フットハットがゆく【310】「番組」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく【310】「番組」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2019年9月1日号の掲載記事です。

 

 

番組

 

ローカル局KBS京都放送にて、2010年の1月から始まりました、ストリートダンス専門の30分テレビ番組 B-TRIVE TV(ビートライブ ティービー)が、2019年の8月いっぱいをもって、一旦終了することになりました。
足かけ10年弱、毎週の放送、年間52本を休まず作り続けて、503本という数に至りました。
終わる理由は、実質スタッフが僕一人という中で、僕も今年50歳になり、番組も500回になり、50・500のキリのいいところで辞めたいナ、と思ったからです。

 

40歳から50歳の10年間はアッという間だったでしょう? とよく言われるのですが、「光陰矢の如し」といった、振り返ってみれば時間は早く過ぎるもの、という発想が僕は嫌いです。
僕にすると、この10年は密度の濃い20年くらいに感じる時間でした。
10年前のことは20年前に感じ、1ヵ月前のことは3ヵ月前くらいに感じる感覚で生きています。
時が経つのを早く感じるかどうかは、記憶だと僕は思っています。
10年間同じような生活を繰り返して、記憶がスカスカになると、振り返って見てアッと言う間に過ぎたように感じるのは当たり前です。
とは言っても悲しいかな、人間の記憶はどんどん消えていくものですから、それを忘れないように助けるのが記録です。
個人的な日記、文章、写真、映像、それらは物理的に消さない限り永遠に残る記録です。
僕の場合、幸いにも、番組500本分の放送用完全パッケージデータ、放送時間の20倍にはなるであろう撮影素材データに加えて、企画書、台本、報告書などの文章データも全て残っていますから、それらの記録を見返すたびに記憶が蘇り、時間の空いていた隙間が埋められ、時の流れがズッシリと重いものに感じるのです。
だから、あぁ10年間早かったなぁ、アッと言う間だったなぁ、という感覚にはならないのです。

 

同じダンス番組のスタジオ撮影中に、出演の若い女子ダンサーが、最近時間が過ぎるのが早い、と言ったので僕はすかさずこの理論を語りました。
時間をゆっくり流すためには長い日記を書いて記憶を定着させるのがいい、と言いました。
具体的には、1日の日記を2~3時間かけて、ノートにビッシリと書くのです。
食べたもの飲んだもの、その日見た風景、その時の気持ち、会話した人との内容、見たテレビの内容、そしてその時自分はどう思ったのか? など、貴重な1日の時間を日記書きに2~3時間も費やすと、時間の無駄のように思いますが、記録と記憶により、その時間の密度は高くなり、時間がゆっくり流れていく感覚になります。
その日の記録も記憶もなければ、その日はなかったことになり、時間の感覚的に一瞬で過ぎていきます。
記憶の定着がいかに大事かということをダンサーの女の子に熱心に喋り過ぎて、その撮影中に、台本のどこまで撮影が進行していたか忘れてしまいました。
記憶と記録の大事さを熱弁するあまり、撮影がどこまで記録されたか忘れてしまったということで、大笑いされました。

 

とにかく、50歳以降の時間も、新たな記憶を作るために色々記録していきたいと思っています。

 

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