山の一家＊葉根舎「葉根たより」【33】｜MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家＊葉根舎（はねや）の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2019年9月1日号の掲載記事です。
大森梨沙子さんの執筆です。
葉根たより
カナカナカナ…トラツボミと入れかわるように、蜩の声が響き始めたのは七月中旬。朝五時頃に一斉に鳴き、夏の目覚ましです。
今年は梅雨明けが遅かったけれど、土用に入るとやはりしっかり晴れ、梅や畳を土用干し。梅雨の深い湿度の後の強いお日さまはとてもありがたい。自然のめぐりにそった、昔ながらの仕事にはいつも感服します。私たちもお日さまのめぐみをうけて、しっかり汗を流します。
「涼風至(すずかぜいたる)」「天地始粛(てんちはじめてさむし)」
立秋を迎え、秋を感じさせる涼しい風が吹き、天地の気が粛然として万物があらたまる頃。暑さの中にも過ぎ去る夏を見つけ、楽しんでいきたいです。
<夏土用>
今年はしとしと雨が続き、じゃがいも掘りが七月中旬になってしまいましたがたくさん実っていました。農薬や肥料を使わずに試行錯誤を続ける夫のげんさん、じっくり育つ根っこものが得意なようです。そろそろ秋野菜の種まきもする頃です。
そして、田畑の畦や柵まわりの草刈り。山の中の田畑は草の生えるところがたくさんあり、なかなか終わりが見えません…家の周りも同じく、しかも今年は個展と本の制作で今までにないほど伸び放題になった草たち。刈ると風が通り、やっぱり気持ちがいいなと、刈っていたら、「あ！」やってしまいました。ざっくりと。たくさん刈り、切れ味の落ちていた鎌が笹の茎を滑り、私の左手の人差し指を。
そこに夫がいたら甘えてしまうのですが、いるのは長男つくしと三男かや。つくしには自転車で畑にいるげんを呼びに走ってもらい、かやには小間使いを。まず、軍手をはさみで切り除き、よもぎで血止めするがどんどん血は出るので、何度もよもぎをかえて押さえる。すると、だんだんサラサラの血がどろどろと固まり始めたので、やっと家へ入り、ビワエキスで消毒。げんが帰って来たのは結局一時間経った頃、ほぼ血が止まっていたので、そのまま病院へ行き、六針縫いました。
立秋前の夏土用、陰陽の気が乱れる時なのでやはり気をつけねばなりませんね。
<身体の力に導かれて>
大抵のことは草木で手当てし、出産でも病院へ行かなかったのですが、大きな切り傷はお世話になります。ひどく痛まなければ痛み止めは飲まず、痛みの波による身体の変化を感じます。食を正していれば化膿止めもあまり必要がないように感じます。私は薬を飲み忘れるだけでもありますが、切り傷を修復しようとする身体のお手伝いをするイメージで甘いものやアルコールなどの嗜好品を控え、素食で梅干しなどを頂き、身体が締まり、造血を促すようなものを頂くようにします。
そして、夏休みの子供たちが家事を手伝ってくれるのでとても助かり、あまり不自由を感じずに過ごせました。子供たちの夏のリクエストは海と映画でした。
<からだのーと>
毎年お盆は満月あたり。生き物が産卵する満月は陰陽の結びつきが深まる日なので、盆踊りは出会いの場だったそう。
その満月から新月にかけてはデトックス期。夏野菜はカリウムが多く、排毒をしてくれますが身体を冷やすので、食べ過ぎ、食べ合わせに注意しましょう。
<次に向けて>
おかげさまで、七月の東京個展は無事に終了いたしました。山の暮らしを絵と言葉、写真で綴った本「めぐり草子」もたくさんの方に手にとっていただけました。この学びを大切にし、十二月の大阪個展へ準備してまいります。
「めぐり草子」は引き続き、ホームページからご注文を受け付けています。
みなさんのめぐる季節によりそう一冊になれたら嬉しいです。
（2019年8月11日記）
■葉根舎
haneya8011@gmail.com
HP：https://www.yamano-haneya.com
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MK新聞への「あ～す農場」の連載記事
1998年12月16日号～2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」（208回連載）
2017年1月1日号～2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」（72回連載）
