フットハットがゆく【108】「あぁ熟すと悟る」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく【108】「あぁ熟すと悟る」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2006年5月1日号の掲載記事です。

あぁ熟すと悟る

僕の二人いる妹の下の方は、イギリス人と結婚してロンドンに住んでいる。
この春、桜見物を兼ね3年ぶりにその妹夫婦が3週間ほど日本に一時帰国し、京都の僕の家にも10日ほどいた。
妹にはこどもが二人いて、一人はこの春に3歳になったばかりのやんちゃざかりの男の子。
もう一人はまだハイハイもできない9ヵ月の女の子。
僕にとっては姪甥になるのだが、ハーフの子だから二人ともとても可愛くて、街に出てもいつも観光客の人気の的…桜の木の下で写真攻めにあっていた。

たった3週間だが、ふたりのこどもがどんどん成長していくので面白かった。
まず9ヵ月の姪っ子だが、表情、動作、言葉がかなり変わった。
最初、彼女の『表情』は泣くか笑うか、キョトンとするかまぶしがっているか、…ほんと数えるほどであった。
滞在中に表情は飛躍的に増え、顔をしかめたり、何かをほしがる顔つきをしたり、愛想笑い本笑いなど、表情に本人の意思を感じるようになった。

『動作』としては、ハイハイが出来るようになったのは大きい。
妹自身、「日本に来る前は置いた場所から移動しないのである意味楽だったが、今はいつの間にかハイハイしていなくなってしまうので心配が増えた」と嬉しそうにいっていた。
『言葉』は最初、泣くか「あ~」とか「う~」しかいえなかった。
それが、「ママ」に近い発音や、得体の知れない宇宙人語というか赤ちゃん語というか、とにかく何かを話そうという気持ちが伝わってくるようになった。
3週間でこんなに赤ちゃんが成長していくのには驚いた。

一方、日本で3歳の誕生日を迎えた甥っ子の方だが、妹が日本滞在においてテーマにしていたのが、「日本語に触れさす」ということだった。
甥っ子はロンドンに住んでいるので、まわりの環境からどうしても英語ばかりをしゃべってしまう。
日本人の母としては、日本語もちゃんと覚えてほしいのである。
ということで、僕はなるべく日本語で甥っ子に話しかけるようにしていた。

あるとき甥っ子が近所の公園に行きたいというので、連れて行くことにしたが、靴を左右反対に履こうとしていたので、
「それ、反対ちゃう?」と聞いたら、
「No !」と言い返された。そして、彼は反対に履いたまま駆けていった。
それから何日かしてまた甥っ子と公園に行くことになったが、また靴を左右反対に履こうとしていたので、
「それ、反対ちゃう?」と聞いたら、
「反対ちゃう!」と言い返された。
強情なところは腹立たしかったが、日本語を飛び越え、関西弁を覚えてしまった甥っ子が微笑ましかった。
ただ、なんでもいった通りに覚えてしまうので、自分自身ちゃんとした日本語を話さないといかんなぁ~と思った。

かわいい子には旅をさせろ、というけれど、日本滞在中、大阪、京都、東京と方々旅をして、こどもたちの成長が早まったのか、あるいはこの時期の子はこういう感じでどんどん成長するのか?
知恵熱が出たわけではないけれど、どんどん悟っていくこどもたちを観察するのは楽しかった。

アーネスト・サトウ (イギリス)1843~1929 幕末、明治と駐日英国公使として活躍し、英国における日本学の基礎を築いた。

アーネスト・サトウ (イギリス)1843~1929 幕末、明治と駐日英国公使として活躍し、英国における日本学の基礎を築いた。

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