自給自足の山里から【187】「都市社会と戦争と」|MK新聞連載記事

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自給自足の山里から【187】「都市社会と戦争と」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、縄文百姓の大森昌也さんらによる「自給自足の山里から」を、1998年12月16日~2016年6月1日まで連載しました。
MK新聞2014年9月16日号の掲載記事です。

大森昌也さんの執筆です。

都市社会と戦争と

青大将の抜け殻と満月がきれい

「あっ! やられた! イタチや!」と、娘のちえ。今は亡きニワトリさんを手に持つ。縄文百姓を志す「居候」の利君が、「今日は、ナス・トマト・などたくさん入ったチキンカレーだ!」と手際よく捌(さば)く。
ふと石垣の方を見ると、2m誓い我が青大将の抜け殻が、きれいに生々しく、見事な脱皮である。神棚に『山村の再生を願って』ちえが飾る。
近頃、農家に「居候」している「グウァー」と不気味に鳴くアオサギに誘われて、若者と田んぼ・畑に向かう。畦(あぜ)道を歩くと、ピョンピョンと飛び跳ねるカエルたち、田をニョロニョロと泳ぐヘビたちにびっくりの若者。
朝もやの中、台風一過の天空に、満月がきれいに笑う。

都市社会を問う佐世保同級生殺害事件

「また! 佐世保や! 10年前! 今度は、高校1年生の女の子が、親友を殺し、首を切ったって!」と、テレビに釘付けのちえ。
父親は、50代の弁護士。で、「精神科医に診断」「行政機関にも相談」など、懸命に弁明・弁護。いやはや。神戸の同様の事件のときには30代。何を学んだのか? きっと、人ごとであり、まさか己の身に降りかかるとは思いもよらない。
しかし、今回の事件は、人ごとではなく、まさに、今日の都市社会がもたらしたと思わざるをえない。
人々は、コンクリートジャングルの都市でコンビニに餌付けされ、家畜化され、大地から切り離されて、ヒトとしての感性を奪われている。若者は、「一年の大半を駅で寝る」「マクド難民(百円コーヒー・ハンバーガーで一夜過ごす)」「移動キャバクラの女の子たち」など。高齢者の孤独死である。

倉本聰さん絶賛の『都市を滅ぼせ』再版す

亡き母より1歳年上94歳の中島正さんから、著書『都市を滅ぼせ』(双葉社)が、送られてきた。再版である。20年前、出版されたとき、私は、友人知人たちに読むこと勧める。知人の運営する図書館にも贈る。ところが「私のところでは、置けない」と返却。びくりの怒りが忘れられない。
広告用紙の裏に書かれた便りには、「倉本さんが、後押ししてくださったおかげで再版できました。でも図書館が突っ返した内容は変わっていませんので、世間はやはり無視するでしょう」と書かれていた。
テレビドラマ『北の国から』の脚本家倉本聰さんは、「文明社会という不思議なものがすすみ…。
“文明ムラ”というものをつくって、自然をどんどん壊し始めたとき、僕はどうしようもない不安感を持った。その正体はまだ判らなかったが、何ともいえない不安感だった。
その頃、一冊の本に出逢って、頭を殴られたような衝撃を受けた。それが、これまで絶版になっていたこの名著・中島正翁の『都市を滅ぼせ』である。衝撃の名著であり、文化勲章ものである。日本人必読の“警告の書”である」と、絶賛する。

諸悪の根源の都市を滅ぼさなかったら人類は滅びる!

中島さんは、本書で、「都市を滅ぼせ――これは暴言ではない。都市を滅ぼさなかったら人類は滅びるのである。都市は、公害の元凶であり、諸悪の根源である。環境(地球)破壊は、都市機能の活動そのもの…。
真に、都市(地球)公害を追放しようとすれば、まず都市そのものを滅ぼさなければならないのである。
本書の主題は、一口で言えば、『都市が発展のために行う活動自体が災いして、都市の存立を脅かす事態に至ったとき、いかにして都市を逃れ、自給自足の小農暮らしを目指すか』ということになる」とおっしゃる。
中島さんは農民作家の山下惣一さんとの共著『市民皆農』(創森社)の中で、「ソ連のコルホーズや白樺派の武者小路実篤による日向(ひゅうが)の新しき村も、やはり、強権と干渉から脱却しきれず、瓦解してしまいました。真の自由は、個の独立(自給自足態勢)によってのみ約束されることを、人々は、縄文百姓の実証に照らして肝に銘じなければなりません」(251P)とおっしゃる。
縄文百姓は、まさに肝に命じる次第です。

「集団的自衛権容認」に抗議して焼身自殺

「歴史を消し去るやり方は間違い」(野中広務)
60代の男性が、6月29日昼、新宿で、“集団的自衛権容認”に抗議して焼身自殺。病院に運ばれ、一命は取りとめたという。なんとか元気になってほしい。
思い起こせば、1967年11月に、由比忠之進さんが、アメリカのベトナム侵略と日本政府の加担に抗議して、焼身自殺した。当時の政府は「悲しむ事件」と弔問している。
しかし、今回は、マスコミはほとんど報道せず、もちろん政府の弔問なんてない。事件なんかないように済まされる。なんとも冷たい非人間さに身の毛もよだつ。
この冷酷な安倍首相たちは、アフリカ・中南米などに、資本家と共にセールスに励み、その利のため「戦争でき、する国」へ励む。
また、麻生副総理は、人間(ヒト)としてあるまじき「あんなブラクの者(もん)(野中広務のこと)、総理にできんわ」とサベツ。「絶対許さん」と怒る元自民党幹事長野中広務さんは「戦争がどれだけ深い傷痕を国内外に残したか、もっと謙虚に、あの時代を検証してほしい。歴史を消してしまうようなやり方は、間違っている」(朝日新聞7/18)「憲法でできた内閣が、憲法を無視し、解釈を変えるのは、本末転倒」(7/24沖縄)と安倍政権を批判している。

 

あ~す農場

兵庫県朝来市和田山町朝日767

 

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MK新聞への「あ~す農場」の連載記事

1998年12月16日号~2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)

2017年1月1日号~2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」(72回連載)

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