電柱すれすれ!祇園祭・山鉾巡行の穴場は巧みな技術が見られる新町通
山鉾巡行といえば、四条通など広い道路を威風堂々と山鉾が巡行するイメージが強いですが、穴場の新町通に入ると一転して細い道を山鉾巡行します。
電柱を巧みによけながら通過する姿を、スリルを味わいながら間近で見られる新町通は穴場です。
ただし、山鉾との距離が近いだけに危険もあります。係員の指示をよく守り、マナーよく見るように心がけましょう。
新町通で山鉾巡行を見る注意点
新町通で見る山鉾巡行は、四条通や御池通、河原町通とは全く異なります。
他の通があわせて4車線以上ある幹線道路なのに対し、新町通は1車線しかない一方通行の道路です。
その分近くて迫力ある山鉾巡行を見られるという利点もありますが、様々な注意が必要です。
穴場の新町通で山鉾巡行を見に行く際には、必ず守ってください。
安全のために指示に従うこと
指示には必ず従う
これは何も新町通に限ったことではありませんが、警察や警備員、山鉾巡行関係者らの指示には必ず従ってください。
歩道もなく路側帯があるだけです。その分間近で山鉾巡行を見られるのが新町通のメリットですが、危険でもあります。
場所によっては山鉾巡行中の新町通には通行規制もかかっています。
例えば新町通の御池通~姉小路通間は山鉾巡行中立入禁止になっています。
その他ロープで立入禁止になっていたり、一方通行になっていたりする箇所があちこちにあります。
充分に気を付けてください。
錯綜する現場では自己責任も必要
1つ困ったことは、警察や警備員、山鉾巡行関係者が相反する指示をする場合がある点です。
原則通り警察の指示か、山鉾の動きを知り尽くした山鉾巡行関係者の指示か、毎年新町通で警備を担当しているベテランの警備員か。
せまい新町通では現場も錯綜しがちです。いったいどの指示に従うべきかは自己判断です。
新町通で山鉾巡行を見る際には、一種の自己責任が必要とされる点には注意してください。
場所とりマナーに注意
車道と区切られていない路側帯から観覧する新町通
四条通などでは、山鉾巡行観覧者の後方が歩行者用の通路になっています。
あとで来た人は必然的に観覧者の列に後方から加わることになります。
早い時間から場所取りをすると、前の最も見やすい位置を確保できます。
一方で新町通の観覧場所は路側帯です。路側帯と車道にロープが張られているわけでもなく、山鉾巡行観覧者が後方で前方を歩行者が通る形になります。
あとで来た人が何も考えずに観覧者の列に入ろうとすると、新町通では最前列に来てしまいます。
何も悪気がない行動ですが、これが新町通での山鉾巡行観覧にあたっては大顰蹙の行動です。
マナーを守って後方に回る
新町通でも山鉾巡行観賞のベストポジションは、山鉾が来る1時間も2時間も前から来て場所取りをしています。
あとから来た人が見やすい最前列に入ると大顰蹙を受けます。悪気はなくても結果的には最低な割り込み行為なので当然です。
新町通で山鉾巡行観覧者の列に入る場合は、必ず前列の人にちょっとよけてもらって最後列に入るようにしてください。
気付かずうっかり最前列に入り、周りからのブーイングを受ける人を良く見かけます。しかし何も言われずにひたすら冷たい視線を浴びせかけられることもあるでしょう。
後方に入るスペースがない場合は、新町通での山鉾巡行見学は諦めましょう。
新町通では配慮と譲り合いの心を忘れないようにしましょう。
御池~綾小路間は立入禁止
新町通でも、最も北側の御池~綾小路間は路側帯も含めて一般は立入禁止となっています。
新町綾小路で微妙な食い違いがあるために細かい方向転換が必要なため危険性が高いのと、にもかかわらず御池通での辻回しも見える位置のために人気が高いためです。
警察官と警備員によって一般の立ち入りは完全ブロックされています。
新町通と山鉾巡行の歴史
山鉾巡行の経路は、よく知られているとおり何度も変遷がありました。
かつては新町通を通る山鉾は限られていました。
の山鉾巡行の経路は以下のとおりです。
~1955年
前祭
巡行路:四条通→寺町通→松原通
長刀鉾、月鉾、放下鉾、菊水鉾、岩戸山、船鉾が新町通の松原~四条間を北に巡行
後祭
巡行路:三条通→寺町通→四条通
北観音山、南観音山が新町通の四条~蛸薬師間を北に巡行
1956年~1965年
前祭
巡行路:四条通→寺町通(1961年からは河原町通)→御池通
全ての鉾と曳山が新町通の御池~四条間を南に巡行
後祭:変更なし
1966年~2013年
後祭が前祭に合同
全ての鉾と曳山が新町通の御池~四条間を南に巡行
当初は舁山は新町通を通らず烏丸通を南行していたが、1977年から新町通経由に変更
2014年~
前祭
全ての山鉾が新町御池から新町通を南に巡行
後祭
北観音山、南観音山、大船鉾、鷹山が新町通を北に巡行
穴場の新町三条を巧みに通る山鉾巡行
定番の山鉾巡行は見飽きた、目の前を動く山鉾巡行が見たい、山鉾巡行のスリルを味わいたい、何時間も前から山鉾巡行の場所取りはごめんだ、という方にお勧めなのが、穴場の新町通での山鉾巡行観賞です。
穴場の新町通は、四条通から時計回りに進む前祭の山鉾巡行では、最後尾に位置します。
厳密に言うと、山鉾巡行は新町御池で解散という扱いになりますが、新町通でもお囃子の演奏なども変わらず続けられます。
御池通を左折して穴場である新町通を南下し、四条新町到着後、山鉾巡行を終えた各山鉾は元の位置へと戻ります。
舁山の一部は姉小路通などで東に左折し、四条通までは南下しません。
この間の新町通りの南下が山鉾巡行見物の穴場なんです。
かつての山鉾巡行は、長刀鉾と函谷鉾は烏丸通を経由し、鶏鉾は室町通を経由し、月鉾、放下鉾、岩戸山、船鉾だけが新町通を経由していました。
しかし、電線架設により1897年よりすべての山鉾が新町通を経由するようになりました。
なお、7月24日に行われる後祭の祇園祭では、山鉾巡行は逆の時計回りに行われます。
山鉾町から新町御池まで出る間と、四条新町から山鉾町へと戻るところを見ることができます。
新町三条上ルの穴場スポット
山鉾巡行のルート上でも穴場のためそんなに混み合わないので、四条烏丸あたりで山鉾巡行の出発が終わるのを見届けてから移動しても十分です。
しかし最近は山鉾巡行の混雑が増してきた気もしますので、穴場では早め早めの場所取りをおすすめします。
なお、舁き山の孟宗山と山伏山、占出山は姉小路で左折して室町通を経由して戻るため、山鉾巡行で新町三条には現れません。
新町通で全ての山鉾を見る場合、新町姉小路で山鉾巡行を見る必要があります(御池通~姉小路通間は立入禁止)。
新町通では、帰路の関係などで山鉾巡行の順番通りには来ません。
辻回しに時間がかかる鉾や曳山よりも舁山や傘鉾が先に来る場合もあります。
また戻る位置の関係で山鉾巡行の最後尾が放下鉾になります。
山鉾巡行の先頭を行く「長刀鉾」
重量:11.10トン※
※山鉾本体だけではなく、懸装品や囃子方・屋根方を含めた総重量。
ユネスコ無形文化遺産登録の手続きを行うために、2008年に河原町御池で実測された。
山鉾巡行の先頭を切り、「くじ取らず」の長刀鉾(なぎなたほこ)が穴場の新町通を近づいてきました。
長刀鉾が常に先頭であるのは、最も格式高い山鉾として扱われていることもありますが、単純に最も東側に位置する山鉾だという事情もあります。
山鉾巡行が進む四条通は、もともと今のような広い通りではありませんでした。
後方から来た大きな鉾や曳山が長刀鉾の前に出るのは難しかったのでしょう。
実際、長刀鉾の次のくじ取らずは山鉾巡行5番目固定の函谷鉾ですが、長刀鉾に次いで東に位置する鉾です。
とはいえ、同じくくじ取らずで22番目固定の岩戸山と23番目固定の船鉾は位置関係が入れ替わっており、必ず山鉾巡行のどこかで追い抜きが必要になっています。
今は往路の四条新町で岩戸山が船鉾を追い抜いています。
後祭でも大船鉾はくじ取らずの最後尾のように、船鉾は最後尾が指定席です。
山鉾巡行の観客は新町通の白線からさらに一歩内側に入るよう指示されます。
細い一方通行の新町通は、少しでも前も出ると山鉾巡行の曳き方にあたってしまいそうです。
新町通は穴場なのでそれほど人が多くはないとはいえ、狭いので収容人数自体が限られています。
山鉾巡行の直前に到着しても、交差点で止められて新町通には入れないのでご注意を。
山鉾が穴場の新町通両側の電柱ギリギリを通過します。
電柱の配置が山鉾巡行に配慮されていないのにも理由があります。
全ての山鉾が新町通を通るようになったのは。山鉾巡行の解散が新町御池となった1977年と意外と新しいのです。
山鉾巡行のためとはいえ、一度作ってしまった電信柱を簡単には動かせず、道路を横断する電線をなくすだけで精一杯だったのでしょう。
だからこそ今のような山鉾巡行の穴場ができました。
かつては寺町通や松原通などの新町通と同じくらいの通りを山鉾巡行していたので、古くから山鉾巡行の技術が伝承されてきたのでしょう。
長い歴史を誇る祇園祭の山鉾巡行ですが、今のように山鉾巡行が広い道路を進むようになってまだ数十年です。
順路変更にあたっては、信仰か観光かで大きな議論となりました。増え続ける観光客を前に、安全面での限界に達していたため、段階的に今の経路へと変更されました。
経路変更により山鉾巡行が容易となり、巡行距離はやや長くなったにもかかわらず、時間は2~3時間も短縮されました。
以前は途中に昼食休憩も設けられていましたが、今は休憩なしに一気に巡行します。
今では信じられませんが、かつては寺町松原で辻回しが行われていたというから驚きです。
本当の山鉾巡行が見られるのが新町通なんです。
ただ方向転換のために何度も辻回しを行う必要があり、山鉾巡行は今より大幅に時間がかかっていました。
なお新町通は電線地下化が検討されており、遠からず今のような山鉾巡行は見られなくなるかもしれません。
新町通山鉾巡行の穴場なのも今のうちかもしれません。
穴場の新町通を山鉾巡行中、屋根方は足の裏で巧みに電線を押しのけています。
どんなに巧みに操縦しても、細い新町通ではこうしないと山鉾巡行は通過不可能です。
かつては山鉾巡行にこの大変な仕事を新町通だけでなく、松原通や寺町通でもしなければなりませんでした。
屋根方は、山鉾建てでは天井や床の組み立てを担当する大工方です。本職も原則として大工さんです。
大工方を含め、山鉾を建てて動かすことを担当とする作事方は、山鉾町の住民ではありません。
基本的には大工や鳶職などを本職とする方々が、山鉾保存会から仕事を請け負う形で参加しています。
いかにプロ集団とはいえ、大工仕事で山鉾巡行のような仕事をすることはめったにないでしょう。
毎年1回だけの腕の見せ所なのです。
それだけに、3年ぶりに山鉾巡行が行われる2022年は大変だったことでしょう。
後述するように山鉾巡行での車方の巧みな技術と、縄の引っ張る方向と強さで進路を調整し、山鉾は止まったり進んだりを繰り返します。
穴場の新町通を山鉾巡行の先頭を行く長刀鉾が無事通過に成功しました。
華麗に通過する「函谷鉾」
重量:11.39トン
舁き山の山伏山、白楽天山、孟宗山に続いて、くじ取らずで山鉾巡行の5番目を務める函谷鉾(かんこほこ)。
前祭りの山鉾巡行は、鉾、山、山、山、鉾、山、山、山、鉾、山、山、山、鉾、山、山、山、鉾、山、山、山、鉾、鉾、鉾のリズムで固定されています。
なお、上記の鉾には曳山(岩戸山)を含み、山には傘鉾を含みます。
電信柱まで数センチのところを華麗に通過。
最も通過困難な山鉾最重量の「月鉾」
重量:11.88トン
太子山、四条傘鉾、占出山に続き、月鉾の登場です。
山鉾中最も重い月鉾(つきほこ)の通過が新町通の山鉾巡行での最大の見せ場です。
大きければ大きいほど通過も困難で、山鉾の細かい操作も難しいはずです。
さあ、どう新町通を通過するか。これこそ山鉾巡行の穴場のみどころ
穴場の新町通の山鉾巡行。屋根方は必死に新町通両側の電柱を手と足で押さえつけています。
2人が穴場の新町通の電柱と格闘し、1人が後方から空隙を確認しつつ山鉾巡行の進行方向を2人に指示し、1人が曳き手に指示するという、4人の山鉾巡行連携プレーです。
11.88トンの巨体の山鉾に対し、たった2人の屋根方の手足の力がどれだけ効果があるのか、と疑問に思うかもしれません。
実は、屋根部分はある程度回転するようになっており、山鉾巡行中に押したり引いたりすることで微調整が可能なようになっているのです。
屋根方は山鉾巡行が一般には穴場とされる新町通に入ると一転、大仕事の連続です。
1910年から菊水鉾が復活する1953年までは、月鉾と鶏鉾はくじ取り式に参加せず、隔年で前後していました。
余裕がある「鶏鉾」
重量:9.24トン
芦刈山、蟷螂山、保昌山に続いて、鶏鉾(にわとりほこ)。
鶏鉾は少し小さめなので余裕をもって山鉾巡行の穴場である新町通の難所通過に成功です。
長い山鉾巡行の最後に位置する穴場の新町通では、皆さんさぞかし疲労がたまっていることでしょう。
夏の炎天下の京都で数時間も野ざらしであれば、動かなくてもへたばります。
2018年にはあまりの暑さに花傘巡行が中止になりました。暑さを理由として山鉾巡行が中止になることはないでしょうが、将来的には開始時間がもっと早まる可能性はあるでしょう。
江戸時代より前は夜明けとともに始まり、11時頃には山鉾巡行は終わっていたそうです。
ひとまわり小ぶりの曳山「岩戸山」
重量:8.24トン
伯牙山、綾傘鉾、霰天神山、菊水鉾、木賊山、郭巨山、油天神山に続いて岩戸山。
岩戸山は、くじ取らずで前祭の山鉾巡行の後ろから2番目を行きます。
ただし、新町通では後述のとおり山鉾巡行の順番が入れ替わるので、後ろから3番目になります。
鉾ではなく曳山なので、これも余裕をもって山鉾巡行の穴場である新町通の通過。
こちらの屋根方は月鉾などとは仕事の中身がずいぶん違うようです。
人の海を進む「船鉾」
重量:8.41トン
くじ取らずで山鉾巡行の最後をつとめる船鉾(ふねほこ)。
新町通では、後ろから2番目を行きます。
かなり細身なので余裕をもって新町通を通過していきます。
いよいよ山鉾巡行も最後を迎えます。
山鉾巡行の最後尾「放下鉾」
重量:10.32トン
新町通の山鉾巡行の最後は放下鉾です。
本来はくじ取らずで後ろから3番目なのですが、新町御池で順番を入れ替えて最後尾を行きます。
山鉾巡行の順番が入れ替わる理由はシンプルです。
放下鉾は四条新町上ルなので、先行してしまうと後ろの山鉾が前に進めなくなってしまいます。
そのため、新町御池で後方の岩戸山と船鉾が先行し、山鉾巡行の最後尾を放下鉾が進みます。
同様に後祭でも南観音山と北観音山の順番入れ替えが行われています。
左の電柱とは30cmほど隙間がありますが、右側の電線に引っかかってしまうため、放下鉾(ほうかほこ)の屋根方が足でぐいっと押しやっています。
地下足袋の裏はゴム製ですから、感電することもないのでしょう。
進路をわずかに左にふったため、今度は新町通り左側で電線の処理中です。
新町通の山鉾巡行では、本当に微妙な操作と上下の緊密な連携が必要です。
電線は触ったくらいで感電することはめったにありませんし、木材はほぼ通電しないので、感電する可能性はほぼゼロです。
おそらく万が一に備えて山鉾巡行の時間帯は通電していないのでしょう。
放下鉾の通過で、山鉾巡行は全ての鉾と曳山が新町通の通過を終えました。
それぞれの山鉾は元の位置へと戻り、すぐに解体作業がはじまります。
山鉾巡行の前祭と後祭の再分離には賛否両論あります。後祭の宵山は人出が少なく、山鉾を維持していくだけの売上が立たないという大きな問題は解決されていません。
しかし、山鉾巡行に限ると成功です。
かつては長時間にわたる山鉾巡行に、後半になると飽きたり暑さにやられた観光客が退出し、最後の方はずいぶんさみしい巡行になっていたものです。
四条室町上ルで衝突寸前の「菊水鉾」
山鉾巡行を終えた菊水鉾(きくすいほこ)が新町通から戻ってきました。
四条通りから室町通りへと北に左折しようとしています。
しかし、このままでは電柱に衝突必至。
「この角度は初めて」とのつぶやきがベテランの曳き手からも聞こえてくる状況に。
一体どうするのか・・・山鉾巡行の観衆にも動揺が走ります。
1927年には、四条新町で月鉾の真木の先端部が折れるという事件が起きたこともあります。
そこで出たのが、伝家の宝刀「バック」です。
曳き手の一部が後ろにまわり、後ろに回した綱を引っ張ります。
自動車と同じ要領で2度の切り返してようやく通過に成功。
見てのとおり両サイドともギリギリです。左の突きだした街灯のすぐ上を屋根が通過します。
菊水鉾にとっては新町通以上の山鉾巡行最大の難所です。
無事通過、と思いきや思わぬ障害が発生。上の榊が思いっきり電柱の変圧器にあたってます。
さあどうする?・・・と見ていると、そのまま強引に突っ切りました。
多分ここは必ず引っかかる部分で、いつものことなんでしょう。
新町通には及びませんが、山鉾巡行の穴場スポットです。
タイミングを合わせる必要はありますが、それほど混雑はしません。
穴場の新町姉小路を巧みに通る山鉾巡行
穴場の新町通で山鉾巡行を見られる北端は姉小路です。
新町三条と同様に新町姉小路も山鉾巡行を楽しめる穴場です。
新町姉小路の穴場スポット
2022年は3年ぶりの山鉾巡行ということに加え、三連休の中日の日曜日であり、好天にも恵まれたため穴場の新町通といえどもかなりの混雑が見込まれました。
四条室町で函谷鉾から最後尾の船鉾までの山鉾が全て出発するのを見終えてから、新町通へと移動しました。
なので、定番スポットの河原町通や御池通での山鉾巡行は全く見られていません。
穴場の新町通に山鉾巡行が現れる1時間半前の10:30に新町姉小路に到着しました。さすがに1時間半も前であれば、場所取りしている人も多くはなく自由に場所を選べました。
同じく穴場である前章の新町三条と比べると、3つの利点があります。
- 全ての山鉾が見られる
舁き山の一部は、姉小路で東へと左折します。新町姉小路は全ての山鉾を見られる最後の地点になります。
- 難所である
新町姉小路は、単純な十字路ではなく東西に食い違いのある交差点です。
細かい方向転換が必要な難所なので、山鉾巡行の技術の粋を堪能できます。
- 辻回しを遠望できる
200メートルほど先の新町御池での辻回しを遠望できます。新町通では辻回しは見られないので、新町姉小路が唯一のスポットです。
ただし、辻回しが見られるのは新町通の西側だけです。前述の東西食い違いがあるため、東側からは全く見えません。
続々と新町通を通過する山鉾
長刀鉾
12時ちょうどに山鉾巡行の先頭を行く長刀鉾が200メートル先の新町御池にあらわれました。
距離はありますが、掛け声とともに何度か辻回しを行い、徐々にこちら向きになるのが見えます。
2022年までは新町通の山鉾巡行でもくじ取らずの長刀鉾が必ず先頭でした。
しかし、2023年からは熱中症対策として、新町御池での待機時間を最小限とするため、山一番の山伏山が先頭となる予定です。
辻回しを終えた長刀鉾が穴場の新町通を南へと下がってきます。
新町通の御池通から姉小路通までの間は一般は一切立入禁止となっています。
新町姉小路では交差点に3メートルほどの食い違いがあります。
1956年に山鉾巡行の経路が松原通から御池通経由に変わるまで、新町姉小路を通過する山鉾はありませんでした。
70年ほど前の経路変更に伴い、新たに誕生した山鉾巡行の難所です。
かぶらでこをつかって細かく方向を調整しながらゆっくりと新町通を長刀鉾が進みます。
左の建物との間もぎりぎりです。細かく調整する技をすぐ近くでじっくりとみられるのが穴場の新町通です。
すぐ目の前を長刀鉾が「エンヤラヤー」の掛け声で通過していきます。
こんな近距離で見られるのは穴場の新町通ならではです。
新町通の近隣住民はクーラーの効いた建物内から観覧中です。
近くなので会話も聞こえてきますが、毎年友人たちを招いて山鉾巡行を観覧しているようです。
うらやましいですね。新町通沿いのホテルでは、山鉾巡行を目の前で見られる特別プランなどもあります。
一方で近隣住民は祇園祭期間中、混雑や通行規制で多大な迷惑を受けていることでしょう。
長刀鉾は南へと新町通を下がっていきます。
電信柱スレスレです。あらためて写真で見ると、拳ひとつ分くらいしか隙間がないように見えます。すごい技ですね。
孟宗山
長刀鉾に続いて、2022年の山一番の孟宗山です。
孟宗山は新町通から姉小路通を東へと左折していきます。
姉小路より南の新町通では、孟宗山は見られません。
保昌山
保昌山は舁き山上にも1人が乗り、平井保昌が持つ紅梅や傘が新町通の電線に触れないよう微調整をしながら進みます。
白楽天山
4番目の郭巨山の次は、白楽天山。
山鉾巡行の5番目はくじ取らずの函谷鉾ですが、6番目の白楽天山が函谷鉾が辻回し中に追い抜きました。
新町御池で山鉾巡行は解散という扱いなので、順番は入れ替わる場合があります。
函谷鉾
さらに四条傘鉾、油天神山も先行し、いよいよ函谷鉾の登場です。
函谷鉾の屋根方の足元に注目してください。なんと裸足です。
この厳しい暑さの山鉾巡行で、今も函谷鉾の屋根方は裸足という伝統を守っています。
他の山鉾は原則として地下足袋を着用しています。
函谷鉾の足元では、車方がかぶらでこで方向を微調整しています。
新町綾小路の交差点は、山鉾巡行でも最大の難所のひとつです。
上を見ると、新町通の電信柱すれすれのところを通っています。
ほんの少しのミスで電信柱に衝突してしまいます。
指揮者に従い、車方と屋根方が絶妙な連携プレーを見せてくれます。
有名な辻回しでは屋根方との連携はそれほど必要ではありませんが、新町通では必須です。
この美しい連携プレーを見るならやっぱり新町通です。
函谷鉾が通過後の新町通に目を落とすと、路面のあちこちに木くずが落ちています。
方向転換の都度、車輪が少しづつ削れているのです。
10トンを超える重量の山鉾を操るのはいかに大変なことか。
月鉾
蟷螂山、山伏山が先行したあとに鶏鉾。
姉小路新町からは、新町御池で辻回しをしている光景も遠くに見えます。
上下で声やポーズを駆使しながらコミュニケーションを取り、難しい新町綾小路を余裕をもって通過します。
素晴らしい連携プレーです。
綾傘鉾
霰天神山、木賊山に続いて綾傘鉾。
新町御池で山鉾巡行は解散していますが、新町通でも棒振り囃子を披露してくれます。
鶏鉾
占出山の次には鶏鉾。
鉾の中でも船鉾の除くと最軽量ということもあり、新町綾小路を難なく通過します。
菊水鉾
芦刈山、伯牙山、太子山とすべての舁き山が新町通を通過し終えると、菊水鉾の登場。
この時点で場所取りから3時間ずっと立ちっぱなしのためにかなり疲れてきました。
岩戸山
あと残すところ岩戸山と船鉾です。
しかし、すでにすべての舁き山は通過してしまったため、待ち時間が長くなります。
菊水鉾が通過して25分後に岩戸山がやってきました。
あと最後は船鉾を残すだけですが、まだ新町御池に姿を見せません。
おそらくまた待ち時間が長くなりそうなので、新町通での山鉾巡行観覧を終えて、四条通方面へと移動しました。
岩戸山が通過したのは14時です。1時間半の待ち時間と2時間にわたる山鉾巡行観覧でした。
巨大な鉾をどうやって操縦しているのか
さて、山鉾巡行では10トンを超える巨大な鉾を一体どうやって操縦しているのでしょうか。
山鉾にはハンドルはもちろん、方向を変えるための操縦装置は何もついていません。
つまり、山鉾は直進しかできないはずです。
「かぶらでこ」で進路を微調整
山鉾巡行で曲がるときは、ご存知のとおり「辻まわし」ですが、コースの微調整は「かぶらでこ」という独特の道具を車輪下に挟み込むことで行います。
真ん中の人が持っているのが「かぶらでこ」です。
左のはブレーキに使う車止めの「かけや」です。いつでも山鉾に急ブレーキをかけられるよう、常に車輪のすぐ前を引きずっています。
山鉾が右に曲がるときは、写真のように左前輪の外側と右前輪の内側にかませます。
この操作によって穴場の新町通でも山鉾が直進できるのです。
微調整の必要もなさそうな四条通などでも、路面に傾きがあるため、常に微調整をしなければ山鉾は真っ直ぐは進めません。
山鉾の車輪が少し乗り上げることを利用して進行方向を調整するため、その度に鉾はドスンと山鉾が揺れます。
しかし縄がらみを駆使した柔構造のおかげで、山鉾上部では衝撃はかなり緩和されています。
かぶらでこのかませる深さと回数によって、少しづつ山鉾は方向を変えていきます。
かぶらでこ自体にも、角度の異なる複数の種類があり、山鉾巡行中に使い分けています。
山鉾の車輪にもそれぞれ癖があり、道路のわずかな凸凹や傾斜によっても動き方が異なります。
乾いた路面と濡れた路面でも山鉾の大きく動きが変わるため、特に雨天時の山鉾巡行は難易度があがります。
山鉾の車輪ごとの微妙な癖を把握し、思い通りに山鉾を動かすのは見た目以上に大変なことです。
山鉾の車輪操作を担当するのが、作事方のひとつである車方です。7~9名1組で巧みに鉾を操り山鉾巡行を行います。
車方、大工方、手伝い方と並んで、山鉾を建てて動かすことを担当とする作事方のひとつです。
本職は主に大工で、山鉾町の住民ではありません。
一歩間違えたら山鉾巡行中に車輪に巻き込まれるという危険な役割だけに、経験を積んだ山鉾巡行のプロの技が求められます。
新しく車方になった新人は、最初は水を撒く「水つけ」という役割を担当します。
間近でかぶらでこの扱い方を見ることで、山鉾巡行の車方としての技を学んで行くのです。
巧みなブレーキ・アクセル操作
センチ単位で精密に山鉾巡行するためにもう一つ重要なのが山鉾の速度の調整。
10トンもの巨体のため、山鉾を引くのをやめても慣性の法則でしばらくは進んでしまいます。
山鉾はすぐには止まれないため後方にも綱がついており、後ろからも引くことで巧みに山鉾にブレーキをかけます。
そして車輪止めにあたる「かけや」のタイミングも重要です。
前と後ろの連携プレー、道路と屋根との連携プレーも新町通での山鉾巡行のみどころの一つです。
長刀鉾の車方インタビュー「祇園祭・裏方ひとすじ」
本章は、MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞の1988年7月7日号に掲載された車方インタビュー記事の転載です。
江戸時代より九代目・祇園祭長刀鉾車方として国宝重要無形文化財技術保持者に認定されている堺米造さんへのインタビューをご紹介します。
昔はね、寺町通を南へ下がっていた。寺町四条から。
それで松原通を新町通の方へ行って、新町通から上がって帰ってきたんやね、鉾が。
それが本祭りと言うて、先の祭りやね。
後の祭りもあった。後の祭りは上ったんやね。寺町を。
三条言って、三条からまた新町通を下がって帰ってきた。
私が長刀鉾車方の九代目で、もう55年やっている。車方。
車方というのは今でいう運転手やな。鉾のカジ取り。
鉾というのは必ず癖があるんやね。どっちかに流れよる。
それで車輪にクサビをかませて直進させるわけやね。うん。
辻回しは緊張するね、何回やっても。
また辻回しが車方の腕の見せ所でもあるわな。
あれ、鉾は後輪の方が二寸小さい。
後輪に重心が掛かって回りやすいようになってるんやね。
鉾は釘一本も使うてへん。「縄がらみ」ちゅうて、縄で組んでる。
屋根は受け屋根で、45度ぐらいまで回転できるようにできてる。
民家の家とか避けやすいようになってるわけやね。
車方というのはしんどいことが多い。
雨でカジ舵取りがうまくいかんで、もう少しで電柱に身体がぶつかりかけたこともあった。
とにかく安全にいくように、そればかり願うてる。
祭りだけは性根いれな、でけへんちゅうことやね。
裏方ひとすじで、私は生きてきた。華やかな鉾の上ばかり、皆見てるわな。
それではどうもならん。
裏方のことも知っていただかなあかん。
私はね、鉾を自分のもんにしてる。
表面だけでは絶対だめ。一心同体。
今どき神や仏や言うたら笑われるかもしれんけど、私は私なりの信念があるわな。
現在は保存会の役員をやってる。裏方のプロデューサーやね。
文化財は庶民が子孫に残していく遺産や。誰かが守っていかなあかん。
年寄りが目をつぶったら、若いもんが後継いで守っていかなあかん。
若いもんに口で言うのはたやすいことやけども、口では言えんことをみていってあげなあかんわね。
でも不思議なもんでね、7月17日朝、巡行でしょ。
その日、どんだけどしゃ降りでも、鉾が出る1時間前にはびしゃっと雨がやみよる。
それで、帰ってきたらまた降りよる。
それだけは不思議。うん。
一句
文化財 出したその手で 鉾飾る
おわりに
穴場の新町通では、いつもテレビで見る山鉾巡行とはまた違った姿を見ることができます。
今のように山鉾巡行が広い道路を行くようになったのは戦後のことです。
むしろ新町通の山鉾巡行こそが何百年も続いてきた昔ながらのスタイルなのです。
山鉾巡行の電柱にぶつかりそうになるスリル、それを回避する屋根方や車方らの巧みな技術と連携プレーを間近で味わってみましょう。
近年は穴場の新町通も混雑が増している気もしますので、山鉾巡行の穴場なのは今のうちだけかもしれません。
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