泊まれる宮廷文化施設「山科伯爵邸 源鳳院」|衣紋道を伝える

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泊まれる宮廷文化施設「山科伯爵邸 源鳳院」|衣紋道を伝える

京都岡崎にたたずむ源鳳院(げんほういん)は、代々宮中に仕えた公家山科家の旧邸宅。
源鳳院の歴史は、大正時代に山科言綏(ときまさ)伯爵によって建てられ、100年を超えます。
敷地の中心には山科家が結婚式を挙げられたこともある儀式用の大広間があり、母屋や離れなどに趣の異なる各客間を有しています。「伝える」「もてなす」「出会う」をコンセプトに文化講座や宿泊、展示会等、総合的に運営されています。

MK新聞2022年5月1日号掲載記事です。

山科家が伝えてきた「衣紋道」とは

宮廷装束を担い天皇に仕えた山科家

山科家は藤原北家の流れを汲む公家で、後白河法皇より山科新御所とその周辺を所領として賜り、以後代々伝承し、家名の由来となります。
山科家の人々は宮中で大納言・中納言・参議等の要職についたほか、朝廷財政を運営していました。
また、宮廷装束の調進と着装の知識と技術を伝える衣紋道(えもんどう)を家職とし、有識故実をもって歴代天皇の側近として仕えました。令和の御大礼においても、天皇陛下はじめ皇族方に衣紋を奉仕するなど、古来よう続く宮廷装束の伝統を現代に伝えています。

明治天皇の皇后・昭憲皇太后がお召しになった(山科家所蔵)

明治天皇の皇后・昭憲皇太后がお召しになった(山科家所蔵)

 

ミニ講座「束帯は直線的な美しさを ~衣紋道~」

衣紋道とは公家や武家の装束の着装法について、古くから伝えられてきた技術や考え方のことです。
遣唐使が廃止されたことを契機として、我が国の文物、諸制度は従来の唐風の模倣から脱皮して、日本独自の生活習慣や国民性に適合したものに改められていきました。
そのような中で服飾の面においても、これと軌を一にして国風化が進められ、従来の唐風の柔装束(なえしょうぞく)から強装束(こわしょうぞく)へ変化し、鳥羽天皇の代頃には、男性の束帯、女性の唐衣や裳からなるいわゆる十二単(じゅうにひとえ)の現存のスタイルに近いものがつくられるようになります。
このようなサイズの大きい、ゴワゴワした強装束を美しく着装するには、他人の手を借りる必要があり、ここに専門的な着装技術者「衣紋者」が登場することとなりました。

束帯(イメージ)

束帯(イメージ)

衣紋道では、装束を着せる相手を「お方」と呼び、お方に着装することを「衣紋を上げる」といいます。
男性のお方には男性の衣紋者、女性のお方には女性の衣紋者が奉仕します。
男女ともに衣紋者はお方の前と後ろに1名ずつが付き、前は座し、後ろは立って2人1組で衣紋を上げます。

宮中装束の着装は複雑で、束帯の衣紋を覚えるだけでも少なくとも1年ほどかかります。
衣紋を上げるに先立ち、お方の冠や頭髪は整えておきます。衣紋は壁塗りと同じで、下から順にきちんと着けないと、最後だけきちんと着けても崩れてしまいます。
ポイントを押さえて手数を少なくするのがコツで、上手に着せれば美しく、崩れず、お方も苦しくないといいます。

美しい衣紋とは何かといえば、束帯の場合は、袍の身頃や袖をふくらませて立派に大きく見せるのが理想です。
これは、衣紋道が強装束独特の張りのある形や直線的な美しさを追求してきたことによります。
しかし、現在の柔らかい装束でこうした着装をするのは難しく、衣紋者にはさらに高度な技術が求められるようになったともいえます。
一方、女性の十二単の衣紋は、衣を順に紐で結んで重ねていくものです。
手順は単純ですが、美しく着装するには技量と経験が必要です。裾が富士山型で、襟元や裾が均等に少しずつ見えるのが美しいとされます。

源鳳院の庭を案内する女将・加藤由紀子さん

源鳳院の庭を案内する女将・加藤由紀子さん

令和の大礼での衣紋

令和のご大礼でも、衣紋者総勢約180名が「衣紋方」として装束の着装を分担して奉仕しました。
衣紋を上げる所要時間は、束帯・十二単ともお一方あたり20分ほど。
天皇・皇后両陛下や皇族方に衣紋を上げる衣紋者は、着装の問は私語も遠慮し、着装の技術だけでなく、美しい所作も求められます。
「天子南面す」の故事に倣い、お方を北向きにすることも避けるといいます。
美しい装束を纏った人々が参集し、王朝絵巻さながらの雅な光景が見られたご大礼の諸儀式。その背景には、日々技術を学び、継承に努める衣紋方の存在があったのです。

大広間「山科」からの眺め

大広間「山科」からの眺め

山科伯爵邸 源鳳院について

ご利用案内

源鳳院ではご宿泊に合わせて、ご宴席、展覧会や演奏会、お茶会、ウェディング等にご利用いただけます。

ご宿泊

離れ「心月庵(しんげつあん)」定員3名
母屋「衣紋(えもん)」    定員3名
母屋「神楽山(かぐらやま)」 定員4名
母屋「飛白(ひはく)」    定員2名

ご宴席や会合

大広間「山科(やましな)」定員椅子席12~20名

ビジネスミーティング

個室「鳳笙(ほうしょう)」     定員椅子席6名
ライブラリーサロン「美琴(みこと)」定員堀ごたつ席8~12名

営業時間

定休日なし
ご宿泊 7:30~22:30
ご宴席、展覧会等 10:00~22:30
※詳細は要相談

庭園特別公開 10:00~16:00 入場料2,000円(お茶とお菓子付き)

アクセス

地下鉄東西線「蹴上」より徒歩12分

お問合せ・ご予約

ご宿泊 予約サイト一休ドットコム
☎075-752-1110(代表)
メールアドレス
info@genhouin.co.jp

ホームページ

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宮廷文化を学ぶ講演会情報

源鳳院では、宮廷文化を中心とした講演会を行っています。
千年の都で培われた京文化、雅の真髄に迫ります。
美しい庭に囲まれた開放的な大広間にて、悠久の歴史を感じるひと時をお過ごしください。

最新の講演会情報:
公式ホームページでご確認ください。

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