自給自足の山里から【203】「わが青春の関西ブント」|MK新聞連載記事

よみもの
自給自足の山里から【203】「わが青春の関西ブント」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、縄文百姓の大森昌也さんらによる「自給自足の山里から」を、1998年12月16日~2016年6月1日まで連載しました。
MK新聞2016年1月1日号の掲載記事です。

大森昌也さんの執筆です。

わが青春の関西ブント

毎日新聞 2015年11月12日(木)夕刊

毎日新聞 2015年11月12日(木)夕刊

ガン再発!

9月末に退院し、稲刈り収穫作業をこなす。
私の退院を待っていたように、幼子を連れて「こんな暮らししたい」と、姫路・島根・京都などから連日来訪。うれしく心躍る。
10月の診療では「別に異常なし」。が、中旬、ケンタから「首のうしろのところ、豆粒くらいのできもの」。
4~5日経つと、げん(次男)が「大きくなっているよ」と…。
11月9日入院。今回は「前立腺肥大」の手術も行う。ガンには、抗ガン剤・放射線を使うという。
正月は、病院で過ごすことになりそう。
見舞いに来た友人の笠原君は「この20年間、ガン再発を放射線で抑えながら元気にやっている者が身近にいる」と励ましてくれた。

ジィちゃん!と指先のトンボに笑う

夕方、学校帰りのみのり(8歳)が「ジィちゃん!」と声をかける。見ると、みのりの小さな指先に、ひょいとトンボが居座っていた。
私なんかやってもなかなかうまくいかないが、昆虫大好きなこの孫は、トンボと心が通じるよう。うらやましい。いつも、ポケットには、クワガタなど手にしている。
将来は、縄文の昆虫博士を夢見ている私。
みのりは、今日はお見舞い、明日は伊丹の昆虫館に行くと大喜びである。

縄文人はイケメン!

見舞いに来ていた娘たちが、新聞記事を見ながら「ユキトそっくりや!」「げんにも」「ケンタ兄や」など、キャッキャ!
記事を見て、私は「こりゃ! お父さんの若い頃や!」と言うと、場がちょっとしらける(笑)。
ふと思う。こりゃ、私の青春をちょっと語っておこう!

我が青春―関西ブント!

関西ブントは、60年安保闘争(岸内閣が打倒された)を社共に代わってひっぱってきたブント(第一次共産主義者同盟)が分裂する中、関西ではなんとかまとまって、関西ブントと名乗った。
①関西で大衆的学生運動を展開し、②62年に「関西労働者学園」を開校。③アメリカのベトナム侵略に加担する日本・日本人を問い、大阪梅田新道で座り込みを続けた。④関西の中小企業労働者を支援、⑤行政地区ならびに地区反戦青年委員会を結成し、⑥共産主義者同盟RG(エル・ゲー、ローテ・ゲバルト「赤い暴力」)を結成! など展開した。
これらに、私は青春をうって関わっていた。
人々の「世直し」の思いに寄り添い、新しい「政治党派」を生み出す戦いでもあった。

関西ブントは、大衆的非暴力主義!

お父さんは、アメリカのベトナム侵略に加担する日本、日本人が許せなかった!
ただひたすら「加担するな!」の思いで、大阪の梅田新道で志を同じくする者と座り込みを続けた。
ベトナムの人々、アメリカ兵氏たち、抗議して焼身自殺した僧たちに思いを馳せて!
やがて、各地区で、地区反戦青年委員会が結成され、67・68年には、梅新の御堂筋を万余の人々がデモ行進した。星火燎原!
これらを領導したのは関西ブントの大衆的非暴力主義であった。

62年に設立された「関西労働者学園」は、哲学者の藤本進治、経済学は竹本信弘、歴史学の仲尾宏、文学は小松左京や詩人・物理学者・労働法・組合運動の前田裕悟、資本主義の柳田健、武田信照ら多彩で、若い労働者の知的好奇心を満たすものであった。
私は、中学を出て大阪にやってきた若者と机を並べて学んだ。
やがて、若者たちは労働のすばらしさ―ただ資本家の搾取を説くだけの社共の労働学園に抗して―を知るとともに、その資本主義生産を支える「犯罪性」も知り、苦闘した。
関西ブントの第一次RGは、若き労働者が、職を辞しての市民社会でのゲリラであった。
それは、“否定の否定の弁証法”の実践でもあった。
「軍を展開するのは、軍事をなくすため」。ゲリラ闘争で勝利した東ティモールのタウル司令官は、私に「元の百姓にかえるつもりだった」とおっしゃったのが、忘れられない。

サベツされ、虐げられる人々とともに!

お父さんは、若い頃、半年牢屋に入れられたことがある。K視庁にパクられ、同房の人に「ここを家と思え」と言われたのが忘れられない。
京都、神戸とブタ箱たらい回し。その間、留置所の頭上が道場で朝からドタンバタンとうるさいなど人権無視に、在日ブラクの若者たちと抗議を繰り返した。
担当は「おかげでみんなが文句言うようになった!」とぼやく。
移送のとき、みんなが「ガンバレ」と鉄格子をにぎって見送ってくれた。感動!! 光を見た!!
サベツされ、労働者でも農民でもない“雑の者”と虐げられつつも、大地とともに縄文の志持って生きてきた山村のブラクの人たちにこそ、“熱と光”があり、この崩壊前夜の社会を立て直す。

あ~す農場

兵庫県朝来市和田山町朝日767

 

MK新聞について

「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
MK観光ドライバーによる京都の観光情報、旬の映画や隠れた名店のご紹介、 楽しい読み物から教養になる連載の数々、運輸行政に対するMKの主張などが凝縮されています。
40年以上も発行を続けるMK新聞を、皆さま、どうぞよろしくお願いします。

ホームページからも最新号、バックナンバーを閲覧可能です。

MK新聞への「あ~す農場」の連載記事

1998年12月16日号~2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)

2017年1月1日号~2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」(72回連載)

この記事が気に入ったらSNSでシェアしよう!

関連記事

まだ知らない京都に出会う、
特別な旅行体験をラインナップ

MKタクシーでは様々な京都旅コンテンツを
ご用意しています。