山の一家*葉根舎「葉根たより」【1】|MK新聞連載記事

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山の一家*葉根舎「葉根たより」【1】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家*葉根舎(はねや)の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2017年1月1日号の掲載記事です。

大森梨沙子さんの執筆です。

葉根たより

〈はじめまして〉

皆さま、よいお年をお迎えでしょうか。
今年から掲載させていただくことになりました、大森梨紗子と申します。
と言いましても、何度か私の文章を載せていただいたことがあります。
あ~す農場営む義父、大森昌也が「自給自足の里山から」という山のたよりを掲載させていただいておりました。
その中で、何度か私も書かせていただいていたのですが、昨年の3月、義父が光の世界へと旅立ち、未熟ながら私がかわって山の暮らしを綴(つづ)らせていただくこととなりました。

〈わが家のくらし〉

私はあ~す農場の次男げんと結婚し、同じ村に廃材を利用した小さな家を作り、暮らして15年になります。
調理、お風呂、ストーヴは薪エネルギー、3人の息子(三男は自宅にて家族で出産)と山のめぐみをいただきながらの暮らしです。
夫は、無農薬無肥料の田畑、薪窯天然酵母パン、養蜂、山仕事、木工を。
私は草木の絵、野草料理、草木染衣を制作しています。

山とともにある毎日の中で、言葉にはならない自然のことわり、在り方のようなものを感じ続け、少しずつ身になってきているように感じています。
それは、なるべく人の手を入れすぎないようにして作った作物や、大地から力強く生えてくる野草をいただいたり、毎日薪の力で作られたお料理やお風呂をいただいたり、農作業中に大地や木々が発する香りを感じたり、そういう積み重ねの中で身体の細胞の一つ一つが山と響きあい、今の自分があるような感覚です。

埼玉県の街の中で育ち、小さな頃から絵が好きで美大へ進学させていただき、卒業後すぐにこの山へと入りました。
あ~す農場で山の暮らしを体験し、「この山で暮らし、絵を描いていきたい」という直感のまま行動し、未熟さゆえにたくさんの困難もありましたが、やはりあの直感はあるべき場所に導いてくれたのだと感謝しています。
今も自分の小ささにつまづき、失敗ばかりの日々ですが、おかげでより大きな成長をいただいています。

〈山の一家*葉根舎〉

はじめの12年は、「あ~す農場」から生まれた「あさって農園工房」として営み、「山の一家*葉根舎(はねや)」という名に改めました。
草木とのつながりが深くなり、農作物だけでなく、草木の効能を生かした仕事(野草料理、野草原、野草エキス、草木梁、山仕事など)が増えてきたので、草木によりそうような屋号がうかんだのです。
野草は毎年力強く生え、踏まれても元気にのびていきます。そんな野草をいただいて、私も打たれ強くなってきたように感じます。

今、流通している食べ物には、いのちの力が込もっていないものが少なくありません。
「食べる」ということは「いのち」をいただくこと。人間の都合でねじまげられたものでなく、強く美しい生命力を持ったいのちをいただき、大人が美しい心を取り戻し、子どもたちが力強く育っていく世界を願います。
そんな思いでわが家で野草料理教室を開くこともあります。
野草だけでなく、夫が作った無農薬肥料の美しいお米や野菜も使い、マクロビオティックの提唱者である桜沢如一さんの教えに基づいた料理法です。

でも、私にとって最も大切な仕事は絵の制作です。山からいただく力を。
言葉や物を使わずとも伝えられる波動を発するような、草木そのものの力を持ったような絵を生み出したいと、描いています。
そのためには、私自身がもっと草木に近い存在になることだと思い、精進する日々です。

〈義父から受け継いだもの〉

4歳から山の暮らしをしている夫のげんは、まるで山そのもののような心を持った人です。
流れるように生きる彼に、学ぶところはたくさんあります。
そんなげんを育てた義父が旅立ち、もうすぐ1年になります。
旅立ちの後、げんは村の区長を務めはじめました。
一般的に60代の方が務めるますが、11軒になった小さな村では務められる人が他になく、35歳のげんが務めることになったのです。
仕事は多く大変ですが、おかげでやっと村の現状に向き合いはじめることができました。
数年後に廃村にされてもおかしくない村。義父は村の再生にも心をくだいてきました。
私たちはその思いも受け継ぎ、義父が基礎を作ってくれたこの暮らしと村の再生に励んでいきたいと思います。

小さな力の私たちがこの小さな村から何ができるかはわかりませんが、大きな山の力を借りて、豊かな暮らしを綴っていこうと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。
新たなこの1年が光に満ちたものになりますように・・・。

 

■葉根舎

haneya8011@gmail.com
HP:https://www.yamano-haneya.com

 

MK新聞について

「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
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40年以上も発行を続けるMK新聞を、皆さま、どうぞよろしくお願いします。

ホームページからも最新号、バックナンバーを閲覧可能です。

 

MK新聞への「あ~す農場」の連載記事

1998年12月16日号~2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)

2017年1月1日号~2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」(72回連載)

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