自給自足の山里から【165】「あ~す農場に集う人々①」|MK新聞連載記事

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自給自足の山里から【165】「あ~す農場に集う人々①」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、縄文百姓の大森昌也さんらによる「自給自足の山里から」を、1998年12月16日~2016年6月1日まで連載しました。
MK新聞2012年11月1日号の掲載記事です。

大森昌也さんの執筆です。

あ~す農場に集う人々①

稲刈りに、フクシマからヒナンの家族の笑顔とふかい怒り

天高く馬肥ゆ。野に寝ころがって、どこまでも青い空にすいこまれていく。
ホー、ホーと山鳩、チィ、チィと小鳥たち、スイッチョとうまおい、リーンリーンとすずむし、コロコロとこおろぎら、山間をひびかす。幼い孫らは、柴栗を拾っている。実りの秋である。

まわりの農家は、もう稲刈り終わっている。我が農場はじめ村の4軒の百姓は、古老の「山はまだ実ってない稲刈りは、自然じゃない。山の実りと共に頂かにゃ」のことばによって、山野の実りが豊かなころ稲刈りする。
村の百姓たちの共同作業(結)である。そして、祭り。

フクシマから幼い子つれてヒナンしている家族がやってくる。
稲刈りははじめて。不耕起の田んぼは、じるく歩きにくいが、鎌を手に、ギシギシと、稲も痛そう。
「さっと刈らにゃ」と手本を示す。そのうち、ザクッザクッと気持ちよい音をたてて刈っていく。うれしい笑顔が映える。刈った稲を束ね、稲城に架け天日干しする。農薬・化学肥料を使わない稲づくりのお米は、味がありおいしい。

「フクシマでは、百姓の村が、一瞬にして廃村になって」とポツリ。
野鳥・虫らの鳴き声が消え、目のみえない猫とか、耳のないうさぎがみられるという。
人間の犯した罪の深さと、責任をとろうとしない連中への怒りを、家族から聞き感じた。
いつも四季折々来訪の神戸の友田さんが、稲刈りにやってきての“思い”です。

あーす農場と私 友田清司

分校の西の山の稜線近くにお日さんが傾くころ、川端のすすきが輝きを増します。
その上のほうの田んぼには、刈られたばかりの稲の束が稲木にずらーっと並んでいます。
いい眺めです。今年も豊年満作で、刈り入れの一日に仲間に入れてもらいました。

私は1980年より神戸市灘区で小さな学習塾をしています。
小中学生に学校の勉強のフォローをしたり、勉強の楽しさを味わってもらおうといろいろ工夫しています。
国語では、名作を朗読する授業もあり、特に宮沢賢治の童話をよく読んでいます。
生徒たちと宮沢賢治の作品を読んでいくうちに、私自身がどんどんはまっていきました。

1992年には、塾名を『光でできたパイプオルガン』に変えました。
これは、宮沢賢治が花巻農学校の教師を辞めて「ほんとうの百姓」になる決意をしたころに書いた「告別」という詩の最後に出てくることばです。
私は、知人数人と1996年に、生誕100年の宮沢賢治ブームの中で「神戸賢治の学校」というものを設立しました。
そのときの呼びかけに応じてくれた人の中に、大森昌也さんがいました。

私が「あ~す農場」を初めて訪れたのは1999年8月でした。
初めて訪れたときは「何と山奥だなあ」という印象でした。
私自身が都会育ちの都会暮らしをしているからか、あるいは宮沢賢治の童話をたっぷり読んでいたからか、見るものがみんな新鮮で驚きの連続でした。
大森さんに、まず炭焼き小屋を案内してもらいました。
炭焼き小屋に行く途中の道で、確かユキトくんに出会いました。一輪車で薪を運んでいましたが、とても輝いて見えました。

2回目には、妻を連れて行きました。鶏小屋の鶏糞を取って、稲刈りをしたあとの田んぼに撒く作業でした。
腰が痛くなって鶏小屋の裏の草地にごろんとなって、空を見たときの爽快感は今でもはっきり覚えています。

桑の木が道端にあって、私が「へえ、これが桑の木か。あの有名な『赤とんぼ』に出てくる、♪裏の畑の桑の実を小籠に摘んだはいつの日か~に桑の実が出てくるけど、知らなかったわ」と言うと、ちえちゃんが「もう少ししたら実がなるよ。連絡するからよかったら取りに来て」と言って、ほんの数日後に電話をくれました。

次に行ったときに、どうやって取ったらいいのか迷っていると、ちえちゃんがするするするっと桑の木に登り、枝をゆっさゆっさゆっさゆっさと揺らしてくれました。
そしたら、桑の実がばらばらばらっとたくさんたくさん落ちてきて……。

♪裏の道端の桑の木を揺すってくれたはいつの日か~。
(そのころの印象を『賢治百姓真似一笑』と題して、小冊子にまとめています。)

あれから何度、訪問させてもらったでしょう。
50回以上になるかな……。小さかった女の子たちも大きくなって、行動範囲も国際的になりました。ケンタくんが本の小屋「ピノッキオ」を建てました。堀場というところに、五十嵐くんがみんなに手伝ってもらって自分で家を建てました。
次男のげんくんが家で結婚式を挙げました。げんくんもみんなに手伝ってもらって家を建てました。
長男のケンタくんは分校で結婚式を挙げました。奥の家を自分の手で改築しました。
ふたりともすばらしいお嫁さんに来てもらったと思います。
そのあたりのことは、フジテレビ制作のドキュメンタリー『われら百姓家族』のシリーズで紹介されました。
まるでドラマ『北の国から』を現実にしたような光景を次々に見せてもらいました。

これらの個人的感慨とは別に、あ~す農場の自給自足暮らしの試みは、農業の問題や過疎化の問題や原発の問題はもちろんのこと、現代ニッポンの抱えるいろんな分野の問題に大いなるヒントを与えていると思います。
これまでの価値観が根底から揺らいでいる時代に、大地にしっかりと根を下ろした生き方、考え方をすることが、困難であるけれども大切なことだと、あ~す農場に来るたびに痛感します。

 

あ~す農場

兵庫県朝来市和田山町朝日767

 

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MK新聞への「あ~す農場」の連載記事

1998年12月16日号~2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)

2017年1月1日号~2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」(72回連載)

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