雪月花の三庭苑再興!清水寺・成就院「月の庭」の内覧会と結願法要
京都には、雪月花の三庭苑と称された妙満寺「雪の庭」、清水寺成就院「月の庭」、北野天満宮「花の庭」がありました。
明治維新後に花の庭が廃絶し、長く雪月花の三庭苑が揃うことはありませんでした。
2022年1月、北野天満宮で花の庭が約150年ぶりに再興されました。3月には、妙満寺の月の庭が大きく改修されました。
久々に雪月花の三庭苑が揃ったことを記念し、4月27日に清水寺で再興の結願法要と内覧会が開催されました。
内覧会では、清水寺の学芸員より月の庭の見どころを詳細に解説いただきました。
「雪月花の三庭苑」令和再興結願法要
2022年4月27日(金)、翌々日からはじまる成就院「月の庭」特別公開を前に、雪月花の三庭苑が再興されたことを記念した結願法要が清水寺で執り行われました。
清水寺本堂での法要には、清水寺、妙満寺、北野天満宮の雪月花の三社寺関係者のほか、プレス関係者らが参列しました。
一般の参拝者は8月9日~16日の千日詣りでのみ公開される本堂の内々陣において、秘仏の千手観音菩薩が祀られた厨子と御前立を前に、読経や真言を唱える法要がしめやかに行われました。
三庭苑の再興がなったことが奉告られ、一連の雪月花三庭苑再興の関連行事は終了となりました。
MKタクシーをはじめとする三社寺以外の参列者は、本堂内陣において焼香を行いました。
月の庭の内覧会
学芸員・坂井輝久さんによる「月の庭」の解説
法要に続いて、月の庭の内覧会が行われました。
清水寺の学芸員である坂井輝久さんより、月の庭の解説が行われました。
以下、坂井輝久による月の庭の解説の抜粋です。
狭い庭を広く見せる借景の技法
清水寺成就院の月の庭は、日本に約200ある国指定の名勝庭園のひとつとして高く評価されています。
月の庭の大きな見どころは、借景です。
奈良文化財研究所の副所長を務めた小野健吉氏は、月の庭を「借景の傑作」と称えました。
東山の山腹にある清水寺は平坦地が少なく、広い庭園を造る敷地はありません。
狭い敷地の庭を、いかに広く見せるかという工夫が各所に凝らされています。
書院から月の庭を見ると、手前から奥の東山まで広い庭園が続いているかのように見えるでしょう。
奥の生垣の向こう側はすぐに険しい谷になっていますが、書院から見ると谷のあることは全くわかりません。
庭の奥の離れたところに三角灯籠をひとつ配置することで、広大な庭園が続いているように錯覚させるトリックが使われています。
石の「見立て」
池の周囲に置かれている石も見所です。
変わった形の石を配置することで、長時間見ても見飽きない工夫です。
日本文化の特徴に「見立て」があります。
月の庭でも、石をいろいろなものに見立てています。
中央の最も目立つ石(写真右)は、烏帽子(えぼし)に見立てて烏帽子石と言われています。
腰をかがめたお坊さんの姿にも見えることから合掌石とも言います。
池の中島にある灯籠(写真中央)は、火袋が小さい特徴的な形をしています。
夜に火を灯してもあるかないかの光にしかならないことから、蜻蛉灯籠(かげろうどうろう)と言われています。
作庭者は不明
月の庭が作られたのは、江戸時代前半です。
江戸中期の作庭手引書には、月の庭が「おだやかな庭の典型」として取り上げられています。
寛政11年(1799年)に刊行された京都の庭園ガイドブックである「都林泉名勝図会」にも月の庭が掲載されており、江戸時代から有名な庭園であったことがわあkります。
月の庭の作庭者はわかっていません。
前述の都林泉名勝図会には、相阿弥が作庭し、小堀遠州が補修したと記載されています。
明治時代の資料には、松永貞徳の作庭と記されています。
いずれも作庭からは時間が経ってからの記録なので、信用できるものではありません。
有名な人物の名前を作庭者として付会したのだろうと考えています。
松永貞徳は俳諧の祖として知られていますが、同時に連歌師でもあり当時最高の文化人のひとりでした。
妙満寺成就院、清水寺成就院、北野天満宮成就坊の三庭園を「雪月花の三庭苑」とセットにして広めたのは、松永貞徳のアイデアだったのではないでしょうか。
月明かりが美しい月の庭
成就院の庭がなぜ「月の庭」なのかもはっきりわかりません。
実は、書院から月の庭を見ても月は見えません。
月の庭は書院の北側に造られています。
かつての月の庭は池泉回遊式庭園だったようで、池のほとりで月を楽しんでいたのだろうと考えています。
今は月そのものは見えませんが、月明かりに照らし出された月の庭は神々しい景色です。
ゴールデンウィークの特別公開では行いませんが、秋の特別公開時はライトアップも行っています。
三社寺の代表者よりひとこと
内覧会の終了にあたり、雪月花の三庭苑の再興について、三社寺の代表がひとことずつ所感を述べました。
清水寺の森清範貫主
見て楽しむにとどまらず、雪月花の3つが揃ったことで自然とのつながりを心で感じてほしい。
北野天満宮の橘重十九宮司
雪月花の三庭苑で唯一現存しなかった花の庭を150年ぶりに再興することができてうれしい。
妙満寺の大川日仰貫首
これから三社寺が協力して、日本文化のすばらしさや松永貞徳の功績を伝えていきたい。
「月の庭」の特別公開
特別公開の概要
清水寺成就院の「月の庭」は、毎年ゴールデンウィークと秋の紅葉シーズンのみ特別公開されます。
2022年の概要は以下のとおりです。
公開期間 | 4月29日(金・祝)~5月5日(木・祝) |
拝観時間 | 9:00~16:00受付終了 |
拝観料 | 600円(清水寺拝観料は別途) |
成就院書院では、大川日仰貫首(妙満寺)の「雪」、森清範貫主(清水寺)の「月」、橘重十九宮司(北野天満宮)の「花」の揮毫が飾られています。
雪月花再興記念の切り絵
2022年は雪月花の三庭苑が再興したことを記念し、オリジナル切り絵が授与されます。
限定数なので、無くなり次第終了となります。
ゴールデンウィーク期間中分の想定枚数はあるとのことですが、後半はなくなってしまっているかもしれません。
雪月花の三庭苑の連携企画として、切り絵の専用台紙も授与されます。
台紙は1冊500円です。
台紙は雪月花の三庭苑の切り絵が貼り付けられるようにできています。
妙満寺月の庭に続いて2つ目の切り絵です。