エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【351】|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、大西信夫さんによる様々な身近な事柄を取り上げたエッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」を前身を含めて1988年5月22日から連載しています。
MK新聞2017年7月1日号の掲載記事です。
本だけ眺めて暮らしたい
朝、配達された新聞を開いて、新築分譲マンションの広告チラシが折り込まれていたら、ちょっとうれしい。
なぜかと言うと、そこには必ず周辺地図が載っているから。
切り取って、ただ眺めて楽しんだり、情報源にしたりしている。また、折りたたんで胸ポケットに入れ、散歩に持って行くのにも都合がいい。
どんな地図も、その範囲や縮尺だけでなく、目的に合わせて何を載せて何を載せないか、作成者が情報を取捨選択したものだ。
運転手向けの道路地図なら、通りの名、信号や一方通行、駐車場などに詳しい。グルメ向けガイドマップなら人気の飲食店やケーキ屋、観光なら神社仏閣やホテル、美術鑑賞が趣味の人向けなら美術館や小さな画廊‥‥という具合に。
でも、意外にないのが日常生活の参考になるような情報が載ったシンプルで見やすい地図。
つまり、マンション広告に掲載されている地図がまさにそれなのだ。
そこに住むかどうかを検討する人の目線で編集された地図がピックアップしているのは、それこそ生活情報であり、公園、銀行、病院、役所、コンビニエンスストアやファミリーレストランなど。なかには「2017夏オープン予定」のスーパーマーケットなんてのまで載ってたりする。
地図の情報というのは取捨選択の「捨」も重要で、汎用的な一般の地図は、ある目的に特化した地図とくらべると不必要な情報が多すぎて、逆にわかりにくい、使いづらいことがある。
マンション広告の地図がありがたくて、「使える」地図であるという、もう一つの理由は、それが、自分が住んでいる地域や行動範囲の地図であるということ。
市販の地図は、都市中心部や観光地は縮尺も大きく、情報も詳しいが、周辺部や郊外の住宅地域は掲載範囲外か、載っていても縮尺が小さかったりする。
一方、マンション広告は建設地を含む地域やその周辺、最寄りの鉄道沿線に配達される新聞に折り込まれることも多い。
なので、市販の地図ではカバーしきれない地域の生活情報に特化した、シンプルで便利な地図として利用できるというわけだ。
少し足を延ばした散歩の途中で立ち寄るコンビニや、お弁当を食べる公園など、いつもと違うコースを開発する際の参考にもなる。
MK新聞について
「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
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MK新聞への大西信夫さんの連載記事
1988年以来、MK新聞に各種記事を連載中です。
1988年5月22日号~1991年11月22日号 「よしゆきの京都の見方」(45回連載)
1990年1月7日号~1992年2月7日 「空車中のひとりごと」(12回連載)
1995年1月22日号~1999年12月1日号 「何を見ても何かを思う」(64回連載)
1996年4月16日号~現在 「本だけ眺めて暮らしたい」(連載中)