山の一家*葉根舎「葉根たより」【12】|MK新聞連載記事

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山の一家*葉根舎「葉根たより」【12】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家*葉根舎(はねや)の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2017年12月1日号の掲載記事です。

大森梨沙子さんの執筆です。

葉根たより

立冬を迎え、紅葉の美しい季節になりました。
ほとんどの花は散り、色づいた葉と実が山を彩っています。
一番に真っ赤になるのは、細長い葉のはぜ。
透明感と深さを併せ持った赤に、毎年うっとりしてしまいます。

「山茶始開(つばきはじめてひらく)」「虹蔵不見(にじかくれてみえず)」「朔風払葉(きたかぜこのはをはらう)」
サザンカ咲き始め、虹が現れなくなり、冷たい北風が木の葉を散らし始めました。
山が冬を迎える準備をしていくように、私たちも冬支度の日々です。

<農の冬支度>

田畑は秋仕舞い。畦(あぜ)の草刈り、水路掃除などで水はけを良くし、畑には落ち葉、もみ殻を入れて来春の準備です。
今年はお米がよくできました!夫のげんさんが日々、田と対話し、水の入れ方、流し方を工夫し続け、やっといい感じになってきたようです。
稲口には浄化作用のあるまこも茸を植えて、山のきれいな水をさらに美しくして稲に行き渡らせています。
毎日かまどでこのお米を炊いているので最高においしく、ありがたいです。
小豆は鹿と兎にかじられてあまり実りませんでしたが、大豆は数年ぶりの豊作!
収穫が大変なので、子供たちの手が大きな手になります。
十月は雨が多く、田や稲城がぐっしょり濡れて、大変な稲刈りでした。
十一月は晴れて、豆類や野草などをお日様の力いっぱいうけて保存したいです。
一年で一番晴れてほしい時期は秋だなあ、と感じます。
お日様がへる冬の前で、よく乾燥する秋、季節の変化は本当によくできていて、いつも感心してしまいます。

<身体も冬支度>

寒くなってくると腎臓と膀胱の働きが衰え、足腰・膝・耳・骨が弱りやすくなります。
身体を冷やすものは控えめに、じっくりと火を通した根菜類・海藻類をいただきましょう。
ちょうど畑には生姜・里芋・ヤーコン・人参・大根などがあり、よくできているものです。
毎日、土鍋でじっくり料理しています。

鍋物もおいしくなってきました。
乾燥には、お水やお茶を飲むよりも、鍋やスープで水分をとる方が吸収しやすいそうです。
内側から季節に対応できる身体にしていきたいですね。

<秋ぐるぐる>

九月の運動会に始まり、毎週末地域のイベントづくしになる秋。
収穫や出荷にも追われ、落ち着いて絵を描く間を持てず、ちょっとイライラ…
そこで、子供たちと五右衛門風呂の壁に絵を描きました!
ちょっとした合間に、と思いつつ、描き出すと止まらなくなり、いつの間にか子供はおらず、夕食の時間に…
今夜はお風呂なし、簡単な夕飯に、なんてことも(笑)
おかげでなかなか素敵なお風呂になりました。

そして、地域のイベントの準備や当番も毎週になると大変なものですが、やはり交流できる機会は貴重なもの。
山の上にあるうちの村は孤立していましたが、区長になったげんさんがこまめに顔を出したり、文化祭に農作物や絵を出品したりしたことで、地域の方がうちの暮らしに興味を抱いてくれたり、作物や絵を気に入って手に取ってくれたりと、嬉しいことも。
気持ちよく動いていれば、ちゃんと巡ってくることを改めて実感しました。
そして、地域の方と深まることは思った以上に心が温かくなり、不思議な感覚になりました。
大地や山も喜んでくれているのかな、なんて思います。

でも、台風で山は毎回、どこかしら痛みます。
道の路肩が崩れたり、畑に土砂が流れ込んだり、家の奥の山が崩れ、車庫に赤土が流れてきたり…
区長が役場に連絡をするとすぐに対応をしてくれ、工事がはじまりますが、山にとって一番いい手当はこれでいいのかな、なんていつも感じます。
小さな私に答えはなかなか出ませんが、ひとつひとつの違和感を見過ごさず、すくい取って心にとめていくことだけはしておきたい、と思います。

<めぐる毎日>

子供たちは少し風邪もひきましたが、感心するほどいつも元気いっぱいです。
長男つくしは、部活帰りはもう真っ暗で、バスを降りると頭に電灯をつけ、手には大きめの鈴を持ち、外灯のない道を歩いて帰ってきます。
三男かやは、雨が続くと「雨と雨雲の日は迎えに来て~」と、甘えモードに。
食いしん坊の次男すぎなは、ごはんのメニューチェックが必ずあります。毎日どんな反応が来るか、ドキドキ(笑)

にぎやかに、あっという間にめぐる季節。
草木が眠る冬は寂しいですが、美しい雪とじっくり絵を描ける時間が楽しみ。
どの季節も愛おしく、残り僅かの今年を感謝いっぱいに味わいつくしたいです。
みなさま、一年間読んでいただきありがとうございました。どうぞよいお年を!

(2017年11月9日記)

■葉根舎

haneya8011@gmail.com
HP:https://www.yamano-haneya.com

 

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MK新聞への「あ~す農場」の連載記事

1998年12月16日号~2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)

2017年1月1日号~2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」(72回連載)

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