エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【360】|MK新聞連載記事

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エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【360】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、大西信夫さんによる様々な身近な事柄を取り上げたエッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」を前身を含めて1988年5月22日から連載しています。
MK新聞2018年4月1日号の掲載記事です。

 

本だけ眺めて暮らしたい

このごろセドリという言葉を新聞やテレビの報道でよく目や耳にするようになった。海洋上で船から船へ荷を積み替えて陸揚げすることで、「瀬取り」と表記する。
国連の経済制裁決議に反する北朝鮮への密輸が、瀬取りによって行なわれているらしい。

ご存知のように、古書店の業界にも同じセドリという用語がある。ただし、こちらは「競取り」や「糶取り」と書く。
古書店や購入者などのあいだで売り買いをして利ざやを稼ぐ行為、またその人を示す。
指し示す具体的な行為や漢字表記は異なるが、広義にとれば、どちらのセドリもどことなく似た構図を指しているように思えるのだが、いかがだろうか。
狙いの荷や魚(古本)が港(特定の店頭)ではなく、その前段の海上(市場、不特定の店頭)で、その獲物を希望する顧客とつながりを持つ船(古書業者)へ転売されるというものだ。
なので、セドリという表音は同源で、どちらか(たぶん古本、あるいは両方)が派生した用法であり、漢字は後から当てられたのではないかと、ニュースでこの言葉に初めて接したとき何とはなしに想像した。

一般に流布する、発音や漢字にこじつけた語源の説はたいがい怪しいものだが、ふとした思いつきとしてメモしてみた。
メモついでに、話題を広げられないまま長くネタ帳に居座っている小ネタを紙幅の許す範囲で以下にご紹介。年度末の決算処分大サービス!

  • 小ネタその一

河出文庫の『オーメン』(新装版、これも既に品切れか)の本体価格は666円。編集担当者は意図して生産コストを調整したらしい。

  • 小ネタその二

価格ネタでは、1996年に角川mini文庫という、文庫本の半分ほどのサイズのシリーズが創刊され(今はない)、『定価200円の殺人』というタイトルで定価200円の本があった。

  • 小ネタその三

ブックオフの書棚の俳句・短歌・川柳のコーナーに『七三一 追撃・そのとき幹部達は…』(吉永春子、筑摩書房)が並んでいた。俳句は五七五でしょ、あなた。

  • 小ネタその四

書名は『露出テクニック』『露出を極める』でも、痴漢のための本ではありません。もちろん、写真撮影のための本、ですね。念のため。

 

MK新聞について

「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
MK観光ドライバーによる京都の観光情報、旬の映画や隠れた名店のご紹介、 楽しい読み物から教養になる連載の数々、運輸行政に対するMKの主張などが凝縮されています。
40年以上も発行を続けるMK新聞を、皆さま、どうぞよろしくお願いします。

ホームページからも最新号、バックナンバーを閲覧可能です。

 

MK新聞への大西信夫さんの連載記事

1988年以来、MK新聞に各種記事を連載中です。

1988年5月22日号~1991年11月22日号 「よしゆきの京都の見方」(45回連載)
1990年1月7日号~1992年2月7日 「空車中のひとりごと」(12回連載)
1995年1月22日号~1999年12月1日号 「何を見ても何かを思う」(64回連載)
1996年4月16日号~現在 「本だけ眺めて暮らしたい」(連載中)

 

本だけ眺めて暮らしたい バックナンバー

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