IT先進国「エストニア視察記」前編|なんでもオンライン化で経済成長

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IT先進国「エストニア視察記」前編|なんでもオンライン化で経済成長

バルト三国のひとつであるエストニア共和国は、世界一のIT先進国・デジタル先進国として知られています。
MKタクシーでは、これからのデジタル化、グローバル化に対応すべく幹部を世界各国に視察に派遣しました。
エストニアの視察を行った名古屋MK社長の神谷文武のレポートです。

エストニアへ向かう畿内で見たアラスカの日の出

エストニアへ向かう畿内で見たアラスカの日の出

IT先進国のエストニアへ

エストニアへ7日間派遣

レポートを執筆するのは、名古屋MKで代表取締役を拝命しております神谷文武です。
この度、MKグループでは、日本では得られない価値観や様々な考え方、語学や文化などを学ぶ機会として海外研修を行いました。
私は2023年1月29日から2月4日までの7日間、エストニアに派遣されました。
18年前の2005年にもMK新聞にて愛知万博をレポートした私が、担当者から指名を受けましたのでMK新聞2023年6月号、7月号と2回に分けてエストニアでの視察で感じたことをレポートさせていただきます。

海外視察先のひとつとしてエストニアが選ばれた理由は、エストニアがIT先進国だからです。
IT先進国と聞くと、皆さんはどんなイメージをされますか?
ドローンが宅配をして、自転車ではなくセグウェイで移動、お店に行けばAIロボットが接客…。私はこんなイメージを持っていました。
しかし、実際に訪れたエストニアはイメージと違いました。

エストニアの首都のタリン空港

エストニアの首都のタリン空港

 

人口132万人の小国がデジタル化へ乗り出す

エストニアは東ヨーロッパの国で、北と東はバルト海、南はラトビア、東はロシアに接しています。
エストニアはNATOに加盟しているため、ウクライナのような戦争の危険はありませんでした。
面積は九州より少し大きいぐらいですが、人口は132万人と長崎県と同じぐらいです。

エストニアはバルト三国のひとつとして、1991年にソ連から主権を回復しました。
ゼロから国として東部の島々などの過疎地に行政サービスを提供していくため、インターネットの普及に乗じ、電子国家として行政サービスのデジタル化を推進してきました。

ソ連時代の建物をそのまま使用し、中は商業施設になっています

ソ連時代の建物をそのまま使用し、中は商業施設に

 

なんでもオンラインで完結

行政サービスは全てIDカードで

このような背景からエストニアでは、オンラインでの行政サービスが大変充実しています。
日本では結婚する、引越ししたなど、何をするにしても役所に行き、何度も書類に住所や名前を書く必要があります。
あまりの書類の多さ、窓口での待ち時間の長さにうんざりすることもあります。
しかし、エストニアでは結婚も、引越しも、出産も、納税はもちろん、選挙の投票までもすべてオンラインで完結します。

エストニア国民は全員IDカード(日本でいうマイナンバーカード)を持っています。
このIDカードが実に万能で、健康保険証、運転免許証、交通系ICカードにもなります。
オンラインで行政サービスを使用する時もこのIDカードが必要です。

唯一オンラインでできない手続きは、「離婚」です。これも2024年にはオンラインで申請ができる予定です。
(夫婦喧嘩をして、勢い余ってそのままオンラインで離婚を申請、ということもありそうです。頭を冷やす時間をつくるために、離婚はオンラインではなく紙の方がいいかもしれません)

タリン旧市街地は世界遺産。手前の中世の街並みと奥のビル群が対照的で、IT立国エストニアを象徴

タリン旧市街地は世界遺産。手前の中世の街並みと奥のビル群が対照的で、IT立国エストニアを象徴

全ての手続きが一気通貫

IDカードに登録されている名前や住所、生年月日などの個人情報は、国がデータベースとして一括で管理しています。
役所や警察、税務署だけでなく銀行や勤務先など私企業にも共有されます。
IDカードを出せば、どこに行っても名前や住所、生年月日を記入する必要は一切ありません。
病院に行けば医者がカルテや過去の通院歴や既往症が確認でき、オンラインで処方箋を発行、薬局に行けばオンライン処方箋を見て薬がもらえます。
勤務先では給料の振込先である銀行口座が、交通違反をすれば過去の違反歴が国のデータベースを通じて共有されます。
自宅の屋根に太陽光発電機の設置の見積もりを依頼しても、IDカードのデータベースから家の場所や屋根の面積までが見積作成会社に自動的に共有されるという徹底ぶりです。

国は積極的福利厚生の方針のもと、一度出生届を出せば、ある年齢に達したら保育園や幼稚園の空き状況や入園の案内、小学校の案内、免許証の有効期限、やがては年金受給の案内など、全てにおいて一気通貫した行政サービスを受けることができます。

薬局を視察。オンラインにより医師からの処方箋を確認し、薬を提供する様子。

薬局を視察。オンラインにより医師からの処方箋を確認し、薬を提供する様子

 

IT立国として経済成長するエストニア

多くのユニコーン企業が集積

さらにエストニアでは電子国民制度があります。1万5千円程度の登録料を払えばエストニアの電子国民になることができ、エストニア国籍の法人が設立できます。
日本で法人を設立する場合、役所や税務署に足を運び書面を提出しなければいけません。エストニアではこれらの手続きが全てオンラインで可能です。
電子国民になることとビザ取得とは別なので、実際に居住することはできませんが、エストニアはEU加盟国なので多くのメリットがあります。
EUでのビジネス展開が可能となるため、エストニア発のユニコーン企業(企業価値10億ドル以上の未上場スタートアップ企業)がたくさんあります。
2020年4月現在、人口一人当たりのユニコーン企業数は世界一です。
スカイプも、配車アプリBoltももとはエストニアのユニコーン企業です。

ここまでエストニアのデジタル国家ぶりを紹介させていただきましたが、エストニアに見るIT先進国とは、「なんでもオンラインでできる国」です。

タリン市内には旧ソ連時代の建物と現代の建物が多数融合。崩れそうな心配もありますが、地震が少ないこの地域ならでは

タリン市内には旧ソ連時代の建物と現代の建物が多数融合。崩れそうな心配もありますが、地震が少ないこの地域ならでは

個人情報管理への信頼がIT化の肝

その心は、国主導による「安全で信頼できる絶対的な個人情報管理」と感じました。
エストニアではIDカードで不正を行えばアクセスログが残ります。すぐに不正の犯人がわかり警察に捕まり、相応の刑事罰を受ける。だから安心。
一方日本ではアクセスログ「しか」残りません。犯人は捕まらないかもしれない。
国による個人情報の管理がエストニアほど厳格にできない、この差こそエストニアが「IT先進国」と言われる理由でした。

皆様最後までお読みいただきありがとうございます。来月は北欧の文化ともいえるスモークサウナ体験、そして自動運転技術について書かせていただきます。
後編はMK新聞2023年7月号に掲載されます。
ぜひお付き合いいただきますようよろしくお願いいたします。

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