山の一家*葉根舎「葉根たより」【60】|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家*葉根舎(はねや)の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2021年12月1日号の掲載記事です。
大森梨沙子さんの執筆です。
葉根たより
立冬を迎え、風が変わってきました。
あんなにも静かだった虫の音もいつの間にか静かになり、冷たく透き通ってゆく空気。
「地始凍(ちはじめてこおる)」「朔風払葉(きたかぜこのはをはらう)」大地が凍り始め、北風が木の葉を吹き払う頃。
今年は温暖でピリッとした寒さがまだやって来ず、紅葉もゆるやかですが、その日は突然やって来るかもしれません。
気を抜かず、冬支度の日々です。
<様々な収穫>
今年の稲刈りは十月末日に黒米を刈り、無事に終えることができました。
収量は思うようにはいきませんでしたが、とても綺麗なお米です。
味わい深く、大粒で冷めてもおいしいとよく言っていただきます。
来年はもう少し増えるよう、夏に刈った草を子供たちと集めて田へ入れました。
まだ一部の田のみなので、これからまだまだ草刈りをして入れていかねばなりません。
畑では猪にやられやすいので作っていなかったサツマイモを久しぶりに作り、たくさん収穫ができました。
薪ストーブで焼き芋にし、子供たちのおやつにしています。
麦播き、大豆の葉っぱ取りも子供たちと。
麦は播いた二日後からカラスがやってきてハラハラ。
対策をしてなんとか切り抜けると、今度は小動物の足跡がたくさん。
芽が出たら野ウサギがやって来るので、低い電柵を張らねばなりません。
何かすれば誰かがやって来る、人はいなくとも賑やかな山です。
カラカラと舞う落ち葉の音もまたおかし。
<生蜂蜜と野草エキス>
毎年気候の変化が著しく、よめない自然の変化。
今年はスズメバチがやって来ないと思ったら、十一月はじめにやって来ました。
こんな季節にやって来るのは初めてです。
朝、蜂を見に行ったら一箱の蜂がほとんどやられていました。
全部で四箱あった蜂箱、残り三箱ありますが、状態がいいのは一箱のみ。
なんとか越冬できるよう断熱の囲いをするなど、冬支度を工夫しています。
毎年春に、お花の蜜のみからできた非加熱の、酵素や菌の生きた美味しい生蜂蜜を頂いています。
今年収穫した蜂蜜、山藤、山柿、山栗、山はぜがまだ在庫があります。
ご興味のある方はホームページをご覧下さい。
蜂箱を置いている側には毎年、ノブドウの実がたくさんつきます。
食べることはできませんが、我が家では玄米焼酎に漬け、効能をアルコール抽出し、腰痛や肩こりなどのお手当てに使っています。
ノブドウのほか、ドクダミやヨモギ、ユキノシタ、ヘビイチゴなど様々な野草を漬け、それぞれの効能のおかげで元気に暮らさせていただいています。
<家族の時間>
そんな風に季節の巡るなか、子供たちはどんどん大きくなってゆきますね。
高三の長男つくしは来春から林業の学校へ行くことになり、ついに家を出ることになりました。
合格した途端感じた安心と寂しさ。
親になってみないとわからない気持ちがあることを年々実感します。
中三の次男すぎなは修学旅行へ行ったり、高校受験に向けて頑張っていたり、小五の三男かやは地域の行事で近くの山へ登ったり。
なるべくゆっくり時が過ぎてほしいと願ってしまいます。
<からだのーと>
今年の冬至は、十二月二十二日。
古代ローマや縄文において、とても大切に太陽を祭るお祝いをされてきたそうで、クリスマスの起源とも言われています。
私は新暦の大晦日より、大きな節目に感じています。
山の木々も冬至前に倒すのと、後では、その後の新芽の勢いが違います。
冬至までに倒した木は、ひこばえが勢いよく生えてくるのです。
ですから私もできるだけ冬至までに大掃除などをしたいと心掛けています。
そして冬は、身体を温める根菜類をじっくり炊いたものがお勧めですが、満月の翌日から新月までは解毒作用が高まる時期なので、春菊などの青菜たっぷりのお鍋や胡麻和えなどがお勧めです。
寒さに実が締まり甘くなるお野菜のように過ごせたらいいですね。
(十一月十五日記)
■葉根舎
haneya8011@gmail.com
HP:https://www.yamano-haneya.com
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1998年12月16日号~2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)
2017年1月1日号~2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」(72回連載)