フットハットがゆく【307】「ベテラン」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく【307】「ベテラン」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2019年6月1日号の掲載記事です。

 

ベテラン

この春、ついに50歳になってしまったのですが、我ながら情けないと思うのは、50歳になっても知らないことだらけ、ということです。
最先端の開発技術や、若者の最新流行、ならいざ知らず、昔から誰でも知っていることを、自分だけ知らなかったとなると、はぁ、俺は50年、一体何をやってきたのだろう…と思うことがあります。

 

つい先日、会社に2ヵ月の赤ちゃんを抱いた夫婦が来てくれました。
昔お世話になったので、生まれたベイビーと一緒にご挨拶というわけです。
その時話題に出たのが、「赤ちゃんにハチミツを食べさせてはいけない。」ということで、その場にいた他の社員は皆そのことを当然の様に知っていたのですが、僕はそれを知らず、50歳にして初耳でした。
後で調べたら、「ハチミツはボツリヌス菌に感染している可能性が少なからずあり、腸内抵抗力の低い1歳未満の乳児が口にした場合、乳児ボツリヌス症にかかり死に至る危険性も…。1歳を過ぎて抵抗力が高まれば、まるで問題なし。」ということだそうです。
こんな恐ろしい話を、僕は知りませんでした。
ここでフッと思うのですが、人の知識というのは、その人の辿ってきた人生が出る、ということです。僕はもう孫がいてもいい年齢になりましたが、未だ独身、赤ちゃんを育てたことがありません。
だから子育てに関する知識というのは、自分の人生の、触れない筋を通って行った、ということになります。

 

逆に、自分の専門でやってきたことは、経験と知識が直結するので、無敵になるはずです。
…が、先日脆くも負けました。中学生の女子ダンサー5名を連れて、テレビロケに出る仕事があり、舞鶴の赤れんがパークに行きました。
ロケーションは最高、ここでヒップホップダンスを踊ればとても映えます!
ディレクター兼カメラマンの僕は、長年の経験と勘で、ベストと思われる撮影位置を決めました。
そして振り返ると、女子中学生が全くついてきておらず、自分たちのスマホで、「めっちゃバエる~!」と、キャッキャいいながら、全然違う場所で自撮りしていたのです。
(※「バエる。」インスタ映えの意。世界的に人気のあるインスタグラムという写真投稿アプリで、皆の気をひく写真を投稿するのが若者の流行り。)
(※「自撮り」スマホなどで、自分で自分を撮ること。一つのカメラで、自分を含めた集団を自撮りすることも。)
20歳の時からこの道30年のベテランをほったらかしにして、自撮りに興じるとは、おいこらおまえら早くこっちに来い! と、怒ることもできましたが、そこは良くも悪くもベテランです。
中学生が見つけた映えスポットも気になったので、行って見た結果、西日が逆光になり、レンガ館とダンサーの隙間からフレアが入り込むなんとクールなアングルではないか!?!? 「テレビ用のショットもここで撮りま~す!」即決した僕は、ロケスポット選びで中学生に負けたことになりますが、結果いい映像が撮れたので、良しとします。

 

結局、50になってもまだまだ勉強! 精進あるのみ! ということです(笑)。

 

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