自給自足の山里から【91】「幼稚園児がやって来た」|MK新聞連載記事

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自給自足の山里から【91】「幼稚園児がやって来た」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、縄文百姓の大森昌也さんらによる「自給自足の山里から」を、1998年12月16日~2016年6月1日まで連載しました。
MK新聞2006年7月16日号の掲載記事です。

大森昌也さんとちえさんの執筆です。

幼稚園児がやって来た

「あっ! やられたぁ!」とあい(16)の悲鳴。玄関の床に白い殻が散乱。青大将が石垣の穴に入ろうとしている。「こらぁ!」と叫ぶと、すーと消えていく。
「キィ、キィ、キィー」と鋭く悲しく鳴く二羽のツバメ。やがて、円を描き青い空へ。「来年やってくるやろかなぁ」とつぶやくのはれい(16)。
「前は猫(くるみ)にやられたが、ヘビにやられるとは」とぼやくと、「くるみは私の寝床で二匹生んだばかり」とあい。烏骨鶏も卵抱いていたがやられた。朝方、「キャアー」とあい・れいの悲鳴。とんで行くと、青大将! 子猫抱いて逃げるあい。
数日後、奴は石垣に二メートルの見事な姿の脱皮を残す。宝塚から来訪の田丸さんにおみやげ。「目の所、コンタクトレンズを忘れたみたい」「すごいわねェ。どうやって皮を脱いだんやろ?」と我が身をねじらせている(笑い)。オゾン層に開いた穴の影響もあってか、カエルが、少ない。
今年の田植えは、6月1日から、二五枚の棚田を二歳から六四歳の老若男女一六人に、大阪から母親二人と五~六歳の子ども九人の総勢三二人。
ユキト(22)の家の前、三〇数年ぶりに復活した田んぼの田植えが最後で、二〇日たっていた。初め植えた田は、田草が生え、田打器まわしての除草、泥と汗にまみれている。

6月9日から11日まで二泊三日で、“大阪のジャングルようちえん”の皆さんがやってきた。
園舎もない、先生もいない、決まったカリキュラムもない、「外遊び」を基本にした母親たちの手づくりようちえん(共同自主保育)で、もう十八年前から「大人の手出し、口出しのない一日中好きなことして遊べる場」として、主に大阪の長居公園で週四日、0歳から年長まで十四人の子どもと大人(当番)七人で活動しているという。
子どもたちは、母親たちと、木橋を渡り、石垣の上を歩き、ニワトリ・豚・山羊・カモらのエサやり、卵採りし、動物たちとふれあい、田植えにも挑戦する。豚糞をバイオガス装置に投入し、液肥を畑に施し、発生したメタンガスで料理。カマドで薪を使って焚き、ニワトリを解体・捌き、畑からネギ・玉ネギ・ジャガイモ採り、チキンカレーの夕食。朝は我がパン工房(くらんぼん)の石窯で焼いた天然酵母パン、昼は自分たちでこねての手打ちうどん。これらを指導するのは、あい・れい・ユキトである。事故もなく、元気に帰阪した。
「子どもたちは伸び伸び。本当の教育って何!? 自主保育のキーワード『自由』『自主性』『見守る』を考え直す機会に恵まれた」「食べるって尊い。帰ってきてから、食べるってことが当たり前でなく、とても貴重で大切になった」「娘は、『たうえ、たのしいー』とパンツ一丁で一生懸命。行って良かった」「この子にとって何物にも代えられない、かけがえのない時間となった」等の感想が届く。
忙しい時期だが、「あい・れい、あとはよろしく」と、ちえ(20)は四月から沖縄に行った。
(以下、ちえの沖縄レポート)

青い海……と言いたかったけど、梅雨の沖縄に来ている。名護から車で一時間で東村高江に着く。
「ヘリポッド反対!!」「命の水」の看板が目にとまる。ヘリポッドって一体何? ここは北部やんばる(山原)、ブロッコリーのような木々が広がり、ひかげヘボも見る、ジャングルのような世界。
「山甌」カフェを営む家族のお世話になる。小さな子どもたちが笑って泣いて、とっても賑やか。スタッフルームがあり、そこは静か、川の流れる音に心落ち着く。なんで沖縄へ来たんだろうか。一つはキューバに似ているから、もう一つは、米軍基地って何か?
アカショウビンの鳴き声、アカヒゲが歩いているのがかわいい。ヤマガメやヤンバルクイナやノグチゲラらひっそりのんびり生きているんだろう。でも山道を走る車にひかれるという。
夜、フトンに入り寝ようと思った時、頭上を騒音!!ヘリコプターが通った。爆弾が落ちてくるんかと思った。こわかった。ヘリポッドが何者か分かった。
ここに一ヵ月いて、基地はいらないは、戦争は絶対ダメに通じ、子どもたちの暮らす村・街に爆弾落とすのが基地と知った。普天間で事故あった時、放射能が漏れたという。
本島の東、フェリーで三〇分、神々の島の久高島へ行った。南風が涼しく気持ちがいい。子どもとお手玉し遊ぶ。村の人にゴーヤちゃんぷるごちそうになる。おいしかった! 島の人が話している言葉は全く分からなかった。地方によると、沖縄の人でも分からないという。すごいなぁ!! 海はすごくきれいだ。昔はもっときれいだったという。四日間いた。「またおいで、お父さんつれてくるんだよ」と言われた。
首里のエコショップの人が、座り込みしている辺野古につれていってくれた。鉄条門があり、監視カメラがあった。いろいろ書いたリボンがいっぱいあった。「ジュゴンとかめが仲良く泳ぐ写真」があった。この海には、ジュゴンがいる、それはうれしいことだ、でも基地が出来たらジュゴンもひとも傷つき、いなくなる。二ヵ月間沖縄にいて、いろいろまたしても学んだ。
家に帰ると田植えは終わっていた。手で植えた稲はやっぱし元気や。

 

あ~す農場

〒669-5238

兵庫県朝来市和田山町朝日767

 

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MK新聞への「あ~す農場」の連載記事

1998年12月16日号~2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)

2017年1月1日号~2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」(72回連載)

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