MKタクシーの行灯の変遷|役割などの豆知識と変わり種行灯
目次
10月26日は、MKタクシーの創立記念日です。
開業以来のこれまでの行灯の変遷を振り返ります。
タクシーの上に付いている行灯。点灯していれば空車であることを示します。
行灯は、どこのタクシー会社の車両であるかを示す会社の顔です。
あわせて、期間限定で運行する変わり種の行灯も紹介します。
行灯について
行灯とは
行灯の歴史
タクシーの屋根の上に装着する表示灯を、一般に「行灯(あんどん)」と言います。
タクシーに行灯が付けられるようになったのは、1954年からです。
もともと行灯とは、会社名をアピールしたり、実車空車をわかりやすく識別するために作られたものではありません。
当時は戦後の不安定な社会を背景に、タクシーの売上金を狙ったタクシー強盗が多発していました。
そこで、何かあったときには車外へ緊急事態を知らせる防犯灯として、タクシー行灯が作られたのです。
今も、緊急時にはタクシー行灯は赤色点滅する仕様になっています。
1960年には、すべてのタクシーが行灯を装着することが法令で定められました。
その後、行灯メーカーの努力もあり、多彩な行灯が生まれました。
東京タクシー・ハイヤー協会のサイトが詳しいです。
法令上の根拠
実は、行灯という呼称は正式なものではありません。
屋上灯や屋上表示灯と言うこともありますが、いずれも正式な名称ではありません。
道路運送法上は、正式には単に「表示灯」と言います。
一方で、道路運送車両法上は保安基準1で社名表示灯と呼称されています。
タクシーは、行灯を装着することをタクシー業務適正化特別措置法第45条第1項により、義務付けられています。
同時に、タクシー以外の車両が行灯に類似する装置を付けることは、同第2項により禁止されています。
違反すると、30万円以下の罰金と定められています。
タクシー業務適正化特別措置法第45条第1項
一般乗用旅客自動車運送事業を経営する者は、その事業の用に供する自動車で指定地域内の営業所に配置するものに、国土交通省令で定めるところにより、タクシー又はハイヤーである旨の表示その他の一般乗用旅客自動車運送事業の業務の適正化のために必要と認められる国土交通省令で定める表示事項又は装置を表示し、又は装着しなければならない。
同法施行規則第29条第2項は、「タクシー」または事業者名等を表示することが定められています。
同別表には、「表示灯は自動車の屋根の上に自動車の前後から見易いように装着すること。」と定められています。
タクシー業務適正化特別措置法施行規則第29条第2項
2 法第四十五条第一項の国土交通省令で定める装置は、次の各号に掲げる事項を表示した表示灯とし、別表の例により装着するものとする。
一 タクシー(次号に掲げるものを除く。)にあつては、「タクシー」、「TAXI」、タクシー事業者の名称若しくは記号又はタクシー事業者が所属する団体の名称若しくは記号
二 個人タクシー事業者のタクシーにあつては、「個人」
三 地方運輸局長が指示するタクシーにあつては、その指示する事項
また、同法施行規則第29条第2項第3号の規定に基づき、地方運輸局ごとにさらに細部についての定めが公示されています。
この地方運輸局ごとの公示を、タクシー業界では「表示事項通達」と呼んでいます。
表示事項通達の内容は、地域によって差異があります。
行灯の豆知識
行灯が点灯していたら空車
行灯は、その車両がタクシーであることをわかりやすく示すことが目的です。
あわせて空車時には行灯を点灯させ、実車時には消灯する運用をしています。
利用者が行灯が点灯中のタクシーは手を挙げて止めることができるということが、ひと目でわかります。
ただし、実車空車と行灯点灯の関係については、地域差があります。
たとえば、近畿運輸局では表示事項通達2おいて、「表示灯は、日没から日出までの間においては、空車時(中略)は点灯することとし、その他の場合には消灯すること。 」と明確に定められています。
近畿運輸局以外でも、多くの運輸局では同様に行灯の点灯消灯が定められています。
一方で例えば北海道運輸局では表示事項通達3において、行灯の点灯に関する規定はありません。
結果として、北海道では実車空車を問わず常時行灯している会社が主流です(札幌MKは実車時は消灯)。
同様に中部運輸局と中国運輸局でも行灯の点灯に関する規定はありませんが、名古屋や広島では実車時には消灯するのが一般的です。
一方で、実車時は消灯と明記されている運輸局管内でも、行灯は常時点灯する地域もあるようです。
なぜこのような地域によるローカルルールができたのかは、定かではありません。
運輸局ごとの行灯消灯に関する規制
- 規定なし
北海道運輸局
中部運輸局4
中国運輸局
- 実車時は消灯
九州運輸局
関東運輸局5
近畿運輸局
東北運輸局
沖縄総合事務局
- 実車時は消灯できる(任意)
北陸信越運輸局6
行灯の色で進行方向がわかる
これはMKタクシー限定の豆知識です。
MKタクシーの行灯は、前面と背面で色が異なります。
前面は、MKタクシーのコーポレートカラーでもあるオレンジ色です。
背面は、緑色です。背面もオレンジ色ではないのは、後方への灯火に橙色(オレンジ色)を使用するのは保安基準で禁止されていることが原因です。
ブレーキランプなどの灯火との混同を防ぐという趣旨の規制です。
前後で行灯の色が異なることで、色を見れば進行方向がわかるという副産物が生まれました。
行灯がオレンジ色に点灯していれば、タクシーはこちらを向いています。
近づいているので、手を挙げたら乗車できます。
行灯が緑色に点灯していれば、タクシーは遠ざかっています。
容易に転回が可能な場所ではない限り、乗車は難しいでしょう。
特に夜間の繁華街からMKタクシーに乗車するときは、色による進行方向の違いを知っていれば、捕まえやすくなります。
MKタクシーの行灯の変遷
① 京交信の行灯(1960年~)
MKタクシーは、1960年にミナミタクシーとして始まりました。
同年に行灯の装着が義務化されており、当初から行灯を装着しています。
行灯には、加盟していた団体である京交信(京都交通信販)のマークを使用していました。
MKという呼称が用いられるのは1969年からなので、MKでないのはもちろんのこと、社名のミナミタクシーでもありませんでした。
開業当時はミナミタクシーと言えばむしろ質の悪いタクシーと扱われていたので、自社名を出すメリットがなかったのでしょう。
② ハートの行灯(1972年~)
ミナミタクシーは1963年に桂タクシーを買収しました。
1969年からは、両社の頭文字の”M”と”K”をとって、社内的にMKという呼称を使いはじめました。
タクシー改革に本格的に乗り出した創業者の青木定雄は、乗車拒否は絶対に行わないなど、公共交通機関としての使命を果たそうという「タクシーを市民に返す運動」を始めました。
活動開始に先立ち、1972年4月23日より、全車両のマークをハート型にMKと記した行灯に変更しました。
”MK”ブランドとして売っていこうという決意の表れです。
1977年に合併するまでは、ミナミタクシーと桂タクシーの2社ありましたが、以後は一般にはMKタクシーとして認知されるようになりました。
③ 四角い行灯(1979年~)
1979年9月より、セドリック小型車の導入にあわせて、行灯を変更しました。
オレンジ、ピンクのMKロゴをそのまま用い、サイドからもわかる四角型を採用しました。
すべてがこの四角い行灯に変わったわけではなく、②のハート型の行灯との併用でした。
④ 「値下げ」行灯(1993年~)
お客様第一主義をかかげて行政とも戦いを繰り広げて来たMKタクシーは、ついに1993年11月に全国初の運賃値下げ認可を得ました。
翌12月1日から値下げ運賃での運行がはじまりました。
同時に行灯の台座の部分を「値下げ」と改めました。
⑤ 「値安い」行灯(1996年~)
値下げから一定期間が経過し、他社と比べて10%程度近い運賃をアピールする「値安い」行灯に変更しました。
⑥ LED行灯(2002年~)
2002年8月2日からは、LED行灯を導入しました。
現在にいたるまで使用されている行灯です。
LEDを行灯に導入したのは、日本でも初めてです。
電球や蛍光灯で点灯する従来の行灯と比べて、輝度が高いLEDを用いた行灯は視認性がはるかに優れています。
夜間はかなり遠くからでもMKタクシーを視認できるようになりました。
従来型のように行灯全体が発光するのではなく、MKという文字が発光するため、行灯の点灯の有無だけでなく、MKタクシーであることも容易に識別できるようになりました。
営業面だけでなく、頻繁に交換が必要となる電球や蛍光灯と異なり、長寿命のLEDは行灯のメンテナンスコストを大きく削減することも大きなメリットです。
もちろん、カーバッテリーから供給される電力も電球や蛍光灯よりも少なくて済み、ランニングコストも安価です。
実用新案登録第3068425号
LEDを使用した行灯は、2000年2月16日に実用新案登録を受けました。
「点灯手段を備え、文字、図形等の標識が表されたタクシーの屋上表示灯において、前記点灯手段がLEDであり、前記標識の形に複数のLEDが並べられていることを特徴とする表示灯。」として登録されました。
実用新案登録時の画像は、今のLED行灯とは形状も大きく異なります。
デザインに対する登録ではなく、物品の形状、構造又は組み合わせに係る「考案」に対する登録なので、デザインは直接は関係ありません。
車両よりも寿命が長い行灯
MKタクシーの場合、タクシーで使用している車両の寿命は走行距離等に応じて短いと4年、長くても8年程度です。
車両は数年おきにどんどん入れ替わっていきますが、行灯は使える限りはずっと使い続けます。
行灯の劣化状況には差はありますが、10年以上使える場合も少なくありません。
そのため、MKタクシーの整備工場の奥には、出番を待っている中古の行灯がたくさんあります。
小さいながらも頑丈でエコな部品です。
その他の行灯
京都以外の行灯
東京MK開業時の行灯
1998年3月9日に開業した東京MKは、京都と異なるデザインの行灯を採用しています。
当初はレモンガスとの合弁会社だったため、MKタクシーとレモンガスのロゴを併記する行灯が採用されていました。
流し営業の割合が極めて少ない東京MKでは、必ずしも行灯が目立つ必要はありません。
そのため、行灯の小型化が進みました。
レモンガスとの合弁解消後は、MKタクシーのロゴのみの行灯になっています。
名古屋MKの無料タクシーの行灯
MKグループが名古屋に進出時、名古屋MKの新規免許申請が却下されたために、期間限定で無料タクシーが運行されました。
2001年12月20日~2002年1月31日の運行時は、台座部分に「無料」と記載した行灯が使われました。
期間限定の変わり種行灯
ピンクの行灯
「MKハートウォームタクシー」ではピンクの行灯が使用されました。
京都、東京、大阪、神戸、名古屋、滋賀、福岡、札幌の全国8社で各1台のみ運行されました。
期間限定で3度行われました。コロナ禍が収束すれば、復活もあるかもしれません。
2017年12月21日~2018年2月28日
2019年2月1日~28日
2020年2月1日~29日
白い行灯
「MKホワイトデータクシー」では、白の行灯が使用されました。
京都、大阪、神戸、名古屋、滋賀、福岡、札幌の全国7社で各1台のみ運行されました。
期間限定で2度行われました。コロナ禍が収束すれば、復活もあるかもしれません。
2017年3月13日~14日(京都のみ)
2018年3月7日~18日
青い行灯
「京の海タク」として、京都で3台限定で運行されました。
政府が主催する「海と日本プロジェクトin京都」の一環として行われたコラボ企画です。
運行期間は、2019年7月15日~2019年9月15日(日)でした。
おまけ:架空の行灯
猫の耳とひげをはやした「にゃん灯」。
まじめな話しをすると、外装突起物規制7に抵触するので実現は不可能です。
雪と行灯
MKタクシーの行灯は全面が平たいため、降雪時には雪で行灯が覆われてしまうことがあります。
重みで雪がずり下がると、行灯が2つあるような不思議な光景となることもあります。
タクシーのミニチュア行灯シリーズ
2022年10月13日に、ケンエレファント社よりカプセルトイのタクシーのミニチュア行灯シリーズが発売されました。
5社の中には、MKタクシーも含まれています。
全国のカプセルトイコーナーなどで販売されています。
見かけた方はぜひカプセルトイを回してみてください!
ただし、どの会社の行灯が出るかはわかりません。(全5種類)
ミニチュア行灯は、背面のスイッチを押すとやさしく点灯します。
ぜひ探してみてください。
ネットショップでも購入可能です。
京都のタクシー行灯一覧
MKタクシーも加盟している京都府のタクシー業界団体である、(一社)京都府タクシー協会のホームページには、行灯からタクシー会社を検索できるページがあります。
あんどん(社名表示灯)検索
MKのハートやヤサカの三つ葉、あるいは洛東のぞうさんなどは有名ですが、他にも多彩な行灯があります。
見ているだけでわくわくしませんか?
京都北部のタクシー会社も入っており、京都府ではほとんど見られない行灯もあります。
京都市内のタクシー会社であっても、10両程度のレアな行灯もあります。
ただし、一部の協会非加盟会社は入っていません。
MKタクシーの歴史関連記事
- 道路運送車両の保安基準の細目を定める告示[↩]
- ハイヤー・タクシー車両の表示等に関する取扱いについて[↩]
- 一般乗用旅客自動車運送事業の事業用自動車の表示等に関する取扱い[↩]
- 管轄は福井県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県[↩]
- 管轄は茨城県、千葉県、東京都、神奈川県、埼玉県、群馬県、栃木県、山梨県[↩]
- 管轄は新潟県、富山県、石川県、長野県[↩]
- 道路運送車両の保安基準の細目を定める告知(2007.06.29 )[↩]