フットハットがゆく【306】「管の話」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく【306】「管の話」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2019年5月1日号の掲載記事です。

 

管の話

 

最近日課にしている朝の散歩の時に、新築の家を建てている所があり、そこの工事が毎日少しずつ進んでいくのを見るのがちょっと楽しみであり、昨日は水道管の工事が始まったようで、その菅がプラスチック製に見えたことから、あることをフッと思い出したのですが、昔…、父親の実家の一軒家に、わけあって僕が独りで十数年間住んでいたことがありまして、ある時、水道料金を調べる方がチャイムを鳴らし、「普段の月より圧倒的に水道使用量が多い、蛇口が開いたままになっているか、もしくは水道管が破裂してはいませんか?」ということで、一通り見ましたが、目に見える所からの水漏れはなく、これは地下の管に異常がある可能性が…、と水道業者に調べてもらった結果、案の定、地下で鉄管が破裂していたことがわかり、父親に即連絡、即工事をすることになった時に、父が思い出をたどるような目をしてこう言いました、「あれから50年が経ったんやなぁ…」というのも、父親が10歳の頃、この家の水道管工事があり、当時最新型の鉄管を導入、「今までの水道管と質が違いますから、これで50年は持ちますわ!」と誇らしげに業者の人が話していたそうで、10歳の少年にとって50年後とは未来のそのまた未来、想像もつかない先の時間までこの鉄管は持つのだと考えると、なんと時代は進歩したものかと思ったことでしょうが、それからまさに50年が経ち、父が60歳になった時に推し量ったかのように破裂した鉄管に、50年分の水の流れと時の流れを感じたのでしょう、遠くを見るような父の目が忘れられず…、そしてその後、それを皮切りに蛇口や給湯機など様々な水道管が水漏れし始め、その都度、業者に修理を依頼、鉄管の時代は終わり、現在はポリエチレン製の水道管が主流で、鉄管のように錆びて穴が開くことがない、100年は持ちますよ! とは業者さんも言いませんでしたが、鉄管よりは相当持ちがいいはずです、と言っておりましたので、時代は進化するんだなぁと感心しながらも、ついにその家は手放し、父親も今から7~8年前、71の頃には亡くなりまして、『父』と『管』というつながりでフッと思い出しますのは、父は高血圧で痔、僕も高血圧で痔、遺伝したのでしょうか、高血圧といえば血管、痔といえば体の管の出口の病気ですから、僕も現在49歳、このエッセイが出るころは50歳という年齢、血管の破裂に怯え、肛門の出血と痛みに耐える日々、時の流れということで思い出しますのは、20年ほど前に痔の手術をして、それまでの苦しみが嘘のように回復した時に、医者からいわれた言葉は、「痔というのは、生活習慣が大きく関わるので、一旦治っても、同じような生活をしていれば、また10年後、20年後には再発しますから、お気をつけて…」で、その時は、二度と痔にはなるまいぞ! と心に誓いましたが、それから20年、しっかり再発して出血と痛みに耐える日々、時の流れを感じつつ、もう一度手術をする日は近いな…

 

などと、考えているうちに、朝の散歩が終わるのでした。

 

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