MK新聞の社説記事「タクシー適正化特措法施行まで1ヶ月 気を引き締め再規制時代を乗り越える」2009年9月1日号

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MK新聞の社説記事「タクシー適正化特措法施行まで1ヶ月 気を引き締め再規制時代を乗り越える」2009年9月1日号

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞の2009年9月1日号に掲載された社説記事の全文です。
「タクシー再規制は事業者の創意工夫の放棄」と題して論じています。

タクシー適正化特措法施行まで1ヶ月 気を引き締め再規制時代を乗り越える

エムケイ株式会社 代表取締役社長 青木信明

国交省より関係通達の指針出る いよいよ再規制が始まる

特定地域のタクシー事業適正化・活性化特別措置法(タクシー適正化特措法)の施行に向けた一連の作業が進む中、国土交通省は同法の施行に伴い必要となる関連通達に定められる各種措置などについて案を公表し、パブリックコメントを求める手続きに入りました。この指針をもとに各地方運輸局では10月1日の新法の施行までに詳細な公示通達などを定めます。
各種措置案の主なものとしては、新規許可に対する取扱いと、認可制となった増車は新たに発生する輸送需要に対してのみ認めるとすること、減車を行った事業者に対して監査免除と増車事業者に対する監査強化、地域協議会による特定事業計画の認定要領、自動認可運賃の10%の幅の見直し、自動認可運賃の下限を下回る運賃に対しての審査強化と期限付き認可、運賃以外の割引の審査強化、運行記録計の義務付け地域の拡大、などです。

新たに発生する輸送需要であれば増車は認可されると言うが

新規許可、増車認可についてはタクシー、ハイヤーともに従来の審査基準に加え、「運輸開始後の一定期間における収支計画上の営業収入が申請する営業区域で当該運輸開始後に新たに発生する輸送需要によるものであることが明らかであること」とされています。
それでは「新たに発生する輸送需要」とは一体何を指すのか、そしてそれはどのように証明するのでしょうか。例えば新規出店したMKタクシーには、これまではタクシーは怖くて乗れなかったがMKは安心して乗ることが出来た、というお声を頂きますが、このようなお客様のお声を数えればよいのでしょうか。ですが、それすら事業後に結果として分かった数であり、申請時に単なる見込みとして使える数とは言い難いでしょう。国土交通省におかれましては是非とも新たに発生する輸送需要についての具体例を提示して頂きますようお願いします。
お客様から選んで乗りたいと評価していただけるタクシーであれば増車が認可されるということが自然なタクシーの活性化・適正化であると考え、MKグループもより一層サービスと社員教育に努めていきます。

不当競争のおそれとは何か 低額運賃の審査の不透明さ

自動認可運賃の下限を下回る運賃については、「不当な競争を引き起こすこととなるおそれがあるか否かについて、個別の事案毎に、地域における申請を行ったタクシー事業者のシェア、流し営業の比率、運転者の賃金体系を勘案しながら総合的に判断し審査するものをする。
なお、現に実施中の下限割れ運賃について、不当な競争を引き起こすこととなるおそれがあると認められる場合は、事業改善命令により運賃の変更を命ずるものとする」とあります。この「不当な競争を引き起こすおそれ」とは一体何を指すのでしょうか。
前号のMK新聞で私は、国土交通省のタクシー運賃制度研究会(座長山内弘隆・一橋大学大学院商学研究科教授)が報告をまとめた「今後のタクシー運賃審査のあり方」において、低額事業者が利益を得る一方で他の事業者が採算割れになれば不当な競争であるとしたことは、事業者の創意工夫と経営努力や、利用者の選択する意思を蔑ろにした「お上」的な発想であると指摘しました。このような記述は今回の各種措置案では明文化されていませんでしたが、実際の実務の取扱いにおいて、これらの発想が復活しないことを切に願います。
タクシーは今や値段の高い割にはサービスが良くないものとして消費者に認識されてしまっているのではないでしょうか。厳しい経済状況の中で各家計に占めるタクシー代をいかにして確保するか、高かろう悪かろうのイメージを払拭しなければ、新しい輸送需要など発生しません。新法の求める適正化・活性化、経営の健全化とはまずはお客様が求めるサービスを提供しようとすることがスタートラインなのではないでしょうか。

減車事業者の監査免除は本末転倒ではないか

昨年、東京・大阪を始めとした都市圏が特定特別監視地域に指定され、新規参入や増車のハードルが高まりましたが、この特定特別監視地域への指定時のタクシーの台数を「基準車両数」とし、それより増車した事業者については、監査による処分日数が通常の3・5倍になります。監査で違反を指摘されないよう、関係法令を遵守して事業を行うことが本来の事業者としての勤めでありますので、私どもとしてはより一層法令順守に努力するのみです。
しかしながら、基準車両数を10%以上減車した事業者に対して、通常一定時期に行われる監査の対象としないとしていますが、監査の免除をインセンティブとするような政策は利用者保護の観点から、おかしいことではないでしょうか。これでは違反を指摘されないためには減車をすればよい、という風潮を助長するだけです。あるいはそうして減車を続けて最後には会社ごと消滅することを狙ってのことなのでしょうか。

新法は経営者が汗をかき知恵を絞るためのものであるべき

これまで国交省から出された各種措置案について見てきましたが、とにかく規制を強化し、事業者の創意工夫を奪い、利用者の選択する意思を否定し、減車すれば処分を逃れられるという安易な風潮を助長するという面について、再考の必要があるのではないかと痛切に感じます。
タクシー事業の適正化と活性化は事業者の努力で成し遂げるものであり、経営者は汗をかき知恵を絞りどのようにすればお客様に喜んでいただき、社員の所得を向上させ、会社を発展させていくかを追及するものです。そして直接お客様と接するドライバーはお客様が運賃に対して満足する接客サービスを心がけ、管理者は安全とお客様の利便向上のため法令順守を徹底することが本分であり、あえて法律によってその本分とするところを明記せざるを得ないところが現在のタクシー事業の在り様なのです。その上でこの度のタクシー適正化特措法は経営者、ドライバー、管理者から本当の意味での労働の尊さを知る機会を奪うものであり、いよいよタクシー産業の衰退化へとつながるのではないかという危機感を抱きます。MKグループではこのたび全国で約300台規模の増車を行い、再規制時代にも法令順守の徹底と、お客様から選ばれるサービスの向上と新サービスの開発に努めてまいります。

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