エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【378】|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、大西信夫さんによる様々な身近な事柄を取り上げたエッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」を前身を含めて1988年5月22日から連載しています。
MK新聞2019年10月1日号の掲載記事です。
本だけ眺めて暮らしたい
箴言集、アフォリズム集、ことわざを集めた本などは好きで、隙間時間によく眺める。
ただし、見開きページで右ページに名言、左ページに編者の解説や短いエッセイのようなものを付した類のものはあまり好みではない。
言葉と名前と出典のみ(さらに生没年か出版年があればなおよい)をただひたすら羅列したものがよい。それも、古典と呼べるような時代の哲学者や宗教者、政治家、作家などのもの。
同時代(特に国内)のタレントやアスリート、経済人はまったく不要。気の利いた言葉なら別に誰でもいいのだが、非常に少ないのが現実だ。
さて、名言集はいくつかの種類に分けられる。
ラ・ロシュフコー『箴言集』講談社学術文庫他(「人は、思っているほど不幸でもなければ、期待したほど幸福でもない」など)のように、当人の著作として出版されているもの。
『マーク・トゥエイン150の言葉』ディスカバー21(「誕生を喜び、葬儀で悲しむのはなぜか? それは当人でないからだ」など)のように、一人の人物の言葉を編者が集め、まとめたもの。
『愛のアフォリズム』集英社新書(「恋愛において男性は自分を「射手」と感じるようですが、じつは「矢」にすぎません」など)のようにテーマ別で編集したもの。
私の座右の書である『世界ことわざ名言辞典』講談社学術文庫(「老人には眼前に、若者には背後に死がある」など)のように、一万を超える数多くの句を集録し、分類整理したもの。
他にもまだいくつかタイプはあるが、『イエスの言葉 ブッダの言葉』大東出版社はなかなかユニーク。両者の似たような教えや比喩の言葉を見開きページに対置するというもの。一つ一つは「なるほどそうですね」程度だが、こうして一冊分の相似を積み重ねられると感心する。
最後に、お気に入りの一冊を。『心にトゲ刺す200の花束 究極のペシミズム箴言集』祥伝社。
いくつか引用すると「男性は女性よりもずっといい人生を送ることができる。ひとつには、彼らは女性よりも遅く結婚するし、ひとつには女性よりも早く死ぬからだ」「わたしたちの人生の前半は両親によって台無しにされ、後半は子どもによって台無しにされる」「アルコールは人生という手術を耐えるための麻酔である」
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MK新聞への大西信夫さんの連載記事
1988年以来、MK新聞に各種記事を連載中です。
1988年5月22日号~1991年11月22日号 「よしゆきの京都の見方」(45回連載)
1990年1月7日号~1992年2月7日 「空車中のひとりごと」(12回連載)
1995年1月22日号~1999年12月1日号 「何を見ても何かを思う」(64回連載)
1996年4月16日号~現在 「本だけ眺めて暮らしたい」(連載中)