自給自足の山里から【205】「さらば都会、縄文百姓へ」|MK新聞連載記事

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自給自足の山里から【205】「さらば都会、縄文百姓へ」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、縄文百姓の大森昌也さんらによる「自給自足の山里から」を、1998年12月16日~2016年6月1日まで連載しました。
MK新聞2016年3月1日号の掲載記事です。

大森昌也さんの執筆です。

さらば都会、縄文百姓へ

百姓! 百の姓をこなす自給自足自立!

私は“縄文百姓”と自称する。
地球環境が、自滅するまで破壊の都市、労働者、農民文明にさらばして、1万余年の間戦争のない平和な時代を築いた縄文に依る百姓文明への思いである。
百姓といえば、明治時代、足尾銅山鉱毒を問うて、東京都会にデモで押し出た苦しむ“百姓”に“ドン百姓!”と権力、警察は叫び、警棒をふるった。
都市の交差点でウロウロしていたら、“うすノロドン百姓!”と怒鳴られ、“職業は?”と聞かれ“百姓”と応えると“無職か!”と言われた。
でも戦前、百姓不足の一時期は、“お百姓さん”なんておだてられた。
が、今、百姓という言葉は差別語になる有様。

しかし、百姓は単に農民のことではなく、百の姓、仕事・職業をこなす者のことである。
それが、農民に特化したのは、弥生に入って稲作が入り拡大していった結果である、効率のいい稲作に流れ、飢饉があると、餓死者が出る世に。
縄文では、後期にはお米も作られ、海の、山のものと豊かな職で飢饉でも死者なし。
衣・食・住、山・川・海百の仕事をこなす自給自足の縄文こそ豊かな時代である。

縄文! 豊かで明るい平和なとき!

縄文・縄文人というと、私が中学時代に教科書で習ったのは、裸に毛皮、狩りをして焚火で肉を焼いて食べ、貧しくくらい時代であり、弥生になって豊かで明るい時代になったと書かれていて、そのように教えられてきた。
画家の岡本太郎が縄文土器文化のすばらしさを発見し、哲学者の梅原猛が縄文文化は日本の源と明らかにし、縄文が少し見直されてきた。
三内丸山遺跡の発見もあり。しかし、現代に直結して根っこから縄文・縄文人のことに及ぶことがなかった。
最近、NHKでも「特集」が組まれ、アフリカに人類が発生するまで、縄文人および近いチベットなどと明らかにし、さらに縄文人は「イケメン」でおしゃれで、衣服も繊維から作っており、食べ物も海の貝や山の幸、イノシシら山の獣、里のものらを縄文土器で寄せ鍋しての豊かさ。
住まいもクリの木を使って高台高床式らと考えられ、ドングリを石皿などで加工し、お菓子も。黒曜石で鋭い矢、刃物を作った一方、首飾り、耳飾りなど装飾品も作っていた。
丸木舟を作り、海を渡って交流も。
まさしく今日見捨てられんとする山村の風景である。

鎌と鍬を手に大地に立つ

私は、百姓に、縄文にあこがれの気持ちをいだいてきた。
虐げられ、踏みつけられてきた百姓の本来と、すばらしい縄文の姿をこの資本主義社会が圧倒する中で、よみがえらせ、この腐敗、堕落し、戦争の絶えない社会を糺したい、立て直したいとの思いで、30年前、都市をさらばし、労働者でも農民でもない自給自足自立のくらし、村づくりを志し、過疎化が進む滅びゆかんとするブラク(被差別部落)に3人の男の子つれて家族で移住。
手には、鎌と鍬だけで畑に立つ。まわりはお年寄りだけ。

当時、ブラクの若者は「同和」対策事業で役場づとめか、奨学金で大学に行く若者あり。昼間はいない。
ブラクの者は「労働者でも農民でもない“雑の者(・・・)”といわれてきたが、いまや労働者の道を歩むのか。
サベツされながら、大地に根ざしてくらし生きてきた志を忘れてはならない。

資本主義労働の“犯罪性”

都会で、権力と結託したヤクザにピストルつきつけられ大阪解放同盟支部専任役職を失い、結婚したこともあって、子どももでき、「賃労働」についた。
いろいろやった。
百貨店の宣伝ビラ作成の写植の労働、防腐剤・消毒薬まみれの町の小さな豆腐工場の仕事(家族労働で皆病気)、ベッドにしばりつけ一時薬漬けの老人医療の医者の手先としての臨床検査技師(見習)、有機農産物を満載して2トントラックを走らせ、排気ガスをまきちらす配送労働ら資本主義社会を批判し、糺すことをやってきた。
己の「犯罪性」に苦しむ日々。何とか脱せんと、賃労働を半分にし、自給用のお米や野菜作り、たまご用のトリを飼う。

土をこわがる我が子に教えられて

この“犯罪性”をいやというほど、思い知らされたのは、息子のケンタ(当時3歳)を畑に連れていって、畑で遊ばせようと下ろすと、「土がこわい!」と泣き叫んだのである。
土をこわがる我が息子にもう呆然である。
子どもは、全自給自足丸ごとのくらしを求めている。
自然のなかで育てるのがささやかな親の責任と思った。

あ~す農場

兵庫県朝来市和田山町朝日767

 

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MK新聞への「あ~す農場」の連載記事

1998年12月16日号~2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)

2017年1月1日号~2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」(72回連載)

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