フットハットがゆく【284】「むし」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく【284】「むし」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2017年7月1日号の掲載記事です。

 

むし

僕は虫や生き物全般が好きなので、よく人を別の生き物で例えてしまうことがあるのですが、それをやってあまり喜ばれたことはありません。
例えば、2人の女性ダンサーを仕事で撮影した時、顔が小さくて、手足が長くて、腰が折れそうなほど細かったので、「2人はまるでアリとハチみたいやね!」と言ってしまいました。
アリ、ハチというのは生物学的に近い種属で、地球上最もくびれた生き物でもあります。
あまりにくびれすぎて、固形物が食べられないくらいです。
僕が2人をそのくびれクイーンの虫に例えたのは、腰が細くて魅力的だとメチャクチャ褒めているつもりだったのですが…、虫に例えられてあまりいい顔はしていませんでしたね。

 

最もひどかったのは、ある日顔見知りの20歳くらいの可愛い女の子が、黒髪を茶色に染めてきて、そのショートカットの髪とツヤと色を見て、
「チャバネゴキブリみたいやね!」と言ってしまったことです。
僕はその子のことが好きでしたし、茶色の髪もステキでした。だから決して侮辱しようと思ったわけではありません。
僕は仕事柄というか生まれつき、色や形の連想に長けています。
だからその子のその時の髪の色ツヤ形と、チャバネゴキブリの羽根の色ツヤ形とは、本当に見事なほど近似値であったはずで、その例えに僕は自信を持っていましたが、あとで死ぬほど反省しました。
好きな子に、いや、仮に好きでなくても、女性をゴキブリ呼ばわりするとは、アホ、俺のアホ! せめて、高級タマネギのツルツルした皮のようだね、と言えばよかったです。

 

とにかく、僕は人を見てピンとくる生き物が思いついたら、すぐに口に出してしまうのです。
「リスがドングリを頬張った時の顔にそっくりです!」
「完全に和テイスト、犬で言ったら柴犬の顔ですね!」
「前世はカエルかと思うくらいのカエル顔ですね! 蛇が嫌いでしょう?」
僕的には実に言い得て妙、ズバリ的の中心を射抜いた表現で満足げなのですが、言われた方は大概、微妙な顔をしています。本当にすみません。

 

先日、電車に乗って席に座りましたら、向かいの席にバッタにそっくりな人が座りまして、いやぁこれほどバッタに似た人も珍しいなぁ、と思っておりますと…、次の駅から、これほどカマキリに似た人は久々に見るな、という人が乗ってきてバッタの横に座りました。
僕は小さい頃から虫好きで、カマキリも虫かごで飼っていました。カマキリの大好物のバッタをかごに入れると、大きなカマでバッタを瞬時に捕まえ、頭からバリバリと喰ってしまいます。
カマキリは獲物を喰う時、情け容赦ないのです。そんな風景を思い出しながら、今、目の前のバッタ似の人がカマキリ似の人に頭から咬みつかれないか、ヒヤヒヤしながら見ていました。
逃げろ、できれば速く遠くに逃げろ! とバッタ似の人に念を送りましたが、余計なお世話だったですかね。
こんな僕のバカバカしすぎる虫話は、無視してもらった方がいいですね…

 

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