京都洛北の妙満寺「雪の庭」の改修が完成!雪月花三庭苑がついに再興
目次
京都洛北の岩倉にある穴場スポットの妙満寺をご存じでしょうか?
妙満寺はそれほど有名ではありませんが、美しい庭園と雄大な景色がすばらしいお寺です。
庭園の「雪の庭」は、「雪月花三名園」のひとつとして知られる美しい枯山水庭園です。
妙満寺が最も美しいのは、冬です。雪の積もった雪の庭はまさに絶景です。
2022年は、150余年ぶりに雪月花三名園が再興されました。
雪の庭も改修工事が完成し、注目を集めているお寺です。
MKタクシー利用者限定の特典もあります!
2022年7月21日(木)~24日(日)には、MKトラベルの日帰りツアー「【妙満寺】夜のお庭で癒しの時間~雪の庭貸切ライトアップ鑑賞会~」が催行されます。
美しい雪の庭のライトアップと仕出し弁当をご堪能ください。
妙満寺について
妙満寺の位置
妙満寺は、京都洛北の岩倉にあります。京都市内からはひと山超えたところです。
叡山電鉄の木野駅からは歩いて5分程度です。
叡山電鉄沿線から以外では、タクシーでのアクセスがおすすめです。
妙満寺の周囲は静かな住宅街が広がります。
岩倉の観光スポットとして知られる「床もみじ」の実相院門跡からは2kmほどの距離です。
借景庭園の代表として有名な圓通寺(えんつうじ)からは1kmあまりの距離です。
妙満寺の歴史
雪の庭がある妙満寺は、日蓮宗系の顕本法華宗(けんぽんほっけしゅう)の総本山です。
日蓮宗・法華宗の京都十六本山1のひとつであり、かつての洛中法華二十一ヶ寺2のひとつでもあった格式の高い寺院です。
妙満寺には今も広大な寺域に成就院(じょうじゅいん)、大慈院、法光院、正行院と4つの塔頭寺院があります。
妙満寺は、今をさかのぼること600年以上前の1389年(康応元年)に、日什(にちじゅう)によって創建されました。
当初は六条坊門室町(今の五条室町)に創建されましたが、たびたび火災や戦乱に遭い、応永2年(1395年)に綾小路東洞院、応仁元年(1467年)に四条堀川と場所を転々としました。
天文法華の乱では破壊され、妙満寺は一時堺(大阪府)に避難していました。
豊臣秀吉の京都改造に伴い、天正11年(1583年)に寺町二条へと移転し、以来400年近くにわたって妙満寺はこの地に落ち着きました。
今もかつての妙満寺の境内地付近には妙満寺前町という地名が残ります。
妙満寺の南側には本能寺、北側には要法寺(1708年に東山三条に移転)と、日蓮宗系の大寺院が並んでいました。
今の京都市役所本庁舎は本能寺の境内でした。
明治時代の観光ガイドにも、清浄華院(浄華院/しょうじょうけいん)、梨木神社(なしのきじんじゃ)、廬山寺(廬山天台講寺/ろざんじ)、下御霊神社、革堂(こうどう)行願寺、妙満寺、本能寺、と今も寺町通りにある神社仏閣と並んで妙満寺が掲載されています。
第二次世界大戦中の1945年には、妙満寺も建物の強制疎開の対象となり、境内南側にあった成就院をはじめとする塔頭4ヶ院の寺地が失われました。
建物疎開の跡地は戦後も妙満寺には戻らず、押小路通りと京都市役所北庁舎になっています。
戦後の高度経済成長のなかで、妙満寺のある寺町二条は次第にお寺とはそぐわない喧騒な環境となってきました。
妙満寺は静かな地を求めて1968年に寺町二条を離れ、岩倉幡枝の現在地へと移転しました。
今から50年あまり前なので、そう古い話しではありません。
なお、妙満寺が移転した1968年といえば、近隣に京都精華大学の前身である京都精華短期大学が開設された年でもあります。
妙満寺の旧地からは、建物はもちろん礎石なども岩倉へと持ちさられ、大きなお寺があったことを示すものは何も残っていません。
跡地は長らく駐車場・駐輪場などとして使われていましたが、2019年に京都市役所の分庁舎が建設されました。
分庁舎建設に先立った行われた妙満寺跡の発掘調査では、かつての大伽藍の遺構や陶磁器・金属製品などの遺物が大量に出土し、400年にわたる寺町二条での妙満寺の変遷が明らかになりました。
1973年には、インドのブッダガヤ大塔を模した仏舎利大塔が作られました。
日本ではあまり見ない塔のため、妙満寺といえば仏舎利大塔を思い出すという人も多いでしょう。
塔の最上階には妙満寺に古くから伝わる仏舎利が納められており、その他の内部は檀信徒の納骨堂になっています。
トヨタグループの豊田家は菩提寺がかつて妙満寺に属していた縁で、豊田佐吉をはじめ豊田家の方々の分骨も納められています。
本堂前から振り返ると、仏舎利大塔と比叡山が並んで見えます。
京都でも他ではなかなか味わえない雄大な景色です。
安珍清姫の道成寺(どうじょうじ)の鐘
妙満寺に数ある寺宝のなかでも、最も有名なのは梵鐘です。
展示室に安置されている梵鐘は、安珍清姫伝説ゆかりの鐘として知られています。
伝説では、平安時代に熊野参詣に訪れた修験者の安珍が道中で宿泊時、館の主の娘である清姫に一目ぼれされました。
僧の身であり清姫の思いに答えるわけにはいかない安珍は、熊野詣の帰路に必ず迎えに戻ると口約束して旅立ちました。
安珍にだまされたと気づいた清姫は逆上して安珍のあとを追いかけます。途中で怒りのあまりに蛇へと姿を変えてしまいました。
ついに清姫に追いつかれた安珍は、紀伊国・道成寺の釣鐘の中に逃げ込んで清姫をやり過ごそうとします。
しかし蛇と化している清姫に釣鐘ごととぐろ巻きにされてしまい、中の安珍は焼き殺されてしまいました。
清姫も蛇の姿のまま川へと入り、入水自殺しました。
こうして死んだ二人は畜生道へと落ちましたが、道成寺の僧侶が唱える法華経によって成仏しました。
以来、長く失われていた道成寺の梵鐘でしたが、正平14年(1359年)に再び作られました。
しかし、梵鐘が完成後なぜか災厄が続いたため、鐘は捨てられて裏山へと埋納されました。
天正13年(1585年)に天下統一を進める羽柴秀吉による紀州征伐時に道成寺は焼失し、埋められていた梵鐘も掘り出されて持ちされれました。
京都へと運ばれた梵鐘は、1588年に京都の妙満寺へと奉納されました。
そのときの梵鐘が今も妙満寺に伝わっているのです。
2021年10月24日~11月18日には、釣鐘を寄進した逸見万寿丸の生誕七百年祭りにあわせて、道成寺への「お里がえり」が行われました。
実に416年ぶりの里帰りでした。
雪月花三名園のひとつ「雪の庭」
座観式枯山水庭園「雪の庭」
妙満寺の最大の見どころは、何といっても「雪の庭」です。
かつて京都には、「雪の庭」「月の庭」「花の庭」という名庭があり、妙満寺の庭はそのひとつでした。
この3つの名庭は、いずれも俳諧(俳句)の祖として知られる松永貞徳(ていとく)が江戸初期に作庭したと伝えられています。
3つあわせて「雪月花の三名園」と称されてきました。
三名園のうち、現存するのは長らく清水寺成就院の「月の庭」と妙満寺の「雪の庭」だけでした。
前述のとおり、妙満寺は1968年に寺町二条から岩倉へと移転しました。
その際に、石組みをそのまま移し、妙満寺本坊の庭園にしたという枯山水庭園です。
今の雪の庭は奥に見える比叡山を取り込んだ借景庭園にもなっています。
正面やや右奥に比叡山が見えます。岩倉から見る比叡山は「都富士」とも言われるのにふさわしい美しい山容です。
妙満寺が寺町二条にあったころは比叡山が借景であったわけではないでしょう。
岩倉に移転するにあたって、比叡山が借景としてもっとも美しく見えるところを選んで雪の庭を造ったのでしょう。
妙満寺の雪の庭はそれほど広い敷地がある庭園ではありませんが、広く見えます。
奥にいくほど狭くなる台形状の地割になっており、実際よりも奥行きが感じられます。
奥にある石組でできた滝から流れ落ちた水が、三段の滝を経て手前の池に流れ込んでいる様子を表しています。
周囲の白砂は真っ白ですが、池の部分は青石が敷かれています。
一見すると実際に池に見えます。なかなか珍しい抽象性と写実性を兼ね備えた枯山水庭園です。
もっとも、積雪時は色の違いはわかりませんが。
妙満寺の雪の庭は縁側付近で見るのも良いですが、少し下がって見るのもおすすめです。
本坊の柱と屋根により、額縁庭園としても楽しむことができます。雪の庭がまるで一幅の絵画のようです。
前に出たり後ろに下がったり、立ったり座ったり、右へ行ったり左へ行ったりと、いろいろな角度から楽しめる庭園です。
ぜひいろいろな角度から雪の庭を見て、お気に入りの位置を探してみましょう。
今の雪の庭がある岩倉は、京都盆地とは異なる岩倉盆地という小盆地の縁にあります。
岩倉は大原や鞍馬と同じように、京都盆地とは明らかに気候が異なることで知られています。
冬季には、日本海から丹波山地を越えてきた季節風に乗って雪雲がやってきます。
近年は京都盆地で積雪を見ることはまれですが、岩倉は毎年数回程度は積雪します。
「雪の庭」にとっては、岩倉への移転は大正解でした。
雪の庭を作庭した松永貞徳
「雪の庭」は、俳諧(俳句)の祖といわれる松永貞徳によって作庭されました。
松永貞徳は、江戸時代はじめの俳人、歌人です。戦国武将の松永久秀の孫とも伝えられていますが、事実かどうかは疑問視されています。
俳諧の祖として知られ、門下生らの貞門派(ていもんは)は松尾芭蕉以前は俳諧の主流を占めていました。
妙満寺の塔頭のひとつである成就院の住職が松永貞徳の門人であった縁もあり、松永貞徳によって庭園が作られました。
雪の庭は1945年の戦時疎開によって妙満寺塔頭の成就院が壊されたときに失われてしまいました。
移転後に妙満寺本坊の庭園として再現されました。
寛永6年11月25日に、妙満寺を会場として「雪の会」という正式な俳諧興業を行いました。
そのため、俳句発祥の地とも言われています。
11月25日というと、まだ雪には早そうな気もしますあ、新暦(グレゴリオ暦)だと1630年1月8日です3。
ちょうど雪を見ながら俳諧興行ができたのではないでしょうか。
妙満寺では、2019年から松永貞徳の命日である11月15日の前後に「貞徳忌俳句大会」を開催しています。
事前投句と当日句より優秀作品が選ばれ、表彰と講評が行われます。
2022年3月、「雪の庭」改修が完成!
2021年冬から始まった妙満寺「雪の庭」の改修が完成しました。
2022年3月18日(金)からは特別拝観が始まります。
法要とプレス発表
改修円成奉告法要
特別拝観に先立ち、3月17日(木)に関係者及びプレス関係者による「改修円成奉告法要」が妙満寺本堂において執り行われました。
清水寺と北野天満宮からも法要に参列されました。
ご本尊の前で関係者が順番に焼香を行います。
顕本法華宗管長の日仰猊下による奉告文の概要は以下のとおりです。
本日、清水寺・北野天満宮・植芳造園らの関係者臨席のもと、「雪月花の三庭苑」再興および妙満寺「雪の庭」改修の完成を奉告します。
雪月花三庭苑とは、松永貞徳翁の造営と伝わり、これまで大切に守られてきました。
明治期に「花の庭」が失われましたが、2022年に再興を果たし、150年余ぶりに「雪月花の三庭苑」が復興しました。
そこで、関係者一同によるお祝いの法要を行い、加えて「雪の庭」の改修完成を奉告します。
この功徳によって、世界平和・五穀豊穣などに加え、妙満寺、清水寺、北野天満宮が永く栄えることを祈ります。
南無妙法蓮華経
雪の庭のプレス発表会
法要に続いて、妙満寺本坊で雪の庭のプレス発表会が行われました。
妙満寺執事の湯原正純様と植芳造園の井上専務より、雪の庭の歴史と改修にいたった理由、改修のねらいなどを説明いただきました。
MKタクシードライバー向けの勉強会
1時間を超える充実した勉強会
お昼を挟んで、同じく3月17日にMKタクシーの社員向けの勉強会が開催されました。
京都の各営業所より、希望するドライバーら計37名が参加しました。
妙満寺執事の湯原正純様と植芳造園の井上専務より、妙満寺、雪の庭、松永貞徳についてご説明いただきました。
ベテランの観光ドライバーからは次々と質問が飛び、結局予定していた1時間を超えました。
これまで何度も妙満寺を訪れたことがあるドライバーからは、これまでの雪の庭との違いとその理由に関する質問が次々と飛びました。
途中で質問を打ち切る形になりましたが、妙満寺について、雪の庭について非常に熱心に学ばせていただきました。
湯原様、井上様、ありがとうございます。
MKタクシードライバーの声
① 勉強会について
- 本物の庭師さんの話しを直接聞けてとてもわかりやすく勉強になった。
- 庭師の方と直接は話しができたことは、妙満寺に限らず庭園を案内するときに活かせる貴重な経験だった。
- 専門家から話しを聞ける形式は、とても勉強になるとともに大変おもしろかった。
- 庭師さんから庭を見るポイントの説明を聞けて、とても勉強になった。
- 庭を見て何を表現しようとしているのかを、自分なりに読み解けるようになったら、もっと庭園を楽しめると感じた。
- 今の時代に松永貞徳が生きていたらどんな庭を造るか、その思いを描きながら造られたという庭師のお話はとても興味深く、面白かった
- こんなに満足できるとは思わなかった。参加して本当によかった。
- ツボを押さえた説明で、とてもわかりやすかった。
- 庭におりて歩きながら見られるのは良かった。
- 宝物館ではアニメキャラクターも出てきて斬新だった。
- 庭師さんやお寺の方がわかりやすくかつ楽しく語ってもらえ、すべてにおいて満足だった。
- お寺さんの話しを聞けることはあっても、造園屋さんの話しを直接聞ける機会はめったになく、とても新鮮だった。
- そのままお客様に紹介できるエピソードをたくさん教えてもらえた。
- まだ新人なので改修前の雪の庭を知らなかったが、客殿内にある以前の写真と比べたらどこがどう変化したかがよく分かった。
- 雪の庭に限らず、庭の楽しみ方・ルール・考え方を理解できた。
- もっと時間をとってもらえたらよかったと思うくらい楽しかった。
- 質問時間もたっぷりと取られており、大満足。
- こういう勉強会を通じて京都での新たな発見・出逢いのお手伝いが出来ることが今後も楽しみ。
② 雪月花の三庭苑について
- まだ見たことがない「花の庭」「月の庭」もぜひ見てみたい。
- 知識レベルでは雪月花の名園があるということは知っていたが、今回に続いて月の庭と花の庭も見に行きたい。
- 今回の「雪の庭」に続いて「花の庭」と「月の庭」についても、自身で知識を深めていきたい。
- 「花の庭」と「月の庭」はそれぞれ拝見したことあるが、「雪月花」のつながりという視点では見ていなかった。
- 雪月花揃ったことで、観光案内のテーマ・目的にしやすい。
- 三庭苑揃ったことは、お客様におすすめする側としてもとてもありがたい。
- 雪月花の今後のいろんな展開が楽しみ。
- 花の庭と月の庭でも同じような勉強会があったら絶対に参加する。
- 「雪の庭」だけに、雪の積もったときに訪れたい。
- やはり、雪が降った時の事を想像して造られたのでしょうか。是非、雪景色を見てみたいです
- MKタクシー限定でお庭を巡れるという特典はとてもありがたい。お客様におすすめするときに使えると思う。
- 何の構えもなく自然に借景と馴染んだ空間を感じることができた。
- 改修前とは大きく変わったのが一目でわかった。改修して本当に良かったなと思った。
- 改修によってメリハリが付き、美しい枯山水庭園になった。
③ どんな人におすすめ?
- 京都を定期的に訪れる”通”なお客様に、妙満寺を提案したい。
- 庭園に興味ある人をぜひご案内したい。名庭をつなぐコースなど。
- お庭好きな人には、おすすめスポットとして妙満寺を挙げたい。
- 京都観光のリピーターに妙満寺を提案できる。
- 東京からの50代以上のご夫婦がぴったりくる客層。
- 静かに鑑賞できる穴場に連れて欲しいと言われる方には、最適な選択肢だと思います。
- 同じ岩倉エリアで人混みを避けられる庭園が魅力の実相院や圓通寺と組み合わせると良い。
- 縁のある歌舞伎のストーリーを紹介しつつ登場する寺社をめぐったら楽しそう。
- 俳句好きや歌舞伎好き、怪談「獄門島」ファンにもおすすめできる
- 色々なお庭で自ら俳句をつくるというテーマを持って巡ったらどうか。
- 難しいことをわからなくてもぱっと見て良さがわかる枯山水庭園なので、どんな人でも楽しめる。
- 年配層には魅力的だろう。
- 安珍清姫伝説の鐘は、若年層も惹きつけそう。
- お庭だけでなく、仏舎利塔や比叡山の景色、安珍清姫の鐘など、いろんな興味深いストーリーがある。女性やファミリー層にもうまくつなげられるかも。
- 日蓮宗系のお寺を巡るコースなど。
- 季節はサツキツツジと紅葉シーズンがベスト。
- とにかく静かでゆったりと庭を眺めたいという方におすすめできる数少ないお庭のひとつ。
- 最近の話題に敏感な方に紹介したい。
- 京都観光のリピーター、人混みの可能性が少ない場所をご希望の方、俳句や歌舞伎がお好きな方など、洛北エリアの観光で一味違ったお寺とのご縁を繋げられるようおすすめしていきたい。
- 静かな観光地を希望されるお客様には、正伝寺→妙顕寺→だるま寺→雲龍院というコースを案内していたが、今後は正伝寺さんの前に妙満寺さんからスタートするコースを案内したい。
- 勉強会の2日後に実際にお客様を妙満寺を提案してご案内した。お庭に降りて色々な角度から写真を撮っていただき、大満足していただけた。
雪の庭改修について
妙満寺・湯原執事の講話内容
以下は、プレス発表会及びMKタクシー社員勉強会での妙満寺湯原執事のお話の概要です。
妙満寺について
妙満寺と言えば、2つの名物が良く知られています。
今回のテーマである「雪の庭」と、安珍清姫伝説の鐘です。
次いで、大きな仏舎利大塔と山門前のツツジ、大書院の枝垂桜も知られています、
最近、裏山にソメイヨシノを200本植えました。大きく育つころには、桜の名所にもなるでしょう。
顕本法華宗の総本山である妙満寺は、200の末寺があります。
戦前は700の末寺がありましたが、分離や独立によって減りました。
雪月庭の三庭苑について
雪月庭の庭は、松永貞徳が作庭したとされますが、はっきりしない部分もあります。
清水寺成就院の月の庭は、松永貞徳作ではなく小堀遠州作という説もあります。
北野天満宮成就坊の花の庭は、具体的にどのような庭園だったかもはっきりした資料が残っていません。
一方で妙満寺成就院の雪の庭は、松永貞徳と深い縁があったことは確かで、松永貞徳作とみて間違いないであろうと言われています。
松永貞徳について
松永貞徳は「俳諧の祖」として有名です。
今は一般には俳句と言いますが、これは正岡子規の造語です。正岡子規より前は俳諧と言われてきました。
俳諧には俗語という意味があります。それまでの和歌では使ってはならないとされた俗語を取り入れたのがはじまりです。
妙満寺は、松永貞徳が初めて俳諧興行を行ったところです。
松永貞徳にちなんだいろいろな俳句イベントをやっていますが、もっと「俳句の寺」として広げていきたいです。
寺町二条から移った雪の庭
妙満寺は、かつて400年にわたって寺町二条にありました。
移転前の雪の庭を全て図面化して、石組み、築山、木をそのまま移してきました。
雪の庭は、元々は妙満寺塔頭の成就院の庭園でした。
宝物館にある妙満寺の古図を見てもわかるとおり、石組みが主体の箱庭状の庭園でした。
移転後は、境内でも最も格式の高い本坊の庭園となり、一気に庭園の面積が3倍になりました。
今の妙満寺雪の庭のうち、右手前の石組み部分がもとの雪の庭です。
増えた部分には、新しく石や灯籠を置いたり、木を植えたりすることで埋めていました。
しかし、そのときの事情に応じていろんなものを追加していった結果、庭全体が統一感のないものになっていました。
もともとの木が大きくなったり、自然に生えてきた木により雑然とした雰囲気が出ていました。
雪の庭改修のきっかけ
今回の雪の庭改修は、庭園の排水不良改善が当初大きな目的でした。
雨が降ると水たまりができて、なかなか乾かない問題を早急に改善する必要がありました。
あわせて移転後50年以上経過し、前述の統一感のなさを何とかしたいという思いもあり、コロナ禍で拝観者が減っているタイミングを見て、植芝造園と大規模な改修計画の検討を進めていました。
2021年11月に、北野天満宮より同じく松永貞徳ゆかりの「花の庭」が再興されるとの情報が妙満寺に入りました。
それまで妙満寺と北野天満宮との間では、庭の改修や再興に関するして情報を共有しているわけではありませんでした。
偶然にも、花の庭再興と雪の庭改修がかぶったことから、雪月花の三庭苑で連携を進めていくことになりました。
妙満寺では、急ピッチで改修工事を進め、今回の第1期工事完成へと至りました。
今後の雪の庭改修
今回の工事は1期工事という位置づけです。
庭園の大規模改修は、草木が落ち着く冬の間にしかできません。
今後は、2期3期と改修を続け、四季折々の草花が咲く回遊式の庭園にしたいと考えています。
空間のある伸びやかな庭として、雪の庭を心いやせる空間にしたい。
植芳造園・井上専務の講話内容
以下は、プレス発表会及びMKタクシー社員勉強会での植芳造園井上専務の講話内容です。
公式ホームページ:植芳造園
改修前の雪の庭の問題点
雪の庭のメインである石組みは、非常に秀逸なものです。
しかし、石組みが目立たなくなってしまっていました。
岩倉への移転に伴い雪の庭の面積が3倍になったため、空いた空間を埋めたことで、「間」がなくなってしまっていました。
木や
今回の改修は、「引き算」です。
例えば、以前は雪の庭の奥にスレートの屋根が見えてしまっていたため、普通は木を植えないようなところに木が植えられていたため、全体のバランスが崩れてしまっていました。
追加されたものは、時代時代にはやむをえなかったことなのでしょうが、結果として統一感がなくなる原因になっていました。
お庭の常識にはあわない部分は変えてしまう一方で、常識にはあわないかもしれないが、何らかの深い意味があるかもしれない「謎」の部分はそのまま残しています。
本坊内に置いてるかつての写真と改修後の雪の庭を比べると、違いは一目瞭然です。
松永貞徳と雪の庭
今、松永貞徳がいたらここにどういう庭を作ったか、ということに徹底的にこだわりました。
松永貞徳が雪の庭を作った寺町二条と岩倉では環境も景色も異なります。
移転に伴い庭の広さも変わりました。
ただ単に松永貞徳時代の庭を再現するだけではだめなのです、
松永貞徳は、今も多くの歌が残っています。とても素朴な歌の世界です。
歌の世界観を自分のものとして、どこをどうすれば松永貞徳らしいかを考えました。
雪の庭の草花も、歌に出てくるものを中心に植えています。
雪の庭の細部について
雪の庭のメインの石組みは、石組みが作る三角形の角度が急なため、1600年前後に作られたと思われます。
借景となっている背後の山々から流れ出てきた水が、石組みで三段の滝となり、里へと流れ出ていくということを表しています。
庭園鑑賞にあたって、よく「鶴亀」とか「蓬莱」とか言われますが、雪の庭はそういった造りではありません。
こじつければいろいろ説明は可能ですが、そういう視点だけでお庭を見てしまうのはもったいないです。
お庭は見る人が自由に見れば良いと思います。
軒先の地面の部分は、三和土(たたき)と言います。
一軒するとコンクリートかセメントのように見えますが、材料は土と水とにがりだけです。
「たたき」というとおり、ひたすらたたきつけて作ります。
人が歩けば歩くほど味が出てくるのが特徴です。
まだできて1ヶ月ですが、これから三和土の中にある砂利が露出してきたりしてどんどん味が出てきます。
時間をかけていい庭を作っていきたいです。
こだわった蹲(つくばい)
改修前のつくばいは、雪の庭と調和していませんでした。
何とかしたいと妙満寺の境内を探したところ、五条大橋の橋脚だったという石があったので、つくばいとしました。
橋脚が破損したため、継いだ部分のようで、上面には凹部があり、底面凸部があります。
凹部を少しだけ深くけずってそのまま水鉢としました。白い部分がけずった部分です。
新しいつくばいは、清水寺成就院の月の庭の有名な「誰ガ袖手水鉢(たがそでちょうずばち)」にも通じる部分があります。
松永貞徳ごのみのつくばいとすることができました。
今後の雪の庭改修
第1期の改修は引き算でした。ごちゃごちゃした色々なものを取り除きました。
来年以降に行う、第2期第3期の改修は足し算の「色付け」をしていきます。
造園では、「庭の守りをする」という言葉があります。
庭は時間をかけて作っていくものです。妙満寺の雪の庭を、この洛北の地に根付いた庭園にしたいと考えています。
雪の庭改修についてのインタビュー動画を、YouTubeにて公開中!
妙満寺 貫首の大川様、執事の湯原様、植芳造園 専務の井上様にお話を伺い
工事のきっかけや、工事後の変化、これからの雪の庭などについて、お話しいただきました。
また、実際に工事を行っている貴重な様子を、特別に撮影させていただきました。
工事中の映像や、工事前と工事後の美しいお庭の映像も、あわせてお楽しみください。
▼雪の庭改修についてのインタビュー動画は、こちら
雪の庭と「雪月花三庭苑」の特別拝観
3/18~5/8の特別拝観
開催期間 | 2022年3月18日(金)~5月8日(日) |
拝観時間 | 9:00~16:00 |
拝観料 | 大人:500円 小中学生:350円 |
清水寺成就院「月の庭」
開催期間 | 2022年4月29日(金・祝)~5月5日(木・祝) |
拝観時間 | 9:00~16:00 |
拝観料 | 大人:600円 小中学生:300円 |
北野天満宮「花の庭」
開催期間 | 2022年1月28日(金)~3月下旬(開花状況による) |
入苑時間 | 9:00~16:00(15:40受付終了) |
拝観料 | 大人:1,000円 小学生:500円 |
特別拝観限定の切り絵
2022年3月18日(金)~5月8日(日)まで、雪月花の三庭苑」令和再興記念 「雪の庭」特別拝観が行われます。
妙満寺の雪の庭は、清水寺成就院の月の庭と北野天満宮の花の庭と異なり、年間を通して拝観が可能です。
そこで、特別拝観期間のみ限定のオリジナル「切り絵」が授与されます。
雪月花の三庭苑の連携企画として、切り絵の台紙も授与されます。
こちらは1冊500円です。
中を開くと、雪月花の三庭苑のオリジナル切り絵を貼り付けられるようになっています。
切り絵なので、台紙との間に好みの色紙を差し込めるようになっています。
妙満寺のもろもろ
妙満寺の蔵整理
長い歴史を誇り、総本山寺院として多くの寺院を統括してきた妙満寺には、数々の寺宝が眠っています。
重要文化財に指定されている「絹本著色弥勒下生変相図(けんぽんちゃくしょくみろくげしょうへんそうず)」をはじめ、その数約1,000点程度という文化財が収蔵されています。
妙満寺の蔵に収蔵されている文化財は、これまで定期的に収蔵品の状態を確認し、整理することで維持されてきました。
しかし、近年は人手不足によってなかなか鞍瀬入をする時間を作ることができず、手付かずの状態が続いていました。
妙満寺はこんなに広い寺院なのに、常駐されているのは4名程度ということなので、手が回らないのも無理もありません。
それがこの度、妙満寺の近隣にある京都産業大学との縁によって、2021年12月9日に2001年以来20年ぶりの蔵整理が実現しました。
複数回にわたって行われる蔵整理の第1回目の様子を紹介します。
妙満寺の収蔵品の中には、作者やタイトルも分からない品も多数あります。適切に整理するには、広範囲な専門知識が必要です。
相当な時間・労力がかかる作業となるため、複数回に分けて作業をしていきます。
1回目の蔵整理。
なんと!普段は絶対に見ることの出来ない妙満寺の蔵の中に入らせていただきました。
蔵自体のはそれほど広くはなく、1階部分に陶器や小さな仏像が収納され、2階には掛け軸や巻物が多く納められています。
文化財としてはまだ指定を受けていない品がほとんどですが、歴史的価値の高い品もあります。
慎重に慎重に運び出していきます。
妙満寺の蔵整理1回目の今回は、掛け軸を中心に埃払い・防虫剤封入・リスト化準備を行いました。
棚1段分を取り出すだけでもかなりの数量があり、半日がかりの作業となりました。
外箱があるものはひとつひとつ箱を開け、目録と照らし合わせながら番号を振っていきます。
妙満寺の収蔵品は大きさや年代も様々で、保存状態にもバラつきがあります。時間をかけて目録と収蔵品を照合していきます。
なかには虫害にあっていたり、経年劣化によって巻物の紐が切れてしまっているものもあります。
一部が読めなくなってしまっているものもあり、長年保管することの難しさを痛感しました。
通常、文化財の保管・管理を行うのは所蔵者である個人や法人です。
どうしても収蔵品の維持・補修など細かなケアが行き渡らないことも多いようです。
妙満寺の蔵整理2回目は、来年2022年の春頃を予定されています。
まだまだ長い作業が始まったばかりです。
全ての調査が完了するには、数年かかるそうです。
妙満寺の四季
妙満寺と言えば冬の「雪の庭」が有名ですが、冬だけではありません。
春・夏・秋とそれぞれに見どころがたくさんあります。
妙満寺の春は、境内が美しい桜で彩られます。
特に大書院前は桜園として八重紅枝垂桜が多数植栽されています。
まだ若い樹で、毎年どんどん華やかさが増しつつあります。
頭上から傘のように広がる八重紅枝垂桜は見事です。
八重紅枝垂桜の開花はソメイヨシノよりも遅く、4月上旬ごろに見頃を迎えます。
妙満寺の桜シーズンには、ライトアップも行われます。
2021年は3月26日(金)~4月6日(火)に桜園ライトアップ特別拝観が行われました。
幽玄な夜桜を贅沢にゆっくりと味わうことができます。
京都でもこれだけ静かに楽しめる桜のライトアップは他にほとんどありません。
続いて、紅葉の鮮やかな新緑が萌え出てきます。
瑞々しい緑色が妙満寺の境内各所を彩ります。
ゴールデンウィークごろからは妙満寺の山門前のツツジ園が見頃を迎えます。
赤、白、ピンク、紫など色とりどりの美しい平戸ツツジの植え込みが花で埋め尽くされます。
京都市内よりはやや遅く、5月に入ってから見頃を迎えます。
妙満寺境内にはあわせて3,000株のツツジがあり、山門前以外にも境内各所や駐車場などあちこちでツツジが咲きます。
京都でも屈指の隠れたツツジスポットです。
ツツジが終わった直後には、カキツバタが開花します。
5月中旬ごろには山門前の池で清楚なカキツバタが見頃を迎えます。
同じころに睡蓮(スイレン)や黄菖蒲(キショウブ)も見頃を迎えます。
秋には、妙満寺境内の各所で紅葉が真っ赤に色づきます。
紅葉の色づきは京都市内よりはやや早く、11月中旬ごろから見頃を迎えます。
妙満寺の境内から眺める比叡山や、仏舎利大塔との紅葉など、妙満寺ならではの紅葉をゆっくりと楽しむことができます。
そして、秋が終わると妙満寺がもっとも輝く冬を迎えます。
妙満寺の湯原正純執事の講話
2018年6月13日の西五条営業所で行われた全員業務集会において、講話をいただきましたので内容を簡単に紹介します。
「普段の仕事でできる修行」
1389年、現在の烏丸五条あたりに建立された妙満寺は、釈迦と日蓮のもともとの教えを曲げない原理主義を貫いています。
本日は仏教の根本的な教えを紹介します。
人生はとどまるところがない苦しみの連続ですが、その苦しみを生む原因は、快楽を求めてやまない自己の欲望や煩悩です。
欲望や煩悩を断ち減らすことで、苦しみから離れることができ、そのための実践方法として修行があります。
修行といっても特別な難行苦行のことではありません。
実は皆さんの普段の仕事のなかでできるものなのです。
例えば、見返りを求めず他人に施しをする「布施」。
知らない京都に来て迷っている観光客をご案内することも、沿道に投げ捨てられた空き缶をゴミ箱に入れることも、立派な布施という修行になります。
注目!MKタクシー利用者限定特典
2022年3月に妙満寺の雪の庭改修が完成したことに合わせて、新たにMKタクシー利用者限定特典ができました!
MKタクシーの観光貸切タクシーをご利用いただき、観光ドライバーと同伴で妙満寺雪の庭を拝観された方は、雪の庭の中まで降りて庭園内を回遊できます。
妙満寺の雪の庭は、本坊内から眺める庭園です。
しかし、今回の改修で眺めるだけではなく、庭園内を回遊できる形になりました。
改修後も、原則として庭園の鑑賞は本坊建物内からに限られています。
しかし、妙満寺様のご厚意により、MKの観光貸切タクシーご利用者限定で庭園に降りることができるようになりました。
美しく整備された庭園を、本坊内から見られない角度やすぐ近くで見ることができます。
石組みの周りをぐるりと回ることができます。
まだ庭園の改修が完成したばかりで、庭園内の景色は関係者以外は誰も見たことありません。
もちろん、庭園内からも自由に撮影可能です。
これから暖かくなっていくと、庭園はさらに瑞々しく彩られます。
ぜひMKの観光タクシーをご利用いただき、妙満寺の雪の庭を心ゆくまで堪能してください!
おわりに
京都市中心部からやや離れた洛北・岩倉にある妙満寺は観光スポットとしてはあまり知られていません。
しかし、古くから知られた名庭である「雪の庭」や安珍清姫伝説ゆかりの梵鐘、大きな仏舎利大塔など見どころがたくさんあります。
特に境内から見る比叡山の雄大な景色は唯一無二のものといってよいでしょう。
雪の時期はもちろん、四季を通じて美しいお寺です。
訪れる人も少なくゆっくりと時間を過ごすには最適です。
ぜひ、洛北・岩倉の妙満寺に行ってみましょう。
拝観情報
拝観時間 | 境内/6:00~17:00 本坊/9:00~16:00 |
拝観料金 | 境内自由 ※桜とツツジ(4月~5月上旬頃)の期間中、及び紅葉(11月下旬頃)の期間中は、本坊に境内を含めた寺域が拝観料の対象となります。本坊/大人:500円 小・中学生:350円 ※2022年1月6日から3月初旬までの雪の庭改修工事期間は大人:400円 小・中学生300円 |
TEL | 075-791-7171 |
住所 | 京都市左京区岩倉幡枝町91 |
アクセス | 叡山電鉄「木野」より徒歩5分 京都バス「幡枝(妙満寺)」より下車すぐ 京都バス「幡枝」より徒歩3分 |
公式ホームページ:顕本法華宗 総本山 妙満寺
MKトラベルの妙満寺関連ツアー
MKタクシーの旅行部門であるMKトラベルでは、これまで妙満寺を訪れるツアーを催行してきました。
妙満寺はMKトラベルいちおしのお寺です。
【2021年1月】妙満寺新春ツアー(夜間拝観)
【2020年7月】妙満寺ライトアップ(夜間拝観)
【2020年10月】妙満寺観月ツアー(夜間拝観)
【2019年8月】五山送り火特別鑑賞ツアー