自給自足の山里から【198】「都会の夜景、山村の美」|MK新聞連載記事

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自給自足の山里から【198】「都会の夜景、山村の美」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、縄文百姓の大森昌也さんらによる「自給自足の山里から」を、1998年12月16日~2016年6月1日まで連載しました。
MK新聞2015年8月1日号の掲載記事です。

大森昌也さんの執筆です。

都会の夜景、山村の美

片目を失うか?

6月26日、大阪駅近くの文化遺産が玄関という病院での「検査」の結果、「上顎(じょうがく)ガン」(左上頬)と診断される。

7月から治療に入り、8月には「左眼を除去」の手術を行うという。
神さまからいただいた、昨春亡くなった母からいただいた、“からだ”は先の戦争で、命からがら満州(中国東北部)から、無事元気に育ててもらったものである。
一度もからだにメスを入れたことがないのに、左眼を大地にかえすことにあるとは!
母の生前も親不孝を重ねたが、死後も重ねることになるとは!
なんとか、メスを入れずにやれないものかと、2週間(前後1ヵ月)の断食を試みるが、5日で中止、老いての断食はきつい。

たらいまわし

友人らは、「えらい災難。こんな状態になるまでに手を打てなかったのか」と問う。
昔から左頬に、「違和感」があった。しかし、山村に移住して30年余り、入院することなどなかった。からだには、自信があった。
それが裏目に出たようである。
この春、来訪の「百姓体験居候」の若者たちのロボット化・ひきこもり・うつなどの状況に、心身ともに疲れたこともあってか、左のまぶたが腫れてきた。
眼科に行くと、「ハチにでも刺されたのでしょう」と塗り薬。歯茎の調子も気になり、歯科では「お疲れですね」と普通の治療。腫れがひかないので、蓄膿かと思い耳鼻科に行く。レントゲンを撮って、「ここではこれ以上検査できないので、大きな総合病院に行ってください」と言われる。田んぼ・畑仕事の忙しさもありつつ、2ヵ月近く経った。
まあ、総合的根本的診断下すことなく、たらいまわし。その間、片目が見えなくなった。悔しい!

『上顎ガン』って何?

『上顎ガン』と言っても、ほとんどの人は知らない。先輩の、大阪の岡本さんは、「知っているよ。知人の歯医者が、昔よく上顎ガンの治療をしていたから」と言う。
医者は、「このガンは、年に1~2件で、あなたのようなのは、3年ぶりくらい」。そして、「生活環境が変わって減ったが、あなたの暮らしは昔ながらのようですから」なんて。
ガンといえば、胃とか腸など内臓を思いつくが、「ジィちゃん! 片目がつぶれておばけみたい」と言われた。
弁明になるが、傷つき、病(なや)み、虐げられた若者を、癒し、励ますこともできずにいる自分に嫌気もあり、ついつい酒・ビール。息子には「飲みすぎ」、孫(つくし)は「ジィちゃん、ビールきんし」と張り紙をあっちこっちに貼る。
乱れた食生活が、長く共存し隠れていたガン(細胞)を乱れさせた。

夜景は、冷たく死んでいる!おたまじゃくしら、イネをよろしく

大阪の病院の夜、窓の外を見る。「夜景がきれいですね」と言うと、看護士が「そうでしょう」と頷く。
「しゃけど、私の山村の方が、生き生きして美しい。お月さんは、ここみたいに窮屈でなく、堂々と大地を照らし、ホタルは愛の乱れ舞い、カエルたちも愛の大合唱のゲロゲロ、見せて聞かせてあげたいなぁ」と声をかけると、眼を輝かせる。
さて、我があ~す農場は、隣村のお百姓さんが寄ってきて、「よく手入れが届いているねぇ」と言われたものだが、今、3人の子どもたちが世話しているが、自分たちの百姓仕事に手をとられ、なかなか手入れが行き届かない。
農場の田んぼ・畑・果樹園らは草に覆われ、「自然農法の福岡正信さんやなぁ」と言われている(笑)。
6人の孫たちが、空からのカラスや地上からの鹿・猪・ねずみ・アナグマらと競いながら、草を分けて、玉ネギ・ジャガイモと夏野菜のトマト・ナス・キュウリ・スイカ・カボチャなど、やられるまえに採れるだろうか?

オタマジャクシ・カエル・ヘビ・アメンボ・ゲンゴロー・オケラ・ミミズ・カメたち、田んぼの生きとし生けるものたちよ! イネをよろしく申し上げます。
夏8月に手術し、退院は9月。イネの成り育ちが楽しみです。

(2015年7月7日)

 

あ~す農場

兵庫県朝来市和田山町朝日767

 

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40年以上も発行を続けるMK新聞を、皆さま、どうぞよろしくお願いします。

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MK新聞への「あ~す農場」の連載記事

1998年12月16日号~2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)

2017年1月1日号~2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」(72回連載)

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