山の一家*葉根舎「葉根たより」【51】|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家*葉根舎(はねや)の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2021年3月1日号の掲載記事です。
大森梨沙子さんの執筆です。
葉根たより
立春を迎え、東風解凍の如く、春風が雪を溶かし始めました。この冬は数年ぶりに冬らしい冷え込みと積雪、ピンと張り詰めた空気、美しい雪に抱かれ、季節のめりはりがあることの喜びを感じていました。
ですが山の上で立春の春風は早すぎ、そしてまた白き雪の舞う世界に。寒暖差の大きさは今年も続くようです。
「黄鶯睍睆(うぐいすなく)」「草木萌動(そうもくめばえいずる)」。
暦の上で山里ではウグイスが鳴き始める頃。
「睍睆」とは鳴き声の良いという意味で、その美しい音色からウグイスは、オオルリ、コマドリとともに日本三鳴鳥に数えられているそうです。
二月下旬にはだんだんと春めき、暖かい日差しに誘われるかのように、地面や木々の枝々から萌黄色の小さな命が一斉に芽吹き始める地域もあることでしょう。
寒暖差に、ウグイスもいつ鳴き始めるか迷ってしまわないかしら、と思ってしまいます。
<はじまりの仕事>
年末から一月中旬にかけて降り続けた雪、水道が凍結し、なかなか溶けないほどの冷え込みに対応しながら、大豆や小豆をそうじし、寒の水のお餅つきやお味噌作り。
雪に閉ざされ、自然と外出はへり、ひっそり静かに過ごす冬の息遣いもよいものです。
そこへ早くも、立春と共にやってきた春風。春の香りにうきうきそわそわ。
農作業が始まりだんだんと忙しくなる春。忙しくなる前に大工仕事に取りかかりました。
まずは、台所の窓をペアガラスに。日中のお日さまの温度が夜まで残り、暖房のない台所がほのかに暖かくなりました。
その次はテラスの修復。山の斜面に立つ我が家。
子供たちは幼い頃、一人一回はテラスから落ちたもの。柵は少しづつ材木を足し隙間を細かくしていきました。その柵や、雨の当たるところが朽ちてきていたので、取り払い作り直しました。
子供たちももう大きくなったので、思いきって柵をつけずにすっきりとしたテラスに。なんと見晴らしのいいこと!
二十代前半の頃に若さと勢いで作った小さなわが家。作り足したり、直したり、自分たちと共に成長し続けていきます。もっともっと素敵な空間へしていきたいと、想像は広がるばかりです。
<初の恵方巻>
子供たちは雪かき、雪遊びが終わり、薪の移動や大工仕事のお手伝い、ジャガイモの芽かきなどをしてくれています。
のんびり屋の高二のつくしがやっと卒業後のことを少し考え始めたり、中二のすぎながよく勉強をするようになったり、小四のかやは相変わらずふざけて笑わせてくれますが、恵方巻のお願いを教えてくれず、どうやら学校でのことを願ったようで、それぞれに世界ができてきていることをじんわり感じています。
心配はなるべくしないように努めていますが、やっぱり心配半分楽しみ半分です。そして、関東出身の私は、やっと初めての恵方巻作りでした。
<からだのーと>
暖かくなり嬉しい春ですが、花粉症やアトピー性皮膚炎でお悩みの方も多い季節。
これは冬の間に溜め込んだ脂が、溶け出す時期だからです。
たくさん溜まっていると、肝臓で浄化しきれず、血中に入り、全身にまわって様々なトラブルを引き起こします。
肝臓は怒りの臓器。肝臓が弱ると怒りっぽくなり、怒ることでも肝臓が弱まります。
お肉やお魚、揚げ物を控え、青菜やよもぎ、よめなを酢味噌和えなど、酸味をきかせて頂くことがお勧めです。
3月20日は、昼と夜の長さが同じになる陰陽調和の春分の日。身の回り、心をすっきりと整え、小豆料理でプチ断食をしてよき節目を迎えたいと思います。
春風が雪だけでなく、世界の冷たくかたまった様々なものも溶かし、軽やかな光に満ちていきますように。
(2021年2月8日記)
■葉根舎
haneya8011@gmail.com
HP:https://www.yamano-haneya.com
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