月1日号の掲載記事です。

 

巡る

ひと月ちょっと前から、事務所の横に置いておいた僕の紫色の自転車が無くなりまして、1万円くらいのママチャリなんですが、駐車場へ行くときや近くへ買い物に行くときに使うくらいでしたが、いざ無くなると不便で、もともとは不便を解消するために買ったものだから、あると便利、ないと不便。

さて、過去にもこの紫の自転車は何度か事務所横から消えたことがありまして、そのつど「あぁ盗まれた…」と落ち込むのですが、犯人は毎度、僕でありました。
例えば近くの電気屋まで自転車で行って、帰りにコンビニに寄り…コンビニから事務所は信号を挟んで道の向かいですから、自転車を置き忘れて歩いて事務所に帰ってしまう。
何日かして、また自転車を使おうと思ったら、事務所横にないわけで、「あぁ盗まれた」と思い、「何で人の物を簡単に盗むか?」と盗んだ人を恨み、でもようよう記憶をたどると、もしかしてコンビニかも、と思って行ってみたらそこにあって、「あぁ僕は馬鹿だ」、自分の馬鹿さ加減を棚に上げて、いもしない盗人を恨んでいたとは、と自己嫌悪に陥ったものです。

そんなことが過去に何度かあったので、今回もそれやと思って、近くのコンビニや銀行、自転車で立ち寄って歩いて帰ってきそうなところを探しまくりましたが、ついに見つからず、忙しさにかまけてそのままひと月以上が過ぎたある日、警察から電話がありまして、「お宅の自転車が盗難にあっていた」とのことでした。
自転車を買ったときに付ける防犯登録のシールがもとで、警察を介して僕の元に紫の自転車が帰ってきました。
警察の話ですと、伏見稲荷の近くのコンビニから自転車を盗んだ人が、巡回中の警官に職務質問を受けて盗難が発覚した、とのことでした。
伏見稲荷は僕の事務所から自転車で15分くらいです。
歩いて行ける距離にコンビニが3件ありますので、さすがに僕は稲荷のコンビニまで自転車で行きません。誰かが事務所から盗んで稲荷に乗り捨て、それをまた別の人が盗んだ…というのが警察の見解でした。

そういえば高校1年の頃、今から30年近く前の話ですが、近所の知り合いのおじさんに「家の近くに捨ててある自転車が、パンクはしているがそれを直せば乗れそうなので乗るか?」といわれたので、乗ります、と即答し、パンクを直して通学に使っていたある日、巡回中の私服警官に呼び止められ、「それは君の自転車か?」「はいそうです」「一応防犯登録を調べるから」といわれ、僕の名前と登録者が一致しないことが分かり、警察署に連れて行かれ、「近所のおじさんに捨ててあった自転車をもらった」と説明しても、「それは横領という罪である」といろいろ説明され、結局、拇印を押す羽目になりました。
あのときのあの自転車は、無事、本当の持ち主の元へ返ったんでしょうね。

僕の元に返ってきた紫の自転車を見ながら、そんな昔のことも思い出しつつ…。
なんか貼った記憶のないシールなど貼られていて、それを剥がすか剥がすまいか迷っている所です。

 

 

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