タンザニアとの出会い|MK新聞連載記事

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タンザニアとの出会い|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、フリージャーナリストの加藤勝美氏よりの寄稿記事を掲載しています。
一般社団法人キリマンジャロの会の荒井育恵氏の「タンザニアとの出会い」です。
MK新聞2015年11月1日号の掲載記事です。

タンザニアとの出会い

「さくら女子中学校」の特別棟。図書室、化学室、物理室、生物室となる予定

「さくら女子中学校」の特別棟。図書室、化学室、物理室、生物室となる予定

アフリカの最高峰キリマンジャロを見上げるタンザニア北東部のアルーシャ州。
その中にあるマサイ族の村のひとつ、バンガタ村で女子中学校の開校準備が進んでいます。
マサイ族の女性トミト・フリーダさんが代表となって設立した現地のNGO「さくら・ビジョン・タンザニア」が進めている計画で、日本の外務省や国際協力機構(JICA)のほか、民間からの支援も受けています。
「さくら女子中学校」と名付けられたこの学校は理数系を重視した4年制の全寮制で、一学年は50人。2016年1月に開校予定で、対日交流の拠点にもなります。
敷地の周囲には多くの陽光桜が植えられ、将来は桜の名所となります。

マサイとの出会い

タンザニアを初めて訪れた2011年、私はマサイに出会いました。
インド洋の島・ザンジバルの空港から出迎えの車でロッジに着くと、牛追い棒を手に颯爽と現れたのがスラリと背が高く手足の長いマサイの青年でした。
30年以上前に見た、サバンナに立つマサイ族の写真。
当時は漠然と「勇敢で誇り高いマサイに会ってみたい」と思っていましたが、それが現実となった瞬間でした。

ロッジのオーナーである日本人女性が「東アフリカの先住民族であるマサイには、お金よりも大切にしているものがあります。それは、牛です。彼らは牛さえあれば生きていけるのです。牛乳は食料に、牛の糞は燃料や住居の材料になります」と教えられました。
素晴らしいジャンプ力を発揮するダンスを見せてくれたマサイの青年たち。
そのカッコよさに興奮。ダンスが終わりチップを渡そうとすると「いいよ、いいよ」という“日本人的”なリアクションにまた感激。
温和で紳士的なこのマサイ青年たちは、サバンナから出稼ぎでザンジバルに来ているのでした。

JICA隊員が勤務する学校の近くで会った子どもたち

JICA隊員が勤務する学校の近くで会った子どもたち

 

学校に通えない子ども

翌年はアルーシャのマサイの家族にホームステイしました。
ステイ先の家族は長老のもとに5人の夫人とその子どもたち総勢53人。
山羊ファームに張ったテントに宿泊し、大家族と共に過ごした2泊3日はパラダイスでしたが、ひとつ気になったのは、子どもたちが学校に通っていなかったことです。
近くにあるマサイの小学校に行ってみました。
1クラスしかない薄暗い教室に50人ほどの子どもたち。
しかし、机の上には教科書もノートもありません、学校に教材といえるものが何ひとつないのです。
校長先生は「マサイは牛がたくさんいればリッチだが、最近は気候変動の影響で牛が早く死んでしまう。貧乏なマサイは子どもを学校に通わせることができないのだ」と語っていました。
「子どもが学校に通うのが当然」と思っている日本人の私には衝撃でした。

この経験をもとに始めた調査の過程でフリーダさんをはじめとする多くの人々と知り合い、「さくら・ビジョン・プロジェクト」の日本側の支援窓口となっている「一般社団法人キリマンジャロの会」の活動に参加することにもなりました。

村の小学生&母親と交流。少女の一人は「大統領になりたい」と頼もしい抱負を語る

村の小学生&母親と交流。少女の一人は「大統領になりたい」と頼もしい抱負を語る

 

村の小学校を訪問

マサイに初めて会ってから5年連続してタンザニアを訪れています。
2014年は首都ダルエスサラームの約200㎞西のキンゴルヴィラ村に民泊して、乱開発で疲弊した土地を再生しようと努力している農村の人々の姿を目の当たりにしました。
村の小学校は比較的大規模で、訪問したのは7年生(タンザニアの義務教育は小学校の7年間だけ)のクラスで、在籍者は114人。
日本なら4クラスに分けられる数です。訪問当日の出席は92人。
担任教師によると、欠席者の多くは「働いている」とのことでした。
そこで出会ったのは「将来は大統領に」「技術者になっていろんな機械を作る」「サッカー選手になる」「この国では子どもの権利が守られていない」などと熱く語る子どもたちでした。
2015年は「さくら女子中学校」の建設現場を訪れ、かたちになりつつある学校の姿を確認しながら現地の関係者と交流しました。

建設中の校舎の前で、現地と日本のスタッフと打ち合わせ

建設中の校舎の前で、現地と日本のスタッフと打ち合わせ

 

学校を続けていくために

当然のことながら、学校は校舎を作れば終わりではありません。「どのように維持していくのか」。開校後の運営の方が重要なのは言うまでもありません。
活動は始まったばかりで、これからも長期にわたって続きます。
その一環として、開校後の「さくら女子中学校」を訪問するスタディツアー(一般的な観光ツアーとはひと味違うタンザニア/マサイ族/教育現場などに触れる旅です)も2016年夏からの実施をめざし計画中です。
※ご参考=一般社団法人キリマンジャロの会http://sakura-project.info/

 

MK新聞について

MK新聞とは

「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
MK観光ドライバーによる京都の観光情報、旬の映画や隠れた名店のご紹介、 楽しい読み物から教養になる連載の数々、運輸行政に対するMKの主張などが凝縮されています。
40年以上も発行を続けるMK新聞を、皆さま、どうぞよろしくお願いします。

ホームページからも最新号、バックナンバーを閲覧可能です。

 

フリージャーナリスト・加藤勝美氏について

ペシャワール会北摂大阪。
1937年、秋田市生まれ。大阪市立大学経済学部卒
月刊誌『オール関西』編集部、在阪出版社編集長を経て、1982年からフリー
著書に『MKの奇蹟』(ジャテック出版 1985年)、『MK青木定雄のタクシー革命』(東洋経済新報社 1994年)、『ある少年の夢―稲盛和夫創業の原点』(出版文化社 2004年)、『愛知大学を創った男たち』(2011年 愛知大学)など多数。

MK新聞への連載記事

1985年以来、MK新聞に各種記事を連載中です。

1985年11月7日号~1995年9月10日号 「関西おんな智人抄」(204回連載)
1985年10月10日号~1999年1月1日号 「関西の個性」(39回連載)
1997年1月16日号~3月16日号 「ピョンヤン紀行」(5回連載)
1999年3月1日号~2012年12月1日 「風の行方」(81回連載)
2013年6月1日号~現在 「特定の表題なし」(連載中)

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