山の一家*葉根舎「葉根たより」【37】|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家*葉根舎(はねや)の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2020年1月1日号の掲載記事です。
大森梨沙子さんの執筆です。
葉根たより
明けましておめでとうございます。よき新年をお迎えでしょうか。
今年も毎月ひと月遅れになりますが、山の便りをよろしくお願い致します。
<山の大演奏>
霜月、紅葉がとても美しいものでした。葉を落とす前の色の変化、葉っぱへ様々な想いを馳せてしまいます。車に乗っていても何度も停めては見惚れ、いつもの山を下るのに何倍も時間がかかってしまうほどでした。
師走は「橘始黄(たちばなはじめてきばむ)」「閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)」「熊蟄穴(くまあなにこもる)」
柚子などが黄色に色づき始め、冬気強まり万物みな閉じふさがり、熊が冬眠する頃。ゆずぽん作りなどをしなければとか、熊が冬眠したら山の散歩が安心だな、などと思います。
十二月七日「大雪」の前日には積雪があり、暖冬でもやはり暦通りで感心してしまいます。
<冬支度>
先月から引き続き作物の収穫保存、来春に向けて田畑仕舞いの日々。本格的な雪はまだ先になりそうで気持ちにゆとりができますが、それならば春にヨモギなどの草が綺麗に生えるようにもっと草刈りをしよう、と終わりはないようです。かりん漬け、びわの葉漬け、野草茶作り、枕の中のまこもの葉を替えたりと、暮らしの手仕事もたくさんあります。
<あしもとのそら>
十二月上旬は大阪で、個展をさせていただきました。たくさんの方にお越しいただき、ありがとうございます。
今回は霧雨の夏の日、山にいながらも海の中にいるような感覚になったことから生まれた作品たちを展示しました。
雨の雫の中の海の記憶、光の中の宇宙の記憶、それらが降りそそがれる葉の中に包まれているもの。葉を描きながらも、葉が水や光や石などへ変容していく空間。紡がれ続けていくことの尊さ、そこへ豊かな自然と子供たちの笑顔がつながれてゆくという日々の願いと祈りをのせて描きました。
様々な節目を感じる個展でもあり、この学びを胸にこの冬もじっくり描き、蓄えにしていきたいと思います。
<毎日の光>
私が個展中、家では夫と息子三人の暮らし。ご飯作りなどいつもは私がしていることを男四人で初めはちょっとジャンクに楽しく、だんだん大変にやっていたそうです。餅つきやかりん漬け、びわの葉漬けもしてくれていてびっくり。文句ひとつ言わずに支えてくれてありがたいです。
毎日山から自転車で高校へ通う長男つくしは少したくましくなり、餅つきが上達していたり、次男すぎなは自分から勉強をするようになったり、三男かやはお兄ちゃんたちがいなくても一人で過ごせるようになったり、それぞれの成長。日々を共に過ごし、小さな変化を見つめられることがとても嬉しいです。
<からだのーと>
十二月二十二日は、北半球で一番夜の長い日。かつてローマでは、太陽を祭るお祝いをしていたことがクリスマスの起源になったとか。風邪予防になるかぼちゃを使い、太陽へ感謝をし、クリスマスを過ごせるといいですね。
<大いなる節目>
師走、暦を大切にしている私は年末に向けてというよりも、太陽の節目である冬至に向けて身心も身の周りも整え、新たな季節を迎えたいと感じます。一年を振り返りながら、新しい光を迎えられるように空っぽになってゆくこの時期が大好きです。
この新聞が出る頃には、新たな年を迎えているのですね。みなさんのもとによい光が満ちていますように。
(2019年12月12日記)
■葉根舎
haneya8011@gmail.com
HP:https://www.yamano-haneya.com
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