フットハットがゆく【328】「記憶力」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく【328】「記憶力」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2021年4月1日号の掲載記事です。

 

記憶力

なんの因果かアルバイト先の上司の命令で国家試験を受けることになってしまい、1ヵ月ほど猛勉強しました。
恥ずかしながら、鉛筆を持って真面目に試験勉強をするというのは大学受験以来でしょうか。
パソコンソフトの中で、「消しゴム機能」というものはよく使いますが、実際の消しゴムを買ったのは本当に何十年ぶりでした。
シャーペンを使うのも超久しぶりで、最近のものはいちいちボタンをカチカチやらなくても、筆圧をかけると自動で芯が出てくる機能があり驚きました。

 

さて、一生懸命勉強はするものの、次の日には大半を忘れるという有様。ネットで調べますと、『記憶力がアップする食べ物5選』というものがありましたので、よしこれを買おう! とスーパーに行きましたが、店に入ると何を買うんだったか忘れてしまっていて…。
もう一度調べなおして、それは『青魚』『バナナ』『海藻類』『チョコレート』『水』ということで、水はまぁ普段から毎日よく飲むとして、他の4品を買って毎日食することにしました。
といっても、僕はネットといえどもすぐには信用しませんから、一応自分の中で検証してみました。青魚…イワシ、ニシン、サンマ、サバなどには、DHAという脳を活発にする物質が多く含まれるということで有名です。
それは分かったとして、では青魚をよく食べる動物はどうなんだ? と思い起こしますに、水族館でショーをするオットセイは、芸が成功するたびにご褒美としてイワシやニシンを与えられています。
芸を覚えられるということは動物の中でも頭がいい、ということになり、それは毎日青魚を食べているからだ、という理屈も通るわけです。

 

バナナには数種類の糖が含まれていて、早く吸収されるものから、ゆっくりと吸収されるものまで。
糖分は脳のエネルギーですから、即効力から持久力までバナナは万能なのだそうです。
バナナが好きな動物といってパッと思いつくのはやはりチンパンジーですかね。
天井から吊るされたバナナに手が届かなくても、イスや棒を使って取れる、つまり動物の中では珍しく道具を使える頭の良さなのです。
ということでバナナを食べると頭が良くなるというのも説得力があります。

 

海藻類がなぜ頭にいいのか忘れましたが、最近白髪がますます増え、額の方も生え際が後退してきましたので、別の意味でも頭に良い、ということで、乾燥ワカメを水で戻して大量に食べる毎日。
僕は酒飲みのため甘いものは苦手で、チョコレートを買って食べる、などという習慣は皆無なのです。
でもチョコレートは糖分が脳の働きを助けるだけではなく、カカオの成分が集中力をアップさせるという優れもの。
これも薬と思ってムシャムシャ食べているうちに、美味しく思うようになってきました。

 

こうして、チンパンジーとオットセイ並みの頭脳を手に入れ、海藻で海馬体を鍛え、チョコを食べ過ぎて鼻血を出しながら、臨む国家試験…結果はいかに?

 

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