山の一家*葉根舎「葉根たより」【55】|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家*葉根舎(はねや)の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2021年7月1日号の掲載記事です。
大森梨沙子さんの執筆です。
葉根たより
卯の花、ノイバラ、スイカズラ、ドクダミ…五月下旬から山は白き花々でいっぱいになります。
蜂たちは、蜜と花粉を求めて忙しそうに飛び交い、私たちもお米や野菜を育てるためにせっせ、せっせと。
「腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる)」「梅子黄(うめのみきばむ)」
草の中から蛍が舞い、光を放ち始める頃。昔は腐った草が蛍になると考えられていたそうです。
わが家の周りでも、ふわふわと柔らかな光が舞っています。
梅の実は黄色く熟していく頃。
梅酒用は青い頃に、梅干しは黄色に熟してから。
桑、グミ、ヘビイチゴの実も色づく日々。
うっかり摘み忘れないように気をつけながら、豊かな暮らしを受け取っています。
<早苗>
わが家もやっと田植えが始まりました。
長い長い畔切り、畦塗り、代掻きなどを経て、植え始めることができました。
苗は今年は風通し良く育てたためなかなか芽が出てこなかったり、ネズミにかじられてはネットを直したりもしながらも、なんとか綺麗に育ちました。
収穫までは気を抜けないものの、植えることができるとやはり少しほっとします。
そして、気持ち良さそうに風に揺れ、光を受ける苗たちを見ていると、のびやかな気持ちになります。
畑には里芋、ヤーコン、夏野菜などの苗を子供たちと植え付けました。
暑さが厳しくなってゆく季節ですが、太陽をいっぱい受けてぐんぐん育つ植物を見ていると、暑さを楽しむ勇気が湧いてきます。
<蜂と蜜>
わが家では、山桜、山藤、栃、山柿、山栗、はぜ、りょうぶなどの蜂蜜が採れるのですが、採れるかどうかはお天気次第。
花の開花時に晴れて、気温が高いと花が蜜をしっかりとふき、蜂たちがたくさん集めることができます。
開花時に雨だと蜂が飛べず、気温が低いと花の蜜もあまりふきません。
今年は香水のような山桜、爽やかな山藤が採れました。
栃は雨と重なり採れませんでしたが、数日前には山柿の蜂蜜を絞ることができました。
といっても、十割その花の蜜というわけではなく、二割ほど他の花の蜜も少し混ざっているので、 毎年少しづつ味わいは違います。
そしてこの後、どんな蜜が採れるかはわかりません。
人間の予定通りにならないところが面白いもの。
夫げんはいつも蜂たちがどの花の元へ行っているのかよく見ていて、そのお話もとても楽しいのです。
<からだのーと>
夏期は心臓や小腸に負担がかかりやすくなります。
心臓が弱ると、動悸、不整脈、高血圧に。小腸が弱ると口内炎になったり、尿が濃くなったりします。
夏といえばバーベキューですが、焼肉など焼いて焦がした動物性食品、コーヒー、ビールなど苦味のある嗜好品を控え、ゴーヤなどの苦味のある野菜や野草、三年番茶や玄米コーヒーのような苦味の飲み物、人参、トマト、梅干し、八丁味噌のような赤い食品を頂くように心がけましょう。
それらが、心臓や小腸を助けてくれます。
冷房対策には、お醤油や梅干し、梅酢入りの三年番茶で身体の芯まで冷えないようにしましょう。
夏に冷やしすぎると、秋以降の身体に響いてしまいます。
七月十九日から八月六日(立秋の前日)は夏土用。食中毒が増える時期なので、動物性食品の食べ過ぎに注意が必要です。
山芋と海苔で作ったうなぎ風の蒲焼きの方が身体を楽にしてくれそうですね。
食欲がない時は無理には食べず、紹介したような食品を少量よく噛んで頂き、汗をしっかり流し、暑さをのりきっていきましょう。
山の夏もこの数年は随分と暑くなりましたが、夜の涼しさがとても贅沢でありがたいです。
(2021年6月9日記)
■葉根舎
haneya8011@gmail.com
HP:https://www.yamano-haneya.com
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