山の一家*葉根舎「葉根たより」【10】|MK新聞連載記事

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山の一家*葉根舎「葉根たより」【10】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家*葉根舎(はねや)の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2017年10月1日号の掲載記事です。

大森梨沙子さんの執筆です。

葉根たより

リリリリ… ジージー、八月の残暑は厳しかったけれど、九月に入ったとたんに秋らしくなりましたね。
陽ざし、風、香り、音色… すべてが夏とは別世界のようです。

草露白(くさのつゆしろし)、玄鳥去(つばめさる)、蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)
草の葉に白露宿り始め、つばめ去り、虫は地中の中へ。
元気いっぱいの夏も大好きだけれど、そっと冬支度が始まる、やわらかく美しい秋はため息が出るほど染み入るものがあります。
これからまた、そんな秋が味わえると思うと、うれしくてワクワクしてきます。

もし、秋になりもの悲しくなったら、肺と大腸が弱っているのかもしれません。
脂と乳製品のとり過ぎは、肺と大腸のリンパ管が目詰まりをし、排毒が滞ります。
そんな時は、大根、玉ねぎ、ねぎ、しょうがを。
身体と対話をしていると、自然にネギ系を欲したり、気温が下がってきたために、身体を冷やす夏野菜よりもカボチャなど身体を温めるものを欲したり、じっくり火を通したものが欲しくなってくることがよくわかります。
外から感じる季節の変化、身体の中から感じる季節の変化、両方を感じていくと、自然を細胞の全てで味わい尽くし、季節と共に変化していくことができて、とても心地がいいのです。

<月と草>

満月で樹液が先端に行く頃、お茶にする野草をいろいろと摘みました。
陽性な種がつき始め、秋はお茶にするにはぴったりな頃。
ゲンノウショウコ、イノコヅチ、ツユクサ、ヨモギなど。乾燥した晴れ間に干して、かまどで炒って保存をします。
刈らずにとっておいたシロザは、二mほどになっています。
普通は雑草として刈ってしまうので、こんなに大きくなったシロザはまず見かけません(笑)。
だんだん種になる実をつけ始めました。
この実が固くなる前に、摘み取って佃煮にすると小さな実がプチプチとしておいしいのです!
一年ほどもつので、大切な備蓄です。

<一家の母の笑顔>

種から大切に育てている稲、今年はよく実っています。
私は田畑に行くことは少なく、夫のげんが大地と対話しながら、試行錯誤して育てています。
この暮らしを始めた頃は、私も田畑がしたくて一緒に行っていましたが、自然と役割分担をするようになったのです。
私は家事、子育て、げんが作ってくれた作物(お米、お野菜、生はちみつ、天然酵母パンなど)の販売、絵や草木染衣の制作、野草料理教室に集中するようになり、家がうまく回るようになりました。
それと、なにより母の笑顔が一番!それがあると、本当に家族みんなが穏やかになります。
なので、げんも私の笑顔を一番大切にしてくれて、私のやりたいようにさせてくれるし、私も自分が笑顔でいられるような過ごし方を心がけています。
もちろん、みんなが笑顔でいられるように!そんなあたたかいものをひとつひとつの家族が発して、どんど広がる想像をしています。

<獣も食欲の秋!>

そのよく実った田んぼ、この数年間ずっと調子が悪かった大きな田もやっとよく実った!と思ったら、猪さんがよく見ていました…
いく晩も入られて、毎日いろいろ対策をするにもかかわらず、猪の好物のまだ柔らかい稲の実をだいぶ食べられた頃、やっとどこから入ったのかがわかりました。
なんと三面コンクリートの二m弱の壁を上って入ってきていたのです。
そこへ電柵を強化して、やっと食い止めました。

他にも、鹿に小豆の苗をかじられたり、兎に大豆の苗をかじられたり、獣の多い山の中で田畑をする難しさ。
網や電気の柵をしてある畑の中に、さらに大豆の周りにだけ兎用の低い電柵を作ったり。
辛くもなるけれど、きれいな水と空気でみずみずしく育つ喜びをしっかり受け取るように心がけ、山に感謝する毎日です。

<いいこと探し>

秋はイベントも多い季節ですね。
うちも二つの素敵なマルシェへ出店の予定ですが、地域のイベントの準備、当日の仕事も毎週末のようにあります。
すべて必須が区長の大変なところ(普通は年配の方が任されます)…
村に子どもが一軒の我が家はPTAも毎年のお仕事です。
大変だけれど、地域の方にうちの暮らしを知ってもらえる機会になったり、この小さな村を維持していくための人脈ができたりもするので、いいこと探しをしながらなるべく前向きに努めています。

どこに暮らしていても、大変なことはきっとあります。
今自分たちが向き合っているのは、きっと村を作り上げていける大変さだと信じています。
山の小さな村に興味のある方、いらっしゃいましたら声をかけてくださいね!

<心も身体も澄み渡る秋>

季節の変わり目、気温が不安定な時は、計りも温度計も使わずに天然酵母のパンを薪で焼くげん、温度調整に苦戦しています。
それでも、感覚だけを信じて貫く姿にハラハラドキドキ、いつも楽しませてくれます(笑)。
夏にゆるんだ身体がキリッと締まり、澄んだ空気に頭がさえ、感覚が鋭くなる充実の秋。
どうぞ美しい秋をお過ごしください。

(2017年9月11日記)

 

■葉根舎

haneya8011@gmail.com
HP:https://www.yamano-haneya.com

 

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MK新聞への「あ~す農場」の連載記事

1998年12月16日号~2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)

2017年1月1日号~2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」(72回連載)

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