伝統を受け継ぎ新事業にも展開|京都西陣 フクオカ機業
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞で、京都西陣のフクオカ機業を紹介しました。
MK新聞2021年12月1日号の掲載記事です。
伝統を受け継ぎ新事業にも展開
京都で明治35年(1902年)から続く西陣織の織元「フクオカ機業(きぎょう)」。
西陣織とは京都西陣で生産され、絹糸を先に染めてから糸を組合わせ柄を作っていく織物をいう。
同じ西陣織でも織元によってそれぞれの特徴がある中、フクオカ機業は有職文様(ゆうそくもんよう)を専門・得意にしている。
有職文様は平安時代から貴族の装束・調度品に用いられてきた文様。フォーマルで格式が高いとされている。
フクオカ機業では、有職文様の帯や十二単などを作っている。
デザイン、糸染めから製織りまで一貫して制作するため、着物の帯などの完全オーダーメイドにも対応している。その帯は軽く、締めやすいので着心地がよいとの評判だ。
現在、西陣織を織る主流となっているのは、ジャカード機。
ジャカード機では穴の空いた紋紙でたて糸の上げ下げを制御している。
フクオカ機業には、文様をパソコンでデータ変換し、たて糸をコンピュータ制御したものがある。
たて糸が上がったところによこ糸を通して文様を織り上げるのだが、よこ糸を濡らすという工夫をしている。
そうすることで、完成したときに生地に張りが出て着崩れしにくくなるという。
しかし、よこ糸を濡らすと乾くときに幅が縮んでしまうので、それを防ぐために機針(はたばり)を打ってピンと引っ張っておかなければらならい。
また、新しく通すよこ糸が濡れている反面、織り上がったところが乾いていくと段差ができてしまうので、適時織り上げた部分の生地を濡らすことで水分量の差を減らす手間がいる。
特に夏場はすぐに乾いていくので、その調整が難しいようだ。
このように、職人の高い技術によって西陣織の繊細かつ華麗な表現が生み出されてきた。
フクオカ機業は、西陣織の高度な技術の研鑽に努め後世に伝える責務を果たすため、若い従業員を多く雇用し、コロナ禍で茶会等が激減し着物の需要も減る中でも、休業せず職人の腕を落とさないようにしていた。
そして、西陣織の伝統と技術を未来へつなぐため「西陣織は先染めの絹織物」という枠を超え、絹糸以外の素材から時代に合った新しい織物を開発してきた。
その一つが、工業用で使われていたカーボンファイバーの利用だ。
カーボンファイバーは引っ張りに強く、軽いのが特徴。織機にかけるのは難しいとされた素材を工夫して、ジャカード機で様々な文様を織れるようにした。
金糸などと組み合わせて織ることでさらにデザイン性の高いカーボン織物を作ることができた。機能性とデザイン性を兼ね備えた織物は「西陣カーボン」と名付けられ、新しい素材として注目されている。
開発のもう一つが、再生ペットボトルの繊維を使った織物だ。
SDGsの観点からも、いま話題となっている。MK新聞の記者が取材したときも、再生ペットボトル繊維を使った織機は納期に間に合わせるため、休みなくフル稼働していた。
こちらのフクオカ機業では、ジャカード機で帯を織る様子や図案作成、糸染めなど西陣織の職人の手仕事や製品を工房で見ることができる。オーダーメイドの相談はもちろん、見学も受け付けている。
フクオカ機業
有限会社フクオカ機業 女将。
「女性は着物を着るときが一番美しくなります。フクオカ機業では西陣織や着物についてご説明させていただき、制作工程を実際にご覧いただけます。着物で美しくなっていただくお手伝いができればと思います。ぜひ、工房にお越しください。」
■フクオカ機業
京都市上京区浄福寺通五辻東入一色町35番地の7
☎075-441-0235
見学は完全予約制のため公式サイトお問い合わせフォームからお申込みを
公式ホームページ:フクオカ機業
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